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やっとマントが脱げる、と脱いだハリーはナギニと顔を見合わせてハグリッドとマクシーム、仲良さそうだったねという。
「あの二人って同じくらい大きいけど……何か別の種族だったりするのかな」
『そうね……。私はあったことはないけれど、大きな人というとトロールとか……あ、そうだ!前にご主人様が言っていた半巨人とかそういうのじゃないかしら』
ずいぶんと大きいよね、というハリーにナギニは首を傾げそうだと頷いて見せる。そういえば差別がどうとか言いつつそんなことを言っていた、とハリーは頷き……調べること多くなってきたと呻いた。
笑うナギニはん?と階段に顔を向ける。降りてきたのはロンで、ハリーとナギニを見て話し声が聞こえたから、ともごもごという。ナギニとおしゃべりしていただけだというハリーにロンはなんだか煮え切らない。
ロンのその態度にむっとするハリーはロンといいウィーズリー夫人といい……どうして自分で見て触れた僕を信じてくれないんだろう、と首をかしげる。新聞にかかれた嘘八百記事をロンの母モリーは信じていると言うが、ハリーは両親のことを想って泣くようなことはない。
そもそも、その両親が今影ではあるが傍にいる。それに、そんなことをしたら元凶である相方がどよっと落ち込むのが目に見えるため、そんなあからさまな態度をとることはないし、そのことで悩んでほしくない。
ヴォルデモートの息子と、そう信じているモリーは……どうしてその記事を信じるのだろうとハリーは理解できない。ヴォルが悲しむ要因を作ることはないのに。
「ロンは僕が不正をして、目立ちたがる人って信じているならそれでいいじゃないか。ロンの中で僕は不誠実で、不正を当たり前にする人ってそう思っているんなら僕が何を言っても信じないし、否定し続けるんだから。ロンのママもあのでたらめ記事信じているってさっき聞いたし……。2人そろって酷いよ」
むっとするハリーは同じように睨んでくるロンに向かって歩き、階段ですれ違いざまに睨みつける。何か言いたげにするロンだが、ハリーの眼を見ていられず思わず顔をそむけた。
「そんなに僕が有名なのが気に食わないならそういえばいいのに。僕は……ロンはいざというときはとっても頼りになる親友だと信じていたのに。ロンはそうじゃなかったんだね」
信頼していたのに、というとハリーはそのまま階段を駆け上がり、ヴォルの天幕に潜り込む。当然な顔で起きていたヴォルは聞こえていたらしいが何も言わずハリーを抱き留め、口づける。ぎゅっとすがるハリーを抱きしめたまま横になり、とぼとぼと自分の寝台に戻るロンの足音を聞き……ハリーの頭を優しく撫で続けた。
翌朝目を覚ましたハリーはロンに目もくれず支度を済ませてヴォルと共に大広間へと向かった。ナギニに頼んでセドリックに手紙を運んでもらう。するするとどこにでも入れる彼女はその手紙をセドリックのカバンに忍ばせて戻ってきた。
簡潔にハグリッドとマクシームのデートについてくるように言われた先で卵を持ったドラゴンに会ったこと、そしてそれを出し抜かなければならないことと、カルカロフも覗き見ていたこと、それらを書いた手紙を受け取ったセドリックは昼食の時に大広間でハリーを見るとわかったと小さくサインをして見せた。
「ドラゴンか……。あれは呪文が効きにくい。俺様はともかく、ハリーは優しいからそういう攻撃系はやめた方がいいだろうな」
あれの弱点は目だが、それは最終手段だな、とヴォルは本を閉じた。ハーマイオニーもそれを聞いてから一緒に図書室で調べるも成果は上がらない。
「やぁハリー。さっきはありがとう。そうか……ドラゴンか……」
図書室で調べ物をするハリーだが、後ろから小さな声が聞こえて振り向きかけ……そのままの姿勢でフェアじゃないと、と答えた。笑うセドリックは結膜炎の呪いはもしかしたら減点とかされるのかな、と独り言のようにつぶやく。
「だろうな。卵がどう出るかわからないが、割ったりしたら最悪弁償ものかもしれない」
ハリーのそばにやってきたヴォルが同意すると簡単な魔法でどうにかなればいいんだがという。やっぱり君でも難しいのか、というセドリックはめぼしい本がなかったのか軽く手を振って去っていった。ドラゴンは気が短いから悠長に魔法を使っている場合じゃないかもしれない、というヴォルにハリーもノーバートを思い出しながら確かにと頷く。
ハンガリー・ホーンテール種とかいうのが危険だというのはあのデートで聞いたが、こういう時にそういった一番危険なものに当たるの僕なんだよなぁとハリーはため息をついた。
「さすがにそれは操作できないだろうが……確かに、こういう時のハリーの逆くじ運はピカイチだったな」
なぜかこういう時大体そうなるな、というヴォルに運を上げる方法知らない?とハリーは小さく唸る。なくはないが今回はルール違反だとヴォルは答え、濃霧を発生させるのはどうか、と本をめくり……これだとハリーが見えなくてうっかり触れてしまうリスクの方が大きいな……と没にする。
対策を考えるのが大変だ、というヴォルはドラゴンについて調べているハリーを見る。ナギニと話しながらこれいたよね?と4匹のドラゴンの特徴を調べるハリーは特に要注意のドラゴンについてを確認していた。
鳥を出して目くらましは?というハーマイオニーに6学年で習うような魔法だぞ?とヴォルは難しい顔をした。まだ習っていないというのはそれだけ難しく、制御が容易ではないという事だ。制御ができないという事は自分に帰ってくる可能性も高い。
そうよね、と珍しく納得するハーマイオニーはコップをネズミにして大量に放すなんかどうかしらという。
「あぁ、それなら……この前習ったアクシオをマスターできれば材料を持ってこられるな。ただ、それだと隙が多すぎる。ただ呼び寄せ呪文はハリーだって十分練習できるから……覚えておいて損はないだろう」
何か便利なものを引き寄せる必要があるかもしれない、というヴォルにハリーは頷いて練習する魔法のリストに書き加える。
正直どうやればいいかわからないが……こうして一緒に考えてくれる友達がいて、幸せだな、とハリーは笑う。本当はロンがいてくれたら嬉しいが、これは仕方がない。
「まだ日にちがあるんだ。何かいい方法がないか考えてみよう」
焦る必要はない、というヴォルにハーマイオニーもそれもそうね、と言ってちらりと図書室の扉に目を向けた。ぱっと消えたのは赤い髪で……本当に素直じゃないんだから、とハーマイオニーはため息を吐いた。
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