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それから数日間、アーサーとパーシーは連日魔法省に朝一番に赴き、夜遅くに戻ってくる生活を送っていた。ビルやチャーリーは休暇中であることと、あんな事件があったという事で家族だけでなく弟の友人であるハリー達もまとめて守っているようだ。
そのついでにヴォルが興味があると言っていたエジプトの呪いについて、ビルは手こずった呪いや、面白い古代の呪いを楽し気に説明する。
「ビルってかっこいいよね。ヴォルとは違う方向性のイケメンって感じ」
ぼそっ、とつぶやくハリーにロンはそうかい?と言って、ジニーはでしょ、と頷く。
「方向性の違う顔の整った二人が対話とか、目に優しいと思うの」
「そうね、言われてみれば、ヴォルも美形のはずなのよね。本来は」
陰と陽、はっきり分かれている方向性の違う美形のツーショットに、ジニーはかっこいいでしょう、と言ってハーマイオニーも同意しつつ、これが後に魔法界を震撼させた闇の魔法使いになったのだから、何とも言えない気分になる。
「でもさっきからしている会話の中身……呪いのことなのよね」
「それもだいぶディープな奴だ」
見ている分には色気のあるさわやかイケメンと、危険な色気を放つ正統派イケメン。それなのに話している会話は先ほどから、ピラミッドに仕掛けてある盗難防止の呪いの話で、知らずに入ったマグルのミイラだ、皮膚の下に潜り込む虫の呪いだ……。
砂が人の姿をまとって襲ってきた話など、楽し気に話すビル。聞いているヴォルがこの系統の呪いか、などおよそ学生らしくない素の口調が出つつ答えると、そうそうそうだったんだよと会話が弾んでいた。
グリンゴッツの呪い破りもいいなとか思っているのかな、とみているハリーに気が付いたヴォルはそっと目を細め、愛していると口を動かす。顔を赤くするハリーは嫉妬したわけじゃない、と反論してプイと顔をそむけた。
「ほんと、残念オブ残念な奴だよな、ヴォルって」
呪いの話を再開するヴォルの姿に、ロンのポロっと出た言葉にハーマイオニー達はうんうんと頷いた。
課題がぁぁと嘆くロンにすがられ、何とかホグワーツ特急に乗る日が来た。今年も今年で大人数であり、どうやって行くのかと思えば当日の朝、魔法省から迎えの車が来て家族を待つ。
「例の逃走したクラウチJr.の行方と、ピーターの居場所等が不明なことなどから、是非にと……」
恐縮した風のアーサーが固まっているパーシーを横にうれしい話ではあるんだけど、と言いながらちらりとヴォルを見る。あの日、ファッジが始終怯えていた青年はそれは助かりましたね、と微笑み、庭で狩りをしていたナギニを呼ぶ。
ここ数日でまた大きくなったナギニは専用の袋に入ると袋の大きさからはおよそ不釣り合いな大きな顔をのぞかせ、ホグワーツに帰るのねと上機嫌だ。
「とにかく、さぁ……おや、何だろう」
さぁ乗ってと促すアーサーだが、暖炉に現れた男の首にどうしたんだと声をかける。男はセドリックの父で、緊急の案件だと声を出した。思わずぎょっとするハリーだが、ヴォルは優しくハリーを抱きしめると、フルーパウダーの応用だと耳元で囁く。
「マッド・アイが」
そう話し始めた後ろでモリーが必死にここに羽ペンがあったはず引き出しをひっかきまわしてメモとペンを探す。
「騒がしいというマグルの通報があって。ゴミバケツがあたりにゴミを発射しているんだ」
「それならばなんとかできそうだ」
荷物を運ばなければならず、バタバタとする中アーサーはエイモスから何かを聞きとるとそれをメモしていく。全く今日から新しい仕事だというのに、という声にヴォルは一瞬立ち止まり、荷物をトランクに詰めていく。すぐ行かなくては、と立ち上がったアーサーが準備をしに飛んでいき、パーシーも僕も行かなくてはともごもごという。
「アラスター=ムーディか懐かしい」
「ヴォル知っているの?」
早めに行った方が道がすいている、とそういわれてあわただしく出ていったアーサーとパーシー以外の家族全員が車に乗り込む。その座席の中、と思わずつぶやくヴォルにハリーが首をかしげる。
ちらりと運転席を見たヴォルはあとで説明してあげる、とハリーの頬に口付けた。
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