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そのころ、飲み物を取りに行ったルーピンは在学生らに囲まれていた。来年は戻ってくるんですよね、とか脱狼薬の改良は今どんな感じですか、などなど。先ほどの美人さん、彼女ですか、とか、様々な声にルーピンは薬の改良はまだまだみたい、とか来年はそのつもりだよ、とか答えながらグラスを手に取った。
「ムーニー。あの闇払いの……トンクスといったか?彼女どうなんだ?」
背後から現れたシリウスがルーピンの肩に腕を回し、どうなんだと問いかける。驚いて振り向けばそこには何やら悪い顔をしたシリウスと陰ではあるがジェームズがのぞき込んでいた。
「え?どうって……」
「七変化なんだね、彼女。初めて見たよ」
「ずっとピンクっていうのはそういうことなんじゃないのか?」
何が、と問いかけるルーピンにジェームズは面白い子だね、と言いルーピンはそうらしいね、と答え……シリウスの言葉にへぇ?と目をしばたたかせた。
「いや、彼女とは10歳は違うんだよ?それに僕は……」
「10歳なんて誤差だろ誤差。魔法使いの貴族の中にはそれぐらいいるぞ」
「彼女闇祓いだろう?であればムーニーのことは知っているんじゃないかな」
いやいやそんなまさか、と苦笑するルーピンにシリウスはその程度とあしらい、ジェームズは口ごもるルーピンの事情は知っているだろうとその逃げ道も塞ぐ。それはそうだろうけど、と口ごもるルーピンにシリウスはタイプじゃないってやつか?と首をかしげる。
「いや、そんなことはない、というか僕は……僕なんかが女性を選んだりするなんて」
「でも今あいつが改良しているんだろう?なら危険はないだろうし、仮にも闇払いの彼女が警戒しないこともないだろうし、うっかりの場合は鎮圧もお手の物じゃないのかな」
そんな自分が、と首を振るルーピンに、ジェームズは他に気にしていることは?と問いかける。あれ?これ外堀埋まってない?と気が付くルーピンに親友二人はまた悪い顔をになる。
「聞いた話だと、転びかけた彼女を抱き留めたんだって?」
「どうせ、気を付けてとか言って紳士的な態度だったんだろう?」
「それできゅん、と来た相手の責任は取らなきゃなぁ」
「おとなしいぐらいのムーニーをぐいぐい引っ張っていきそうだけどなぁ」
二人に畳みかけられて、年齢差や人狼だからなどの言い訳をつぶされ、ルーピンはどうしたものかと口ごもる。顔の傷のせいか、学生時代はそんな出会いもなく、また心の余裕も異性に対してはなかった。
それが今が脱狼薬もあり、更には説明不要でもあり……全部ひっくるめて髪の色で察せられるほどの好意を向けられたことがなく、ルーピンは戸惑うしかない。
まさか、10代後半の子供ばかりがいて、各々好きな人や気になる人などとパートナーを組んで踊っているような中で、初めて向けられた異性からの好意に戸惑う30代なんてシャレにならない、とシリウスにとどめを刺されてぐっと詰まる。
「まぁ無理にとは言わない。ただ、向けられた好意を無下にせず、食事でも誘ってみればいいじゃないか?」
俺たちはいつでも応援しているからさ、とシリウスに肩を叩かれて、わかった、と頷いた。
カクテルを手に戻ればリリーとトンクスが盛り上がり、いつの間にかやってきていたハリーとヴォルがいちゃつき……リリーが盛り上がっているために離れられないスネイプが壁の花と化している……そんなとっちらかった状態になっていて、3人は顔を見合わせて思わず笑いだす。
「ありがとう!ふふ、私の今の色みたい」
ピンクレディと呼ばれるカクテルを手に取ったトンクスは髪の色を同じ色にし、ニコニコと微笑む。その笑顔に思わずルーピンは言葉に詰まり……シリウスが背中を押したことでハッとなる。
「あの……「来週、ニューイヤーを迎えた日に食事どう?」え?あ、うん」
まだ一歩踏みだすのに戸惑う様子のルーピンにトンクスはずいっと乗り出し、顔を赤くして問いかける。反射的に返事をするルーピンは思わず笑って、先に言われてしまったと頷いた。
「今度食事に行こうって誘うつもりだったんだけど、先越されちゃ恥ずかしいな。なにがいいかな。僕が準備する機会が欲しいな」
「やっった!えぇとそれじゃあ」
盛り上がる二人にこれ以上は野暮だ、とヴォルはハリーを促し、シリウス達もまたその場から席を外す。
しれっとまた外に行こうとするヴォルにシリウスが気付き、させるかと前に行こうとして、どこかの純血の家系か女子生徒がダンスを一緒に踊ってもらえないか、と集まってくる。
えぇ……と思わず一歩下がるシリウスだが、では瓶は預かりましょう、といつの間にかやってきたマクゴナガルがさっとジェームズの瓶を手に取り順番ですよ、と勝手に決めていく。
「まさかとは思いますが、踊れないということはないでしょう?」
さぁ一夜の思い出です、と立ち去るマクゴナガルにちょっと!?とジェームズの影が引っ張られていく。マクゴナガル先生酔っていらっしゃるのかしら、とリリーは笑い、そうかブラック家の異端児とは思ったがそういう教育もされていないか、あるいは習得できなかったのか、とスネイプが煽る。あぁん?とカチンときたシリウスはそれではレディーと手を取り中央に向かう。
「お前はどうせ踊れないだろうな!」
と言い残すシリウスにスネイプが顔をしかめる。かちんとくるスネイプだが踏みとどまろうとして、スリザリン生の女子生徒がおずおずと出てきたことに小さく息を吐く。
「セブ、ほら行ってきなさいよ。私はダンブルドア先生に預けてくれればいいから」
「そうじゃよ。今夜は特別な夜じゃからな」
これまたいつの間にかやってきたダンブルドアに今度こそ大きなため息を吐くと、リリーの瓶を渡して寮生の手を取る。
うそぉ!?うわまじか!と他寮の声を背にスネイプもまたシリウスに張り合うように女子生徒をリードしていった。
放置されたヴォルはこれ幸いとハリーを連れて外に出ると、必要の部屋に行こうと言ってハリーを抱き上げたまま飛行の魔術を使い飛んでいく。
ハリーが半巨人について聞くことができたのは翌朝の日韓予言者新聞の後であった。
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