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ほどなくして発動したポートキーに引っ張られ、一同は開けた場所へと到着した。ハリーが倒れかけるのを支えたヴォルだが、とっさに近くにいたヴォルにつかまった多数の手によって倒される。
「自由に魔法使いたい」
あぁもう面倒だ、と青筋がたつヴォルにハリーはだめだよ、と小さくたしなめた。駆けつけてきた魔法省の役人の手によってキャンプ場を振り分けられ、テントの場所を教えてもらう。
道中、隠す気あるのかこの連中は、と思わずヴォルが呆れてしまうほどマグルとはかけ離れた光景に、ハリーとハーマイオニーは思わずぽかんとその光景を眺めた。
ロンたちも物珍しい様で、色の変わるテントや低くしか飛べない子供用の箒に乗った小さな子供、怪しげな炎で肉を焼く人などを見ている。
「たくさんいるんだって今実感している」
そうよね、小さな子供でも魔法を使う環境なんですもの、とマグルの中で育ったハーマイオニーは妙な関心をもってつぶやく。
「確かに……これだけ魔法族がそろっているのも珍しいと言えば珍しいな」
こうも平和的に集まるなんてそうそうない、というヴォルに君の時代は君が暴れていたからじゃないか、と至極まっとうな突っ込みをロンが言う。
思わず笑うハリーとハーマイオニーにフレッドとジョージも平和な集まりが珍しいんじゃなくて、悪い集会ばかり開いていたんじゃないかと茶化す。
はたと気が付いたようにだからか、と納得したヴォルに本性を知る5人は思わず笑いだし、やかましいと言いながらハリーを抱き寄せる。
「やっぱりこの二人……揃っているときが目の保養……」
この二人、やっぱりいいわというジニーに、ハーマイオニーはこの二人の間に入るなんてできないものね、と“セット”で見守る女子生徒らのグループを思い浮かべた。大広間でヴォルがハリーにキスした際、手を組んだ各々個別のファンクラブ。
二人のそばにいるという事で、再三誘われていたハーマイオニーはひゅーひゅーとはやし立てるフレッドたちに目を移した。
その後は滞りなくテントを張って……まともそうなテントなんだかほっとするハリーだが、中に入るなり前言撤回、とその広さに驚いた。男女で分けられたテントは広く、こんなに大勢来ても問題はなさそうだ。さすがのヴォルも驚いたようで、あっけにとられたようにテントの中を見回した。
「そういえば魔法使いの家がそもそも外見とは異なる大きさだったな……」
二人用のテントの中がこんなに広いとは予想外すぎる、というヴォルにこんな可燃性の高いもの、中に入らず燃やしてそうだよな、とフレッドとジョージが顔を見合わせる。
火をつけて料理するんだ、というアーサーを置いて4人で水を汲みに行くと、ロンには見慣れたらしい光景だろうがマグル出身の3人には新鮮な光景が広がっていた。
杖での悪戯など子供の魔法使いを見たことがなく、しかりつける親の声や走り回る魔法省の役人など、“魔法界の平和な光景”にはハーマイオニーとハリーは顔を見合わせて笑いあう。
「マグルの公園と同じだな。魔法使いの親というのは杖がある分苦労しているようだが」
子供の魔法使いなぞ赤ん坊のハリー以外記憶にない、と口には出さず考えるヴォルは見えてきたテント群に眉をひそめた。
「ずいぶんエコなテントだね」
わーお、と小さくつぶやくハリーに目がおかしくなったみたいだ、とロンが言う。クローバーで覆われたテントはどうやらアイルランドのサポーターのテントらしく、小山があちこちあるようにしか見えない。ルームメイトのシェーマスらが出てきて、久しぶり、と言葉を交わす。
シェーマスの母が出てくるとシェーマスは4人を紹介し、握手を交わした。ヴォルの名前は一瞬ビクリと体を震わせたものの、ヴォルの余所行きの顔にあらまぁとロックハートの周囲にいたファンのように微笑み、アイルランドを応援してくれるかしら、という。
その後ろでシェーマスがふざけた様子でげぇと舌を出し、一緒にいたトーマスと数々の“伝説”を作っているヴォルの本性に声もなく笑いあう。
えぇ、そうしますと微笑み返すヴォルとともに離れると、君って本当に外顔いいよね、とロンが呆れた様子でつぶやいた。なんのことかわからないように首をかしげるヴォルはそれにしても、と大勢いるキャンプ場に目をやった。
「まさかこんなところで二人に会うなんて。ということはヘドウィグを借りなくとも買い物を押し付けられるな」
絶対会う気がしてきた、というヴォルに一瞬考えるロンはあぁと笑い、今年度もあの親は胃が痛いだろうなと考えて自業自得だなと考える。
水汲み場でネクリジェを着た老人と頼むからズボンをはいてくれと懇願する魔法省のやり取りにヴォルは呆れ、ハーマイオニーは笑いが止まらず席を外した。ほかにもホグワーツ生は幾人か出会い、二人はいつも一緒だな、と半ばあきれたように声を掛けられる。
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