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「それで、どうしてこうなったのか聞いてもいいのかしら?」
ヴォルとハリーがそろって風邪をひいて医務室に入ると、呆れた風のハーマイオニーが問いかける。ロン曰く、早朝に戻ってきたらしい二人だったが、夜風に吹かれて体が冷えたのか、二人そろって風邪をひき、元気爆発薬と睡眠不足の解消をと医務室につれこまれていた。
「俺がハッスルしすぎた」
本当にそれに尽きる、と反省しているヴォルにハリーが慌てて首を振る。自分がヴォルをうっかり刺激したから僕も悪いよ、と弁明している姿に、ちょうど補充の薬を持ってきていたスネイプのこめかみがひくりと動く
いや俺様こそハリーに無理をさせた、とハリーを抱き寄せるヴォルにハリーは唸って、もう冬だから寒いところはダメだね、と真剣そうに言う。まずそこじゃない、とかそういう風に甘やかすからダメなんだぞ、とスネイプを含めたハーマイオニーら3人の心の意見が一致する。
これはもう駄目だな、と諦めるようなため息がこぼれる中、がらりと扉が開きこつこつという音を響かせてムーディがやってきた。
「夜間に外出したせいで風邪をひいたと聞いたが?どこにいたんだ。昨日は俺が見回りをしていたはずなんだが」
自分の眼をすり抜けたことが不服だったらしいムーディにスネイプはいぶかしむ様な眼を向け……授業の準備があるので失礼する、と去っていく。残された4人はあーと声をそろえ……。
「むかーーしの独房でちょっと盛り上がっただけです」
すっかりいつもの感じを取り戻したヴォルがしれっというと、ハリーが恥ずかしがってヴォルを叩く。その手を受け止めたヴォルは目を細め、じっとハリーを見つめた。
「毎晩俺のを受け入れて、もう無理だから、とそう悲鳴をあげさせて……あぁ、早くハリーに俺の種を仕込んで孕ませたい」
異常な崇拝者であるクラウチJr.を煙に巻くためとはいえ、ヴォルの言葉にハリーは瞬時に赤くなり、まだ学生だからダメ、とヴォルの胸を押す。あぁ卒業したらいいんだ、とハリーが無意識に了承していることにロンでさえ気が付き……いちゃつきだした二人を白い目で見る。
「孕っ……種……卒業」
衝撃が強すぎたのか、ぶつぶつとつぶやくムーディはふらふらしながら医務室を出ていく。本当に元部下の人たちがかわいそう、とハーマイオニーはため息をこぼし、今朝死にそうな顔になっていたの奴と同一人物かと疑うほど元気なヴォルを見る。
元気になったのならさっさと出る、とポンフリーに追い出され、ハリー達は思わず顔を見合わせた。めったに風邪をひかないヴォルとハリーがそろって体調不良。原因こそろくでもないことではあったが、治るタイミングも同じで……なんだかおかしくなって笑う。
「次からは監督生の風呂でも入って、体を温めるとしよう」
あそこなら体を温めるのに最適だ、とハリーを抱き寄せてヴォルは合言葉変わってなきゃいいんだが、とつぶやく。本当に誰がこの危険人物を監督生にし、首席にしたんだろうか、とロンはため息を吐く。
「ヴォルって本当に、バジリスクを放ったり、冤罪に落とし入れたり……いっぱいいろんな悪いことしてきたのに、なんで先生受けはよかったの?」
もう本当にひどい、というハリーにあの当時の魔法薬学の教員はあつかいやすかったんだ、とヴォルは笑う。魔法薬学、と聞いてスネイプしか浮かばないハリー達に、あーと考えるヴォルは人脈好きの男だ、と思い出しながら答えた。
「寮に関係なく将来有望な生徒や、家族が有名な生徒などを集めて贔屓し、卒業後にパーティーに呼んだりして……なんだろうな。有名優秀な人を私はこれだけ繋がっているんだ、とそういう風に着飾るのが好きな奴だ。聞きたい情報を得た後は用済みだったので、俺は卒業後、あの男が気に食わないだろう普通の店員になり連絡も絶っていたためバカバカしいパーティーで飾られたことはない」
もちろん、成績優秀な俺は特にかわいがられていた、と答えるヴォルにハリー達3人は露骨に顔をしかめる。ハリーに至ってはスネイプになっていてよかったと思えるような人だ。ロックハートだって大嫌いだったのだから似た空気を感じたのかもしれない。
「優秀なだけじゃなくて、ヴォル……すごくかっこよかったからそれもあったでしょ」
ロックハートもまぁ大概だったな、と考えていたヴォルは顔をしかめていたハリーの言葉にそっちか、と思わず笑顔になる。優秀な人を集めるというのに顔をしかめていたロンとハーマイオニーも思わず真顔になって、そっちが不満なの?とハリーを見る。
「在学中はいかんなくそれを使って、俺様独自の人脈を作ったな。ブラック家のベラトリックスなどもそのつながりだったかと思うぞ」
分家だが、というヴォルにその人シリウスの親戚なの!?、とハリーは夢で見た女性を思い浮かべた。確かに?そういわれてみれば?あの黒い髪がシリウスに似ていることもなくはないかもしれない。
「確か……あぁそうだ、どこかで見た気がすると思ったが。ベラの姉妹があのワールドカップで見たマルフォイの母親だ。名前は知らん」
いちいち覚えていない、と言い放つヴォルはベラと違って死喰い人ではないな、と思い出す。
「ヴォルって結構部下の扱い適当だけど、細かいこととかよく覚えているよね」
部下のこと結構大事にしていたの?と問いかけるハリーにヴォルは意外そうに眉を上げ、そんなこと思ったこともなかった、とつぶやいた。そういうところが妙に人を惹きつけているのかしら、とハーマイオニーはかつて勢力を誇った闇の陣営を思い浮かべる。
人に認めてもらえないとか、見てほしいとか、そういう承認欲求のようなものを持った犯人が事件を起こすサスペンス系のドラマを見たことがあるが、現実もそう変わらないのかもしれない、と首謀者を見る。
見ていないかと思いきや、意外と細かく見てくれる自分より強い人。失敗などをすれば容赦なく粛清されるが、そうでなければ意外と見てくれる闇の帝王。
こうやって無自覚に人を引き寄せていたのね、となんとなく人を惹きつける秘訣のようなものを感じ、ふむふむと考える。
「さすがに末端までは……覚えていないはずだ」
考えたこともないな、というヴォルは不思議そうでハリーは思わず笑った。
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