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こいつに借りを作った気がして癪に障る、といらだった様子のシリウスの後ろからスネイプと笑っているリリーの影が現れ、ではあのまま朝まで放置していた方がよかったな、とスネイプは忌々しさを滲ませながらいう。
「顔以外はほとんどあの時のあいつなの凄く嫌だな」
「そういえばあの時……私に対してはそこをどけっていてハリーだけを狙っていたのよね。私が前に立ちふさがったわけだけど」
死の直前まで見ていたの忌々しい顔を思い出す、というジェームズにリリーは懇願ではあったけど会話したのよね、という。え?と3人の男の視線がリリーに向き、殺そうとした赤子だったハリーと楽しそうに踊る元闇の帝王を見る。
「ジェームズと違って私は杖を構えていなかったからかしら。扉は吹っ飛ばされたけど、そこをどけってそればっかりで」
問答無用でアバダをされたジェームズはあいつに懇願とか何を考えているんだ、と顔をゆがめた。スネイプだけは何か思い当たったのか、気まずそうに眼をそらす。
「もしかしたら“母親”に対して何か思い入れがあったのかしらね」
もう死んでしまった後だから恨むようなことはしないけど、とニコニコするリリーになんといえばいいかわからないシリウスはあー、と唸り……ダンスフロアから戻ってきたルーピンを手招きする。
「何か飲み物をとってこようか、ミス・トンクス」
「ありがとう。それじゃ……おまかせで」
さぁどうぞ、と椅子にエスコートするルーピンにトンクスは更に鮮やかな髪色になりながら、にこりと微笑む。嬉しそうなトンクスを見て、シリウスは飲み物を取りに行ったルーピンを追いかける。ちょっといきなり走らないでくれ、と瓶に引っ張られていくジェームズが去り、スネイプとリリーの影がその場に残った。
どこか気まずそうにしているスネイプの隣で状況を楽しむリリーを見たトンクスはジェームズが証言をするために魔法省で現れたこともあり、あなたがミセス・ポッターですね、とすぐに状況を把握する。リリーとトンクス、そして巻き込まれたスネイプがそれぞれ名乗るとまだ戻ってこない二人と影を待つ。
「ねぇトンクス。あなたもしかしてリーマスのこと?」
「え?へへへ。その、まだその話は切り出せてないから、この後告白……しようかなって。あぁ、彼のいろいろな事情はもちろん闇祓いですし、知ってるよ!けど、それでもね」
ねぇねぇ、と声をかけるリリーが椅子に座るようにしてしまったため、瓶を持っているスネイプは動くに動けず、素知らぬ顔をして明後日を向く。トンクスは緊張するーと言いながら髪の色を赤にしたりサーモンピンクにしたりと目まぐるしい。
「セブ、脱狼薬の改良はどのくらい進んだのかしら?」
目をそらしていたスネイプはリリーに突然声を掛けられて素直に振り向いた。脱狼薬の改良はまだ実験段階で実用には至っていない。
「セブルスでも改良に時間がかかるものなのだな」
いつの間にか戻ってきたヴォルがハリーを座らせながら問いかける。厄介な奴が来た、と顔をしかめるスネイプだが、ヴォルは気にしない。
「我輩とて集中できるのであればもう少し早めることはできるだろう。しかし、我輩の自由時間などほんのわずかなものなのだ」
「あぁ……レポート」
時間がない、というスネイプにハリーは思わずつぶやき、ヴォルは確かにそうだな、と同意した。日中も二コマの授業が7学年4寮の計28……合わせての授業もあるがそれでも数はうんと多い。そしてスリザリンの寮監でもあり、夜間の見回りもおそらくは当番で回ってきている。
「だからといって、俺が手伝うわけにもいかないだろう。となればまだまだ開発速度は遅いまま、か」
せめて俺がもう一人いて、近くで助言できればいいのだが、とため息を吐くヴォルに、心底いらない助言だ、とスネイプのこめかみがひきつる。大体、そんなのがそばにいたら進むものも進まなくなる。主に胃痛のせいで。
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