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 密かに練習を続け……全く動きのないムーディに焦るハリーは当日の朝、一人図書室にいた。ハーマイオニーとロンはマクゴナガル先生に呼ばれて出てしまい、ヴォルもナギニと共に出かけたっきり戻っていない。ため息をついているとポンという音ともに、屋敷しもべ妖精が現れる。

「ハリー=ポッター様!」
 キンキン声でハリーを呼ぶ屋敷しもべ妖精にハリーは驚き……あ、と声を上げた。

「君もしかしてドビー!?今ホグワーツで働いていたの?うわ久しぶりだね!」
「はい!ドビーめは今ホグワーツで週に1ガリオン、月に1日の休暇をいただいております!ウィンキーも一緒におります!」
 胸を張って答えるドビーだが以前のとは服装などが違う。自分のお金で買ったと誇らしげなドビーにハリーはただただ驚くしかない。ウィンキーと聞いて、ハリーもしかしてと顎に手を置いた。クラウチの家に仕えていたウィンキー……うまくするともしかする?と一人考えているとずいっと何かが差し出されて思わずのけ反る。

「マーピープルからあなたはウィージーを取り戻すのです!あなた様の赤毛の親友、ウィージーです!」
「ウィージー……あ!ウィーズリー、つまりロンか!確か大切なものをとらえたって……ロンのことなの!?ヴォルじゃなくて?というか人なの!?」
 ドビーは周りに誰もいないのか、声を下げることなくキンキン声のまま第二の視点についてと思われることを言い、再びぬめぬめした団子のようなものを差し出す。歌を思いだすハリーは一時間の制限と、捕らわれた大切なもの、と口に出しした。

「セルパン様はハリー=ポッターの命です。この大会においても命そのものをとることは致しません。ですので、命の次に大切な人と選ばれたのです!」
 一心同体だからというドビーに、きっとダンブルドアが阻止したのだろうと思いつつハリーは無意識に顔を赤らめ、そっそうと返す。なのでこれを食べるのです!とドビーはぐいぐいと団子を差し出す。

「これは鰓昆布といいます!水中でいきができます!!」
 これをというドビーにネビルが見せてくれた図鑑を思い浮かべ、あぁとハリーは受け取った。だがドビーが突然来たのは何か腑に落ちない。

「ねえドビー。これは誰かから渡されたのかな」
 スネイプの薬草保存庫にあるとヴォルが言っていたため、もしかするともしかする?とハリーはついでに盗んだのではと推測する。

「セルパン様からとアラスター=ムーディ教授がお渡しになられました。第二の試練で動けないセルパン様に代わって託されたとのことです」
 目をらんらんと輝かせて答えるドビーにおや?とハリーは考え……ねぇドビーと尋ねる。

「僕の大切な人はロンだよね。なのにどうしてヴォルも動けないのかな」
 なんか矛盾している、とハリーが訪ねるとらんらんとした目のままドビーは少し固まり、それは確かにおかしいです、とびっくりしたようにつぶやく。

「とりあえず何も知らないふりをしておいてもらっていい?それと、夜に談話室に来てもらっていいかな」
 ひとまずは今後について話し合わないと、というのとこれから行う課題に集中しなければ、とハリーは立ちあがった。ドビーはわかりました、と激しく首を振りまた後でお会いしましょうと消えていく。鰓昆布を手にしたハリーはいいスパイ役ができた、と目を輝かせて会場へと向かう。

 準備運動をするクラムたちを見て、ハリーも準備運動を行っていると、そこにナギニがやってきた。ヴォルはヴォルでダンブルドアの近くでアニメーガスとなっているらしく、代わりに来たという。

『それじゃあヴォルに伝えてほしいんだ。とびっきりいいスパイ役がみつかったって。とりあえず、今はこれに集中するのと、鰓昆布貰ったって言っておいて』
『スパイ?なんだかよくわからないけど、わかったわ。それ本当に食べられるものなの?大丈夫?』
 ヴォルに大丈夫だって伝えてほしいという事と、スパイにうってつけな人材を見つけたと、喜々として伝えるハリーにナギニは頷き……鰓昆布を不審げに見つめる。多分大丈夫だと思う、と苦笑するハリーにまたね、と去っていくと蛇語はわからないものの楽し気なハリーにセドリックが声をかけた。

「その調子だとどうにかなったみたいだね。それじゃお互い頑張ろう」
「うん。よろしくね」
 君は見た目以上にガッツがあるから注意しないと、とセドリックは笑い聞こえてきたアナウンスに頷いた。
 
 




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