------------
「さぁそろそろ寝ないと。明日の朝はとても早いのよ。あぁ二人とも学用品のリストは置いておいてちょうだい。明日界に行きますからね。あぁでも金庫は……」
「ヴォルの金庫は特殊な金庫だそうなので、僕のところを使ってください」
さぁさぁと片づけを始めるモリーがハリーとヴォルに学校の新しい教科書などを買ってくると言いかけてヴォルの金庫を思い出す。それに対しハリーがあれはさすがにダメだよね、とそう考えて自分のところからという。ヴォルもあれはさすがに、思い返してあ、いや、と思い出す。
「僕の分は大丈夫です。ちょっと買いたいものがあるので」
ハリーのだけで大丈夫と首を振るヴォルにごめんなさいね、とモリーはほっとしたように返してさぁ寝たほうがいいわ、と追い立てていった。
「誰に頼むんだ?」
今日はビルとチャーリーが俺たちの部屋使っているから俺たちも一緒だ、とフレッドたちが先に階段を上がる。部屋に入るなりフレッドに尋ねられたヴォルはいつもの悪い笑みを浮かべて以前からのしもべ、とほとんど音を出さずに答えた。
それだけであぁと納得し、ジョージと顔を見合わせて威張っているからこうなるんだよな、と笑う。
5人も入るとぎゅうぎゅうで、去年散らかっていたものは全部隅の方に片付けられている。
「ハリーは俺の上でいいな」
狭いから、と横にいたハリーを持ち上げ、自分の上にのせるヴォルにハリーは顔を赤くして大丈夫だよ、というがじゃあもう少し余裕があるか、とフレッドがその開いた空間の半分を埋めたため、降りることができなくなる。
「いつもこうやって寝ているんだから、いまさら何を遠慮しているんだ」
全然重くもない、というヴォルにたまにはこのイチャイチャが役に立つこともあるのだとロンも縮めていた体を少し解放させた。
恥ずかしがるハリーだが、なだめるようなヴォルの手にだんだんと瞼が落ち……すぅすぅと寝息を立てる。人の多いところという事で無意識に体が警戒状態になるヴォルは一日くらい大丈夫だな、と浅い仮眠をとることにした。
足音で目を開けたヴォルは扉の開く音に目を向け、あら、目が覚めているようでよかったわ、という声に力を抜いた。さぁ起きて、というモリーに促され、ヴォルはハリーを優しく揺さぶり、抱きかかえたまま上半身を起こした。
眠たげなハリーにおはよう、と朝の挨拶を交わし、モリーの咳払いをどこ吹く風と聞き流す。はっとなって目を覚ましたハリーの真っ赤になった顔に、寝起きのロンがどうしたんだ?と問いかけ……フレッドとジョージがにやにやと笑う。
「さぁ、もう行かないと」
昨晩と違って今度は起きるよう促すモリーにヴォル以外の4人がもそもそと動き始め、ヴォルは体をほぐしながら階段を降りていく。
「姿現しができる子はもう少し寝ていられるのよ」
ぶつぶつ文句を言うフレッドたちにモリーがあなたたちはまだ試験に合格していないのだからという。そういえばそういうのあったな、と思い返すヴォルだが当然試験は一度で合格している。
何とか朝食をとり終えるとマグルっぽい服装でと言われて二人はロンたちの服装の面倒を見ながら手早く着替えた。
ポートキーを使うというアーサーにハリーはヴォルを見る。形容しがたい、というヴォルは見ればわかると珍しく口を濁し、合流した親子を見た。ハッフルパフのキャプテンであるセドリックはハリー達に気が付くとあの時は気が付かずごめん、と声をかける。
開幕戦での敗北にフレッドとジョージはむすっとした後、ちらりとヴォルに視線を向けた。エイモスというセドリックの父親は吸魂鬼のせいで落ちたハリーに対し、息子は落ちなかったと誇らしげにいい……不機嫌そうな赤目の少年に目を向けた。
「えぇっと父さん、ハリーの隣にいるのがその吸魂鬼を半分倒したヴォル=セルパンだよ。あいつらのせいでハリーが落ちて、とても大変なことが起きたんだ」
話したじゃないか、というセドリックにエイモスは本当にそんなことが可能なものか、と笑う。
「その前の年は大階段を半壊させたんだよな、ハリーの恋人は」
「あぁ、しばらく階段が使えなくなったあれか……」
半端な力じゃない、とわざとらしくため息をつくジョージにセドリックはそんなこともあったなと頷く。本当にそんなことが可能なのか、と疑うエイモスにどっちでしょうね、とヴォルは内面を知っている人でなくともどこかしら、ぞっとするような“きれいな微笑み”を浮かべ、さぁポートキーに触れないと、と背を向けた。
気にしてないよ、というハリーだがその顔を見てセドリックに大丈夫だからねと目配せをする。
後ろを向いた瞬間のヴォルの顔の変わりように、エイモス以外が無意識の本能が打ち鳴らす警鐘をうちで聞いた気がし、早く行こうと何かに急かされるように長靴に指を触れさせた。
「蛇のしっぽ」
はぁ、とため息をつくハーマイオニーの言葉に正体を知るロン達は目をそらし、例のあの人の息子と聞いているアーサーとジニーは危険な香りを感じとり、噂でヴォルデモートの息子節があると聞いているセドリックはその噂を確信した気がして無意識に父親を守るようにそろりと動いた。
|