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 昼間に姿を見せたハグリッドに大広間にいた生徒らはあぁ来たんだ、という程度でそれ以上話題にすらしない。その姿に目をしばたたかせるたのはハグリッドだけでなく、マダム・マクシームも同じで、ちらりと視線を交わしてから小さく笑いあう。面白くなさそうなのはスリザリンで、半巨人なんて、と声を上げるもなんだか小さい。

「だから言っただろうハグリッド。もともと、来年は人狼が来るし、極悪犯罪者と言われてアズカバンに無罪で入っていたバカな奴が備品の破壊による罰で警備している。半巨人程度で怯えるのはよほどの臆病者だろう」
 例の通りに声を上げて問題はないだろう、というヴォルにほかの寮生らからは何人か噴き出す音が聞こえる。ボーバトン校とダームストラング校は一体なの話だろうかと首をかしげていた。

「例えば、かすり傷程度なのに腕に包帯巻いて、さも歴戦の戦士のようにふんぞり返っていた貴族のおぼっちゃまとか、死を知らない無知でおバカなお子様のくせに吸魂鬼に扮して脅かそうとして、逆にパトローナムという人には一切危害を加えない魔法にビビってすっころんだり」
 全部ひとりに対しての言葉に、ロンは笑いそうになって、拳を口に入れて必死に抑える。あぁ、と気が付いた生徒らからもくすくす笑いが漏れてマルフォイは顔を真っ赤にした。

「それに、散々俺の親が、という話があがっているのに今更、半巨人程度」
 本当にバカだな、というヴォルの正体を知っている代表選手らは確かに、と心の声が一致する。ほぼ個人に向けた言葉を掛けられたマルフォイはそのくだりは羞恥に震えていて聞こえておらず、これ以上ハグリッドについて騒ぎを大きくすることができないことに唇をかみしめるしかできない。

 ハグリッドが半巨人というのはあっという間に鎮火し、またヴォルとは別れて移動していると、セドリックがハリーの名を呼びながらやってきた。


「ハリー、確認なんだけど……。君はあの卵の声を聞くための水場、見つけられたかな」
 ちょっと、と声をかけるセドリックにハリーはため息をついて首を振る。

「最終手段湖にと思うけど……」
「あぁ……もっと早くに声を掛ければよかった。この前ドラゴンのことを教えてもらったからね。彼も知っているかと思ったんだけど、まぁ合言葉を知らないかもだろうと思って。監督生らのための浴室があるんだ。パイン・フレッシュ。そこを使うといい」
 フェアじゃない、というセドリックにハリーは目を丸くし、ありがとう、と答えた。そういえばヴォルが何か言っていたが、そのことだろう。

「あ、でも一応彼には禁止だからね、とそう伝えておいて」
 それじゃあ、というセドリックにハリーは顔を赤くするしかない。彼なら、やりかねないのと、それを止められる自信がない。セドリックもまぁ場所が場所だから、と苦笑してそれじゃあと去っていく。
 するりとハリーに近づく音に気が付き、振り返ればアニメーガスを解いたヴォルが立っており、ムーディは今薬の補充中だ、とそういって合流してきた。それならばとヴォルの隣に並ぶと、監督生の浴室わかる?と問いかけた。

「あー。前にハリーを連れて行こうとした……あ。そうか、水」
「セドリックがさっきドラゴンのお礼にって。パイン・フレッシュが合言葉だからそこで開くといいって。それと、みんなが使う場所だからよこしまなことはしないで欲しいって教えてくれたんだ」
 確かにあそこは広い、というヴォルにもしかして、とハリーはヴォルを見る。合言葉を伝えれば昔と変わっていないな、と頷いた。

「あの頃はあまり広い空間で開放的に、なんてことはしていなかった。だから監督生になっても、首席になっても、主にシャワーで済ませていた」
 そもそも長風呂はしなかった、というヴォルにそういえばとハリーも納得する。ヴォルが長風呂をしている姿は見たことがない。それで広くて潜れる水場というのに思い当たらなかったらしい。

「そうだな。嫌な予感がするから今夜行こう」
 さすがにホグワーツ内の浴室ではしない、というヴォルにハリーは本当に?と怪しむ視線を送る。行けばわかる、というヴォルは浴室を使っていなかった理由があるのか眉を寄せた。

「本当はハリーの裸を……。まぁいい。相手は壁画とあれだ」
 ぶつぶつと何かを言うヴォルはハリーを抱き寄せ、嫌だなと呻く。何かとんでもない内装なのかと身構えるハリーにヴォルは苦笑し、一部はそうだけどそれだけではない、と首を振る。

「覗きの常習犯がいるだけだ」
 あー思い出した、というヴォルにハリーは思わず真顔になった。

 
 




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