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「さぁ。ハリー、散歩に行こうか」
知らない、と肩をすくめたヴォルは抱えたままのハリーに問いかけながら外へと足を向けた。抗う事もなく、素直に従うハリーは気遣うクラムに何でもない、と首を振って楽し気に会話するハーマイオニーを振り返る。
ハーマイオニーはロンのことどう思っているんだろう、と考え……はっと気が付くと人気のないところはダメだよ、とヴォルに念を押す。しれっと人気のないところに誘おうとしていたヴォルは悪びれていない笑みを浮かべ、ダメ?と問う。
「だ、だめだって。ほら、ここ虫よけないし……。どこであのおばさんが見ているかわからないから」
だからだめ、と人けのある方に引っ張るハリーに今度はヴォルが従う。三大魔法学校対抗戦という事で今年は特別なのか、クリスマスらしい静かな装飾が施された正面の庭はとてもムードたっぷりで、そこかしこにカップルがいるのが見える。なんとなく恥ずかしくなるハリーはできるだけカップルから離れて……自ら人けのないところに来たことに気が付いた。
「ちっ違うからね!」
「どうして装飾用に馬車なんてものを置いておいたんだろうな」
使い道といえばこれしかないのに、と慌てたハリーをやすやすと抱きかかえたヴォルは木陰に隠れる様な馬車に入っていく。外じゃないだろう?とにんまりとするヴォルにハリーはしまった、とおもうも後の祭りで……キスでとろとろに溶かされる。
「こんなのがあれば高揚としたカップルがすることといえば一つだけだろうに。ハリー、大丈夫だ。ほら、下だけ半分脱いで。俺もそこだけ出すから」
盛りのついた学生がすること、というヴォルにハリーがむっとするように睨む。ヴォルだってその学生なんじゃないのか、という視線はそれがどうしたんだハリーという笑みでスルーする。あぁそうだ、ヴォルがそんなこと気にするわけがない、と押し倒されたハリーはむっと膨れ……こうなっては仕方がないとヴォルにキスをした。
さぁこれから、と舌なめずりをするヴォルだが、足音に手を止めてじっとその音を聞く。ハリーも聞こえて、じっと息をひそめた。警戒してしまったのもやけに大きな足音のせいだ。やがてぼそぼそとした声が聞こえてあれ?と首を傾げた。
「この声ハグリッド?」
「と、マダム・マクシームだな。あのビッグカップルだ」
この声はというハリーにヴォルは頷き、二人で馬車の窓から外を伺う。
「まさか同類に会う事なんてねぇと思ってた」
びっくりしちまったんだ、というハグリッドにマクシームは何の話でしょう、と取り合わない。ちっとも甘い空気じゃないことに首を傾げ、じっとするとハリー達のいる馬車に気が付いた様子はなく、二人は何か秘密めいた空気で話している。
「なんの話だってぇ?半巨人の話さぁ」
「アングリッド、わたーしが半巨人ですって?」
なんでぇ、というハグリッドに対し、マクシームは酷く憤慨した様子で声を荒げる。侮辱されたと怒るマクシームはハグリッドの制止も聞かず、ずかずかと去っていく。
「あーあ。あの馬鹿」
「半巨人って……前にも聞いたけど、そんなに悪いことなの?」
何しているんだ、と呆れるヴォルにハリーは首をひねるばかりだ。あー、と少し考える風のヴォルはやってしまったものは仕方がない、とつぶやいて改めてハリーを押し倒す。
「ちょっとヴォル!?」
「後で説明する。巨人関連は……いろいろ厄介なんだ」
抗議するハリーを組み伏せ、喉元に口づけるとヴォルは言いにくそうに答え、ハリーのネクタイを緩める。天下の闇の帝王が説明が厄介だ、という状況に羞恥心で顔を赤らめていたハリーだが、ぱちりとピースがはまった音を聞いた気がした。
「ヴォルデモート関連ってことだね」
「俺様のハリーは理解が早くて素敵だ」
闇の勢力関連ならば仕方がない、とため息を吐くハリーはヴォルの長いドレスローブに覆われながら緩めた首筋に口付けられて痕を残され……息をのむ。
「この毒蛇ーー!!僕の息子から離れるんだーー!」
開いてもいない扉からぬっと出てきたジェームズの影が目の前の光景に大声を上げ、何の魔法を使ったんだ!と開けようと奮闘するシリウスの声が聞こえる。父と名付け親に見つかったハリーは恥ずかしくてヴォルに顔をうずめて声にならない叫びをあげた。
はぁああと深々とため息を吐くヴォルはハリーのドレスローブを杖を振って直し、自分のドレスローブも少し乱れていたのを直す。
「休憩していただけだ」
「君の休憩は人の息子の服はだけてキスマークを付けることなのかな!!」
「なんだって!?もう絶対許さん」
しれっと言い放つヴォルにジェームズと中の声を聞くだけのシリウスが声を上げた。あーもう恥ずかしい、とヴォルの胸元に顔を埋めるハリーはもう顔を上げられない。
舌打ちをするヴォルが杖を振ると、扉が開きちょうど壊そうとしたのか杖を構えたシリウスが慌てて杖をそらす。
「大丈夫かハリー!」
乗り込んできたシリウスにますますハリーは恥ずかしくなってヴォルにしがみつく。
「お前のせいでだいぶ致命傷だ。ハリー、また後で……な」
「「後でも何でも、学生だろう!今は!そういうことは禁止だ!!」」
ほら、ハリーと呼びかけるヴォルにジェームズとシリウスの声が見事にかぶる。うるさい、と顔をしかめるヴォルはハリーと共に馬車を降りた。その背後ではいつかけたのか、縛られたシリウスが藻掻いているがヴォルは知らん顔をする。
「まだやっているな。ハリー、もう一曲踊ろうか」
さぁハリー、手を。そう言いながらハリーの手を引くヴォルにハリーははにかみながらうなずき、何事もなかったように踊り出す。
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