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 かくしてパートナー探しのはずがハリーとヴォルは既に決まっているため、四苦八苦する男性陣を見つめる。なんでこういう時男性が誘ってそれを女性が受ける必要があるのだろう、とヴォル一筋のハリーは首をかしげるしかない。女性が声をかけたっていいのに、とわからない風のハリーにヴォルはそのうちわかるさ、と笑う。

「ハリーと俺様が生まれながらの運命で結ばれているからこそ面倒に巻き込まれていないだけで、男女は難しいだけだ」
 いろいろ煩わしいことばかりだ、というヴォルにハリーはやはりわからない。とにかく練習はしないとな、というヴォルの手によってハリーは女性パート以外の練習を知らず、それを教え込ませられることとなった。夜の方が覚えやすい、という謎理論にもハリーは気が付かず、そのまま朝まで“ヴォルの上で”踊らされるなんていうことも続く。


 久しぶりに見たルーピンは相変わらずの様子だが、シリウスから誕生日に一式服が届いたんだ、と以前と違って継ぎはぎのないきれいなローブを照れ臭そうに着てきた。校長室に行った後三本箒に行こう、とちょうどホグズミードに行けるハリー達にそう伝えて、階段を上がろうとし……

「わととと、ごめんなさい!ちょっと警護の話を……わわわわ」
 階段から降りてきた様子の闇払いの女性トンクスはルーピンにぶつかりそうになって慌てて飛びのき……最後の一段を踏み外してバランスを崩す。ぶつかりかけたルーピンが素早く手を伸ばし、トンクスを受け止める。

「階段をそんなに急いで降りると危ないですよ」
 歳が下とわかったのか、それともルーピンなりの気づかいなのか。柔らかく注意するとそれじゃあ、とトンクスがしっかり立っていることを確認して階段を上がっていく。
 ぼーっとそれを見つめていたトンクスはハリーに気が付くとねぇ!と言ってハリーの手を握る。

「あの人、顔に傷のあったあの人!もしかして知り合いだったりする!?」
 髪の毛が赤やピンク、サーモン色と赤系統にぐるぐると変わる女性にハリーは驚き、黙ってうなずくしかできない。あまりの勢いに一緒にいたロンも驚いていて、去年闇の魔術に対する防衛術の先生をしていたんだ、と答えた。

「ルーピン……。リーマス=ルーピン……。ありがとう!!彼って、また来るかな?どうかな」
 校長室ってことは来年はまたここに戻ってくるとか?とまくしたてるトンクスにハリーとロンは顔を見合わせた。今日はヴォルとハーマイオニーはそれぞれの調べ物があるとかでいない。

「一応この後一緒にホグズミードに……。その、父さんの親友で」
「本当に!?やだもーどうしよう。この後闇払いに報告に行かなきゃいけないのに。あのさ、えっと、その、彼に手紙を送っていいかそれとなく聞いてもらっていいかな?」
 少し恥じらう様子のトンクスにハリーとロンは顔を見合わせるばかりだ。トンクスの様子からもしかして、と思いつくハリーは優しいルーピンを思い浮かべてできることはします、とその手を握り返した。
 何が何だかわかっていない風のロンは一人ぽかんとするしかない。もう行かなきゃ!と心底悔しそうなトンクスは全速力で走りだし、そのまま消えていった。
 そこに用事がすんだのか、ヴォルがやってきてあっけにとられているロンと、どこか嬉しそうなハリーを見る。

「ヴォル、あのね、あのさ」
 今何が起きたのか、それを耳元に顔を寄せて内緒話をするハリーに、聞いていたヴォルは驚き、少し考えるように口元に指をあてた。

「その言い訳は俺が考えておこう」
 何と奴にも春が来る兆しが見えたのか、というヴォルの言葉でやっとロンは理解したらしく、嘘だぁ、と声を張り上げた。物静かなルーピンと、あの闇払いの女性。静と動で相性いいのかな、とロンは困惑気に考え……どこかにやにやとした顔で笑う。

 しばらくして、楽しげな様子のルーピンと不機嫌さ全開のスネイプが下りてきて、変な顔のロンとニコニコしたハリーと……同じくどこか機嫌のよさそうなヴォルを見る。

「ルーピン、先ほどの闇払いの女性……トンクスといったか。あの女性が来年どのような授業をするのか興味があるとのことだ。連絡先を知りたいと言っていたから……今度のダンスパーティーに来てみてはどうだ?知らない生徒もほとんどいないことだ。就任前挨拶として出ても問題はないだろう、ダンブルドア」
 ヴォルの言葉に目をしばたたかせるルーピンはそうじゃなという声に戸惑うように振り向いた。眉を上げるスネイプにヴォルはそういう事だ、と目配せをして……にやりと笑う。


