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夕食後3人と別れたハリーはナギニと共に透明マントを羽織り、いつもの虫よけをしてからハグリッドの小屋へと向かう。ファングが嫌がると言って虫よけをしていないハグリッドの小屋は警戒すべき場所だが、そこにはシリウスがいるためハグリッドのうっかり発言を常に監視してくれている。
ハフハフという音に振り向けばスナッフルズが尾を千切れんばかりに振ってやってくるところであった。久々に余計なものがいないという風に喜んでいるスナッフルズにナギニが牽制するように顔を出す。
「おう、来たかハリー。そのままちょっと待ってくれ。何も言わずに俺についてきてほしい。スナッフルズ、ハリーのそばにいてくれ。よぉし、出かけるぞ」
妙なかっこうのハグリッドにハリーは驚き……歩き出したハグリッドの行く先を見てあ、もしかしてボーバトン校の校長先生に一目ぼれているんじゃ、とスナッフルズと顔を見合わせる。マントを被りなおしてついていくと思った通りボーバトン校の馬車にむかい、マダム・マクシームと共に森に入っていく。
今回の大会について、作戦を知らないハグリッドとは違い、スナッフルズはわかっているためにきょろきょろと警戒している。ふと、スナッフルズに袖をひかれ、振り向いたハリーはその視線の先にカルカロフがいることに気が付いた。第一の課題に関することなのかな、とハグリッドについていくと、複数人の声と何かの唸り声が聞こえる。
『ドラゴンだわハリー』
ナギニの声にハリーもそうみたいだね、と頷くしかない。ハグリッドがうっとりする中、聞いたことのある声がして、ハリーは近づいてきたがっしりとした体形の男性をじっと見つめた。
卵の数は数えてあるからね、というのはチャーリーだ。大変だったんだという後ろでは吠えているドラゴンに数人がかりで魔法をかけて抑え込んでいる。
『ねぇナギニ。ヴォルだったら一人でできるのかな』
『ご主人様は……いろいろ規格外だからやろうと思えばできそうね。これを相手にするならドラゴンを虐めないよう、説得しておいた方がいいかもしれないわ』
僕に何かあった時にどうにかするようなことないよね?と心配そうなハリーに、ナギニもそれは保証できないわ、と自分の主人を思い浮かべて言う。だよねぇ、というハリーの前でマクシームを連れてきたことにチャーリーは苦言を漏らし、ところでと4人目となったハリーについて尋ねる。
「くれぐれも、セルパン君が暴れないよう見ていてほしいな。ただでさえドラゴンの卵は貴重なんだ」
4人目となったハリーについてはきっと彼なら大丈夫と言いつつ、何かあった時にはその相方が暴れないようにして欲しいとハグリッドに頼みでる。あーそれは難しいな、というハグリッドに、何かわからないけれどもいざとなったら私も手伝いましょう、と本当は正体を知っているマクシームがハグリッドの手を握る。おお、と感極まるハグリッドは何をするんだと尋ねた。
詳しくは知らないさ、というチャーリーは振り向いてそこの鎖が一番太いはずだ!と声を上げた。運ばれていく卵をハグリッドが見つめるが、卵は数えたからね、とチャーリーにくぎを刺される。
「あぁ大丈夫だ。今それを飼うとあーなんて言ったか。“逆鱗”に触れる奴がいる」
だから見つめるだけでいい、というハグリッドにハリーとナギニは顔を見合わせてくすくすと笑う。ハグリッドとマクシームが親密に話し出したことに帰ろうか、とスナッフルズの背を叩き、一緒に歩き出す。あんなにのぼせているハグリッドのことだ。ハリーとスナッフルズが消えていることに気が付かないだろう。
相変わらず場所が限定されていることと、一定時間ならばどこでも戻れることになったというシリウスはドラゴンを出し抜く方法か、とつぶやく。ハグリッドの小屋では制限がないのか、勝手にコップを出してハリーに温めたミルクを差し出す。
普段からこうしているの?と尋ねるとシリウスは普段はずっと犬のままさと返した。食事の時間と時々シャワーを浴びるのと……そういうこまごましたものは城で済ませているという。ハグリッドと二人いても特に互いに会話がないかららしく、酔ったハグリッドを介抱することはあれどほとんどをファングと会話するのにとどめているらしい。
「こちらでも少し考えておこう。ハリーもいい呪文を見つけて練習するんだぞ」
「うん。そうだ、セドリックにも伝えなきゃ。4人でドラゴンのことを知らないのはセドリックだけになっちゃうから」
それは不公平だ、というハリーにシリウスは何も言わず笑って頭を撫でるにとどまる。目を狙うといいがそれだと暴れるからな、とシリウスは勝手に拝借したウィスキーをからりと氷だけを入れたグラスに注ぎ、ふむと考えているようだ。
「何かいい方法探してみるよ。眠れるドラゴンの尻尾を踏むべからずだっけ?そんな些細なことで怒るなら……何か攻撃しないで出し抜く方法とか……。きっと卵が関係してそうだからもしかしたら巣に隠された何かを卵の間から盗む、とかそういうやつかもしれないし」
そういう競技があったよね、とハリーはヴォルとハーマイオニーが見つけてきた過去の大会の記録から思い浮かべた。確か過去にはきらきらしたものが好きなドラゴンを使って、宝石を盗むという競技があったはずだ。
「なるほど。確かにそう考えると納得だ。じゃあなおさら怒らせない方がいいな。ハリー、無理はするんじゃないぞ。散々ジェームズに言われたからな。うんざりするほど。そうだ、ジェームズやリリーの影にも聞いてみるといいかもしれないな」
人狼状態のリーマスと気絶したピーターとジェームズの影とシリウスだけになった叫び屋敷。その時にシリウスがぐったりしていたがその時のことか、とハリーは笑うしかない。ナギニはかって知ったる風に木箱から鼠を取り出し飲み込むと助言はいくらあってもいいものよ、と頷く。
「ハリー、この三大魔法学校対抗戦は何も技術だけが全てじゃない。時に頭脳と人脈と……そういった総合的なものを競う。そんな内容のはずだ」
だから気にせず最大限つかうといい、とシリウスは笑いそろそろ寮まで送ると言ってハリーのコップと自分のグラスを片付けると犬になり、透明マントに入ったハリーを先導していく。
そのまま本当に寮まで来ると、ハリーが中に入るのをじっと見つめ、一目散に走り去っていった。
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