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「あれ?あれは……フランス人っぽいな……ボーバトン校の生徒か?」
帰る道中、同い年くらいの一団を見つけ、ヴォルがいう。ロンとハーマイオニーはあぁという風にしていて、一団で来たのかなという。ハリーは海外にも魔法学校があるなんて思っておらず、目をしばたたかせて、なんだか恥ずかしくて少し下を向く。
『恥じることなんてないハリー。マグル出身の魔法使いなんてハーマイオニーみたいに調べるのが好きでない限り、就職するまで知らないこともよくあることだ』
気にしなくていい、と蛇語でハリーに囁くヴォルにそういうものなの?と視線を向ける。
「そうだロン、スクイブやそのほかの理由でホグワーツに入れなかったりした場合の魔法使いの子供はどういうところに行くのか知っているか?」
知らないのだが、というヴォルにロンは目をしばたたかせて、助けを求めるようにハーマイオニーに視線を向けた。その頼みの綱であるハーマイオニーも肩をすくめて見せる。
「ネビルがずいぶん前に、手紙が来て家族が喜んだって言っていたけど……。そっか、その場合とかどうするのだろう」
ロンやハーマイオニーも知らないという風にしていることから、ハリーは首をかしげて最初に問いかけたヴォルを見る。
「魔法界って言っても知らないことはたくさんだ。……ハーマイオニー、マッチのつけ方教えたほうがよさそうだな」
俺様も知らない、というヴォルは見えてきたウィーズリー家のテントを見て、やれやれという。すぐにハーマイオニーが駆け寄り、正しいマッチの使い方をアーサーに手ほどきすることとなり、そこにパーシーたちが合流してきた。
パーシーは報告書が、というのが口癖になっているじゃないのか、とヴォルが突っ込むほど始終仕事仕事と言っており、それにビルがまじめだからなあいつはと笑う。
「仕事と私事、分けていないと後で苦労する……と思う。ワーカーホリッカーというわけでもなさそうなのに、不思議だ」
とはいえ、営業していた時の自分もだいぶ働いたが、と小さくつけたすヴォルにロンは真面目なパーシーを案じる。それをみてヴォルは根っからの闇属性だから大丈夫だよ、とハリーがフォローを入れ、どうしたんだ?と振り向くヴォルに何でもないと笑顔を向けた。
「やぁ!彼のおかげでいい席のチケットが手に入ったんだ。ルード=バグマンさんだ」
現れたのは黄色と黒のクィディッチのユニフォームを着た少し腹の出た男性だった。魔法省のスポーツ部の部長だというバグマンはかつて選手だった時にブラッジャーに鼻をつぶされたような顔で、興奮を隠しきれないといった風にアーサーと握手する。
家族とハリー達を紹介すると、なんとも紛らわしい名前だと言いながら少し眉をひそめたヴォルの手を握り、ぶんぶんと振る。
魔法界で初めての反応にヴォルの眼が思わず点になり、どういうことだと考え……そういえばロックハートも似たようなものか、と記憶も何もかも失った男を思い出し、本当にと笑いかけた。
双子と何やら賭けをするバグマンにアーサーが呆れ……そこのパーシーの上司であるクラウチ氏が現れた。どこかの銀行の頭取といった風体の男性はいかにも気難しそうな顔で探したぞとバグマンに言う。
「バーティ=クラウチ?あれが……あれの父親か」
彼が来る前に二百国語話せるというパーシーにヴォルは何か数え……ふっと目を細めた。
『お前の名前はよく覚えている』
シュー、と蛇語を出すヴォルにそうなの?とハリーが振り向き、いったい何の音かという体でクラウチが目を向ける。パーシーが不快にそうに顔をしかめるのをみて、ヴォルは何でもないでよという顔をし、振り向いたハリーを抱きしめた。その後二人が立ち去るとパーシーはヴォルを睨み、ふんと顔をそむける。
「世界にはものすごい量の言葉があるからな。喋れはしないらしいが、あの爺もパーセルタングの聞き取りだけはできるらしい」
パーセルマウスは本当に限られたものだけなんだ、というヴォルにダンブルドアの前ではヴォルと内緒話するのはやめよう、とハリーは心にとめる。
そうこうしているうちに日は傾き、いよいよ試合開始の時間となった。人ごみに眉を寄せるヴォルだが、楽しそうにしているハリーを見ることで満足し、会場の階段を上っていく。
ファッジと顔を合わせると相手はビクリを体を震わせ、まるで腹を空かせた大蛇を前にしたかのように大蛇(ヴォル)の様子をうかがう。彼としてはピーターを逃がしてしまったがため、闇の帝王だったという青年が怖くて仕方がない。ジェームズの瓶は夏休みに入ってからそれはそれは丁寧な梱包で送り返され、全力をもってピーターを再捕獲するとそうしたためた文章が付随していた。
その夜に瓶から呼び出したジェームズによって、魔法省は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていたという事を聞いた。それはそれは上から下への大騒ぎで……ファッジは指示を出した後、そのままの姿勢で気絶したと。
ヴォルは呆れかえり、ダイアゴン横丁の梟便を使って何やら手紙を送っていた。ヘドウィグはこんな仕事お願いするわけにいかない、というヴォルに納得したようで、今回は耳をかじっていない。
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