 ハーマイオニーが合流し、皆より遅れてホグズミードにむかい……道中でヴォルがハーマイオニーにこそこそとトンクスのことを伝える。ホグズミードでシリウスにもあうと、今日は特別に許可が下りたんだ、と久々にアニメ―ガスを解き、ビールを飲む。
 こっちの外堀も埋めておいた方がいい、というヴォルの言葉にハリーはシリウスにこっそりトンクスのことを伝え……これ以上ない喜んだ様子のシリウスが協力しよう!と声を上げた。
 え?何の話?と突然の声に驚くルーピンに、この後ドレスローブ買いに行くぞ!とシリウスは大張り切りで答える。大丈夫かな、とはらはらするハリーにシリウスは、ルーピンをばっちり着飾らせてもらう、とウィンクで答えた。

「このアホ犬はともかく、春が来てよかったな」
「シリウスは……結婚とか想像もできないや」
 どんどん堀は埋めて行こう、というヴォルにハリーは笑い、どこか子供っぽいシリウスを見て、無理そうときっぱり言う。あまりの物言いに聞こえていたロンはふきだし、ハーマイオニーもやや同意的に頷く。

「ん?どうしたんだ?」
「いや何でもない」
 振り向いたシリウスにハリーは首を振り……ちらりとヴォルを見る。
「お酒臭い」
「内緒だハリー」
 バタービールじゃないね、それ、というハリーにヴォルは笑い返し、軽いリップ音を立ててハリーに口づける。このくそ蛇が、とシリウスに怒りのスイッチが入るも女主人ロスメルタがお座り!と声を立てて座らせた。
 魔法省からの公式発表で犯罪者ではなくなったシリウスだが、彼女からしてみれば学生時代からの困った客だ。だからこその扱いに他の客から笑い声が上がる。

「そういえば気になっていたんだけど、ハリーはどっちの姓を名乗ることにするの?」
 もうヴォルの行動に動じなくなってきたハーマイオニーは別姓にするのかしら、と首を傾げた。特に考えていなかったハリーはどっちでもいいけど、と言って……偽名であるヴォルを見る。

「俺様もとくには。セルパンというのは偽名だからな……。リドルは絶対いやだ。ゴーントか……スリザリンを名乗るのもあるな」
 今思えば選択肢はたくさんあった、というヴォルにハリーはそもそもがアナグラムだものね、と笑い、別姓でもどっちかにするにしても、ヴォルは僕のだし、僕はヴォルのだから、と言って自らヴォルに口づけた。
 思わず固まるシリウスをよそにヴォルはこんなかわいいことを言うハリーを今日このまま寝かせるわけには行かない、とどこに連れ込むか考え始める。そういえば……誰にも邪魔されない場所、と考えて屋根近くにある古い独房部屋があったはず、と口角を上げて今夜連れ込もうと決めた。


 親友の恋路になぜか大張り切りなシリウスはジェームズの影を貸してくれ!と言って、グリフィンドールに駆け込もうとして太った婦人に警戒される。必死に謝り倒し……たまたま寮の前にいたナギニが呆れて瓶を渡した。大広間で夕食をとるヴォルのもとに犬の姿で向かい……ヴォルの魔力を注いでもらうのを済ませるとどこかに走り去っていく。

「あれは……作戦会議だな」
 これからどうやって行けばいいのか、既婚者である親友の影と相談する気だ、というヴォルにハーマイオニーはため息を吐いた。

 寮に戻ろうとしたハリーだが、後ろから突然抱きかかえられ、そのまま窓から外へと出ていく。ハーマイオニーもロンももうヴォルの奇行には慣れたもので、絶対さっきのハリーからのキスでスイッチ入ったな、と学習しないのか天然なのか……ハリーの行動にため息をこぼした。

「昔秘密の部屋を探しているときに、飛行魔術のテストもかねて飛んだ際に見つけた部屋があるんだ。近くにあった階段はもう封鎖されていたため、誰も知らないだろう。必要の部屋は……八会わせる可能性があるが、あそこならば」
 ふわっ、と浮き上がるヴォルにハリーは慌ててしがみつき……今なんて言った?とまじまじとヴォルの顔を見つめた。前回、森で押し倒されてさすがに危ないい、と焦るハリーだったがヴォルはお構いなしに口付けでハリーを蕩けさせ……気が付いたらズボンを少し降ろしただけでほとんど着ているままに抱かれた。
 ざわざわとした森の中、何かに襲われやしないかとびくびくしながらもヴォルの熱に翻弄されて最終的にはもっと、と喘いで……ヴォルを抱きしめた。

 誰かに見られているかもしれない、というのはなんだかいつもと違った興奮をあじわったのだが、本当にケンタウルスらに見られていたのが恥ずかしくて仕方がない。
 ハリーが本当に恥ずかしがっていることを理解しているのか、今度は屋根の上の部屋に行こうというのだ。これは一応反省している、と言っていいのだろうか、と悩むハリーに構わずヴォルは目的の場所についたのか、着地してハリーを抱きかかえたまま歩き出す

「アロホモラ」
 あ、一応施錠されていたんだ、と思うと同時に誰か見回りに来ているのでは?とハリーが首を傾げ……ヴォルのローブの上におろされたことで思考を中断させた。

「まさか……本当にここで?」
 覆いかぶさるようにするヴォルにハリーが恐る恐る尋ねると、ハリーのネクタイに指を掛けたヴォルは微笑みながらハリーの唇を塞いだ。
 
 




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