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 ほどなくしてテントに戻ると、ちょっと怪我をしているビルと鼻血の跡があるパーシーと、シャツが破れたチャーリー、そしてフレッドたちとジニーが待っていた。

「ハリー達なら大丈夫だ」
 ほかの子らとはぐれて、いう声にちゃんとみんな揃っていると返すアーサーはみんなを中へと入れる。
「死喰い人らはどうなりました?」
 あの馬鹿ども、というヴォルにビルが苦笑し、半分は捕まって尋問を受けているのと、残りの半分は精神崩壊で治療中だという。

「あれ、フードを被っていたけれども君だよね。心神喪失で話も通じない人らは、ぶるぶる震えながらひたすら許しを請うような言葉を出していたけれども」
 なにをしたんだい?と尋ねるビルにヴォルは肩をすくめて見せて……まぁこの一家なら大丈夫かとアーサーを見る。

「いいのかい?多分……そこにかかっているのだと思うのだけど」
 どこか気遣う様子のアーサーにヴォルはウィーズリー家の皆さんを信用していますので、と返す。

「まず僕の出自にかかわる話ですが、かつて例のあの人が血筋を残すために魔女である母をさらったそうです。何とか逃れたものの、その時にはすでに僕が宿っていたと。ダンブルドアらが子に罪はないが万が一存在を知られたらと危惧し、ポッター家で保護されていました。奴は僕の存在には気が付かず、別の目的でポッター家を襲撃したと聞いています」
 暗にヴォルデモートの息子だというのを伝えると、正体を知っているフレッドたちはそういう設定なのか、とテントの奥の方で面白そうにしいるが、正体を知らない兄3人は驚いたようにヴォルを見つめた。

「あの奇妙な顔になる前と僕がそっくりだという事で……多分フードを被っていた僕を奴と見間違えたのかと。なので、例のあの人がいない今、腕に闇の印を持つ死喰い人らが気軽に集まって酔っ払った結果、僕を見て恐れおののき、小心者らはそれだけで恐怖に精神がおかしくなったのかなと思います」
 ね、と同意を求めるようにジニーを見れば雰囲気がまるで違うけどそう、と頷く。彼女が2学年時に何があったのか兄弟たちは知っているようで、まさかと言いながら、妹の頭を優しく頭を撫でてからヴォルに目を向けた。
 死んだ人の威光に隠れ、遊んでいたらその人が現れるなど、通常の人がヴォルデモートに遭遇するよりも、その恐怖は測りしえない。


「あの仮面をかぶった人が死喰い人っていうんだ。じゃあ空に打ちあがった闇の印っていうのは?」
 あれがかつて闇の帝王の部下だった人達、とわかったハリーの疑問にあぁあれはとヴォルが答える。

「あれは闇の勢力が空に描く、闇の帝王の印だ。あれが打ちあがったということは襲撃がなされたという事。気に入らない相手の家に行き、その本人ではなく家族を襲うなど、恐怖を植え付けるための印のようなものだ」
 だから奴ら以外好き好んでみることはない、と答えるヴォルにその通りだとアーサーは暗い顔をする。その意味はその当時を知らないハリー達にもわかり、ハリーはそっとヴォルの手を握った。

「あれは仲間意識を高めるような代物で、うっかり陽動に使われてはならないと制限がされているはずだ」
 まるで他人事のように言うヴォルにそれもそうか、とビルたちは頷く。標的にされていると思われる家にあらかじめ上げることができたのであれば、一時でも死喰い人の襲撃は阻止できるかもしれない。それが行われなかったという事であればそういう制限があったのかも、と。

「セルパン君の言っていたように、屋敷しもべ妖精は特に嫌われているようだった。クラウチ氏の屋敷しもべ妖精は何とか抑えようとして、巻き添えを食らったようだ」
 本当にひどい扱いだった、というアーサーの言葉にハーマイオニーはぎゅっと眉をしかめ、ヴォルを睨むように見つめる。あいつら嫌いだ、というヴォルにハリーはドビーを思い浮かべて、まぁ好きな部類ではないかもだけど、と苦く笑う。

「クラウチさんがなんですって!?」
 驚いた声を上げたのは案の定パーシーで、アーサーはどうしたものかと考える。

「今日はもうみんな寝よう。また早朝に移動しなければならないかもしれない。パーシー、特に今はしっかり休まなくては。今度とても忙しくなるぞ」
 全員寝なさいというアーサーにおずおずと寝台に入る。ジニーとハーマイオニーはヴォルが使うはずだったベッドと僕も見張りにつくよというビルのベッドにそれぞれ入り、眠ろうと目を閉じた。

 当然の顔でハリーの隣に入るヴォルは警戒状態のままハリーの髪をそっと梳く。俺様がそばにいる、というとハリーの額に口付け、眠るよう背中を軽くたたいた。うん、と安心するハリーの眼が閉じられ、寝息をこぼす。帰りのポートキーが準備できるまでしばしの休憩となった。

 
 




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