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「ウィンキーの作戦はうまく行ったようだな。ウィンキー自身も相手のことをわからないながらにどこか本能で分かるのか仕事に対する対応も変わってきているというから、双方にとっていいことだろう」
奴は少しも休めたもんじゃないだろうがな、と悪い笑みを浮かべるヴォルは隣に座るハリーを抱きしめた。双方というのはこちら側と、ウィンキーであって、クラウチJr.にとっては心休まる時間がほぼ無くなったという彼にとって最悪な状況にはなっている。
「それにしても考えたわね。まぁいろいろと看過できないことはあるけれども、これでウィンキーを拒絶すれば彼女はますます居場所がなくなってしまう。けれど最も自分を知る彼女がそばにいることは相当なリスク。おまけにドビーはその事情を知らないから、彼女が今ホグワーツ内でどう思われているのかそう伝えたのであれば……。彼の拒否権はないに等しい。あなた絶対前科あるでしょう」
ハーマイオニーにとってこの作戦に屋敷しもべ妖精が利用されていることに懸念はあるものの、ウィンキーにとってはとてもいい状況であることと、ドビーの悪意も他意もない純粋な想いに水を差すことになるためむっとするにとどまる。
「何を言っているんだハーマイオニー。そこら辺の本に書いてあるだろう、俺様の所業のほんの一角が」
さすがに全部とは言わないものの、大まかにはもう世間に知られている、と。そうのたまう様子に威張らないの、とハリーがすかさずおでこを弾き……ヴォルが恭しい様子でハリーの手を取って指に口づける。
「ハリーがいる限り、二度とあのようなことはしない」
至近距離でしおらしくいうヴォルにハリーは顔を赤らめ、わかっているならよろしい、とぷいと顔をそむけた。あぁもうかわいい、と本当に反省とかしている?とますます疑うロンたちはやれやれと顔を見合わせ……笑いあう。
そしていよいよ偽の告知の日がやってきて、代表選手らが集められた。事前に渡されたポリジュース薬にハリーの髪を入れたヴォルはそれはそれはもう見てらんないくらいだったと、ロンが称するほどにいろいろな意味で気持ちが悪いやばいやつと化し……。空のような爽やかな青になったセドリックになるためのポリジュース薬を手にしたハリーは見なかったことにして一気にあおった。
そのままその場でセドリックの私服を借り、ハリーになったヴォルをちらりと見てそれから集合場所であるクィディッチ競技場へと向かった。今頃フラーとクラム、それにセドリックは誰にも会わないところでひっそりと隠れてもらっている。
競技場につくとそこは様変わりをしていて、ハリーは驚いて足を止めた。
「心配しなくとも、終われば元に戻すよ!」
大きな声が聞こえて目を向ければバグマンがすっかり入れ替わりのことを忘れたのではないかというほどの笑顔でハリー(ヴォル)を手招きし、がしっと肩を掴んで歩き出す。近くにいたスネイプに尋ねるようにセドリック(ハリー)が目を向けると忌々し気にため息をつき、口を滑らしかけたために記憶を修正したと短く答えた。
あぁなるほど、と視線を向け……自分を演じるヴォルをはらはらとした気持ちで見る。突然爆発は……そう思ったところで何か嫌な予感がすると追いかけた。
偽クラムと偽フラーは何を言われているのかわからないが、本人のように扱われるも気にした様子はない。ハリーとセドリックの様子が少しいつもと違っていても、それに気が付いた様子もない。
3つ目の課題はこれまでに比べたらある意味シンプルだ。様々な障害物が置かれた迷路を抜けて、最初にトロフィーを掴んだものが大会優勝者だ。とその話を聞いて、あぁ絶対仕掛けるならここだ、とハリーとヴォルはちらりと目配せをする。バグマン以外の関係者もみな同じような顔をしていることから、承知の上なのだろう。
「誰もが優勝できる可能性があるが、これまでの点数から、上位の者から先に入ることになっている」
最初にハリーとセドリック、そして次にクラム、最後にフラーだ。頷く4人を見て、バグマンは障害物と言っても動かないものではなく、魔法生物や呪いなど、様々なものが仕掛けてある、と4人に向かってにこりと微笑む。
その姿にわかったと頷き……それに加えて絶対ハリーを一位にすべくやるだろうな、とやる気満々な二人にこっそり心の奥で謝った。
さぁ来月またこの場で!と宣言するバグマンに解散し……こちらへと言われてダンブルドアら校長と、クラウチ氏が別の部屋へと4人を誘導する。
「さて、事前に説明した通り今回は万全を期するため、デモンストレーションを行うこととなった。デモンストレーションを得て実践する彼らとは違い、君らには全くの予備知識なしで挑むこととなるが、安全は確保しているため安心してほしい」
このことは一般生徒らの反応を見るためにも、仲のいい友達にも誰にも言わないで欲しい、とクラウチは4人のデモンストレーターに言う。
「もっとも、練習を極秘で行うことはなかなかに難しいだろう。そこで、4人はそれぞれ第3の課題に関する役割を得たため、練習を行っていると、そう周知する予定だ」
だから安心してほしい、と説明がされて偽クラムと偽フラーはわかりましたと頷いた。ハリーたちも頷くが、そもそも二人はいつも一緒にいるために周知されることはないだろう。
解散となってハリーとヴォルは近くにあった物置に入り、少しするとポリジュース薬の効果が消える。ハリーはセドリックの服を脱ぎ、ヴォル?と振り向いた。ハリーの私服、とご満悦なヴォルをみて、なんだか恥ずかしくなるハリーはそうだヴォルの服と拡張した自分のポケットに手を入れ……手を掴んだヴォルを見る。
あ、やばい、と思った時には扉ががちゃりと施錠される音が聞こえると同時に椅子が変化した、即席のソファーへと押し倒された。ぷつっという音と共に髪を抜かれ、ハリーは圧し掛かったヴォルを見る。ハリーの上を陣取るヴォルはどうやったのかまだ変化していないポリジュース薬を手に取り、ハリーの髪をそこへと入れた。
じゅわっと金色に染まるとヴォルはそれを飲み、ハリーの姿へと変わった。
「かわいい俺様のハリー」
自分の声で到底自分では言わない言葉が聞こえ、ハリーはだめと首を振るもハリーの体を知り尽くしているヴォルの手にかかるとすぐにふやかされてしまった。
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