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 呆れた様子のハーマイオニーは首を振ってほどほどにしなさいよ、と早々に話を終えてチャーリーとビルなら外にいるからいきましょうという。

「あぁ、グリンゴッツ勤務の長男とドラゴンの次男だったか……。チケット枚数ものすごいことになってないか?」
 大所帯もいいところだ、というヴォルにちょうどやってきたアーサーが笑う。なんでもルード・バクマンという大会を取り仕切るスポーツ部門の部長とつながりがあるらしく、大丈夫さという。
 なるほど、と納得したヴォルは先に行くハリーを追いかけ、庭へと出ていった。

 写真で見たことのある長男ビルはスラっとしていて、長い髪が似合う男で、チャーリーはドラゴン相手にしているからなのかがっしりしている。
 ハリーとあいさつを交わす二人がヴォルに気が付き、あの時ノーバートを気絶させた少年って君か、と笑いかけるチャーリーにヴォルはどちらの顔で行こうか考え、とりあえず様子見の優等生とした風に接する。

「フレッドとジョージの話ではハリーを守るためにぶちぎれて大階段破壊したんだって?」
 すごいな、と笑うビルの眼が悪戯っぽく光ったことであぁ優等生とした顔じゃなくていいのか、とすぐにいつもの顔になる。あの二人がいやに話をしていたからだいぶ君の癖があるのだろう、と弟の友好関係をなんとなく把握している風な長男次男に、兄弟が多いとこういうことがあるのか、とヴォルはハリーを見た。
 互いに一人っ子であり、同い年の者しか周囲にいなかったこともあって兄弟間の感覚はよくわからない。ヴォルとハリーに至っては和解してからずっと一緒にいることもあるものの、そういった目ではお互い見ていない。

「グリンゴッツの呪い破りって具体的にはどんな仕事なんだ?」
 呪いに興味がある、というヴォルに聞いていた通りだな君は、とビルはさわやかに笑う。

「チャ−リーさん、ノーバートはなじみました?」
 あれからどうなったのか、そう問いかけるハリーにあいつは元気すぎて困るほどだ、とチャーリーが笑う。今日明日は時間がないから、とワールドカップが終わってからというビルはチャーリーに声をかけ、机をぶつけ合う。
 ほどなくして家で仕事を片付けていたパーシーがうるさいと顔を出し、分かっていてふざけて居たらしい兄たちは笑って夕食の準備を始める。

「パーシーも一人暮らしをと思ったが、あいつ生活能力皆無そうだな」
 そんなにうるさいなら、とつぶやくヴォルにロンは笑い、それに対してジニーがロンだってすぐに行き詰りそうよ、という。料理を手伝うハーマイオニーとジニーにハリーも配膳を手伝う。人目がなければ魔法で手伝うのに、とヴォルもそれに加勢することにした。

「ヴォルは……卒業後どうしてんだい?」
 仕方なく手伝うロンがヴォルにこそりと尋ねると、ハリーも興味深げにやってくる。

「あぁ、俺様が孤児院出身だっていうのは……あー……今度話すが、卒業後しばらくは潜伏を兼ねて一人暮らししていたな。言っておくが、金は信者らから得てはいたがそれ以外の資金がなかったため、自炊していたぞ。外で食うほど金がなかった。もっとも、学生時代に殺した父親の金を手に入れてからはだいぶ楽にはなかったが、それを受け取るまでが時間がかかった」
 孤児院、と聞いて驚くロンにめんどくさそうなヴォルは今度話す、と言って卒業後どうしていたのか口を開く。なるほど、と頷いていたロンは父親?え?と混乱し、さすが世界を震撼させた闇の帝王、と目をそらす。

「ヴォルのあの金庫、いつ貯めたの?」
「あれは……ゴーント家のごくわずかな遺産とスリザリンの遺産の一部とリドル家の遺産、信者らからの金と自力で稼いだ金、その他もろもろだ」
 あんなにたくさんの呪いのグッズとお金、というハリーにあれは何だったかなとヴォルは中身を思い返しながらどんな配分出たかなと思い返した。盗んだものは……ないはずと思いながら、そういえばスリザリンのロケットはどうやって入手したんだ?とぼんやりしている経緯を思い返そうとして、今となってはどうでもいい話かと割り切る。


「就職先が決まったってことはあとは二人の新居だけ、という事なのかしら。そこらへんはもう決まっているの?」
 さすがにそれはないわよね、というハーマイオニーにハリーがシリウスとヴォルが喧嘩しそうだけど、と言ってすっかり夕食の準備が整った席に着く。
 あぁその問題もあったわね、と何か考えている風のヴォルを見て、彼の選ぶ家は果たしてどういうものかと考える。十中八九本来自分が好む家というよりはハリーが暮らしやすい家を優先することはわかる。どうしてもとシリウスが一緒になっても拒めないだろうとも。

 明日の試合について意見交換がなされ、ハリーはどういう状況なのかをビルやチャーリー、フレッドたちから聞く。ヴォルとしても国外の魔法界の話は興味があり、アイルランドとブルガリア、と聞いてダームストロング校が確かブルガリアとつながりがあったな、と思い返す。
 そこにヘドウィグとナギニが現れ、チャーリーがその蛇はどういう特徴があるんだい?と興味深げに尋ねた。乙女の秘密は易々と話せません、とプイっと顔をそむけたナギニの言葉をチャーリーに伝えると面白いレディーだと笑って卵食べるかい?と剥いたゆで卵を差し出した。
 
 




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