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そしてとうとうやってきたクリスマス当日。ドレスローブに身を包むハリーはどこか変じゃないかな、と各部屋に置かれた姿見を見て襟を正す。ハリーのドレスローブは深緑のハリーの瞳に合わせたもので、ハリーの体をぴったりと包み込む。
「大丈夫だハリー。あぁそうだちょっと顔の表面を……よし、これでいいだろう」
「ヴォルのドレスローブも素敵だね。裾とか踏まない?大丈夫?」
ゆったりとしたドレスローブに身を包むヴォルは大丈夫だぞ、というとハリーを包むように抱きしめる。深緑のベストを覆い隠すような上着の中にハリーを入れるよう抱きしめると誰がどう見ても悪い魔法使いが少年をたぶらかし、囲い込もうとする姿にしか見えず……。
さすが闇の帝王の息子と噂されるだけはある、いやむしろやっぱり息子説は正しいのでは、とルームメイトらは考えて……まぁハリー一筋だからほっておこうと自分らの支度に戻った。
「かつて好んで着ていたローブがこのようなものだった。かつての姿を知っている者たちからすればだいぶ胃が痛いだろうが……俺の知ったところではない」
むしろやっとこの服装になって落ち着くくらいだ、というヴォルに在りし日のヴォルデモートを思い浮かべ……やっぱりどの姿でもヴォルはかっこいい、と頬を軽く染めた。
「ヴォルとハリーの姿……ぱっと見た目だと逆に見える」
しっかりとした男性用のドレスローブに身を包んだハリーは女性パートで、ゆったりとしたローブに身を包んだヴォルが男性パートであることにディーンが思わずこぼす。
「それでは行こうかハリー」
手を差し出すヴォルにハリーははにかむ様に笑ってその手を取る。そのまま大広間前にいくと、代表選手はこちら、とマクゴナガルに呼ばれ、どこか拗ねたような顔のロンとパドマを置いてクラムたちがいる場所へと移動する。
「闇の勢力についての文献に描いてあったような服装ね、ヴォル。なぜかしら。すごくしっくりとしている気がするわ」
なんだかすごくらしい、という感じに見える、と思わず口に出たという風な声に、ヴォルはそれはどうも、と微笑む。
「ハーマイオニー、すごくきれいだよ!」
思わず見間違えそうだった、と驚くハリーにまっすぐ伸ばした髪をきちっと結い上げたハーマイオニーがはにかむ様に笑う。少しお化粧をしているからだろうか、とても大人びていて、フラーのまばゆい美しさとは別の輝きを放っている。
「あの時はありーがとう」
ヴォルの正体を知りつつも気になった女の子への声かけのため、協力をしてもらったクラムはびしっと背筋を伸ばし、ヴォルに礼を言う。どういたしまして、と返すヴォルはセドリックと共にいるチョウ=チャンに目を止め、確かレイブンクローのシーカーだったなとクィディッチカップルから目を外す。フラーはそのキャプテンだったかな、と考えて……8人中5人がクィディッチ選手か、と謎の比率に気が付いた。
「あ、そのうち4人がシーカーか」
思わずといった風に呟いたヴォルにシーカー4人は目をしばたたかせ……そういえばと同じポジション同士目配せをした。
「君もシーカーだったのか」
「うん。一応4年目だったけど今年はなくなってしまったから」
「今更だけどクラム、今度プロの世界について聞いてもいいかな」
「ぼぉくにこたえられる範囲であれば」
そうだそうだと集まるシーカー達にハーマイオニーとヴォルは顔を見合わせて思わず笑う。少しその話に加わりたいと思いつつもフラーを放っておけないと、ちらちらと振り向くロジャー=デイビースはぐっと我慢すように目をつぶった。
あとでチャンに詳細を聞こう、とキャプテンとして話に加わるよりも、絶世の美女のパートナーとして恥ずかしくないようにという気持ちが勝るのをヴォルは面白そうに眺める。
シーカー同士で盛り上がるのをみていると、時計を確認していたマクゴナガルがその話もっと聞きたいのですが、というのを隠しもしないとても残念そうな顔で時間です、と咳ばらいをした。
また今度、とそれぞれのパートナーのところに戻り、身なりを整えるとひじを差し出し、パートナーがそれに手を添える。
「ハリー、さぁ行こうか」
さぁ、と腕を出すヴォルにハリーは頷くと、ハーマイオニーらに倣って自分のパートナーの腕に手を添えた。
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