------------



 ヴォルから簡単な説明を受けるとロンは思わず吹き出し、パパが見たらさぞ滑稽だったな、と胃を痛めるルシウスを想像して笑い転げる。ハーマイオニーは逆転時計をそんな使い方して、と呆れつつ最終手段をとってまでヒッポグリフを助けたヴォルに感謝しないとね、と笑いかけた。
 ハリーはハリーで正体バラして大丈夫?とヴォルの心配をし……真っ先に自分のことを気にかけるハリーに嬉しくなったヴォルがぎゅっと抱き寄せる。

「死喰い人らが少し気にはなるが……知ったところで俺様に意見するような愚か者はしない。それに、世間が何と言おうとどうなろうと……ハリーは俺様の傍にいるだろ?」
「当り前だよ。ヴォルの傍に誰もいてほしくないし……それに、僕が見ていないとヴォルはすぐ変な方向に行きかねないからね」
 ヴォルの問いかけに間髪入れず答えるハリーの真剣な眼差しに、ヴォルはニヤリと笑ってロン達がいるのも構わず軽く唇を合わせた。せいぜい、俺様から目を離さないことだ、と楽し気なヴォルにハリーは笑い、怒られる前に寝ようとそれぞれのベッドに向かった。

 穏やかな空気で眠った翌朝、なんとか引き離してきたと疲れた様子のシリウスが医務室に現れ、やはりどこか疲れた様子のルーピンがシリウスとは反対の紐を掴んで気絶したピーターを引きずってきた。
 ハリーに瓶を返すシリウスは反論できない犬の状態でジェームズに付き合うのはさすがにしばらくいらない、と力なくつぶやく。ピーターはとても怖い目に会ったらしく、気絶してさっぱり起きる様子はない。

 ほどなくしてダンブルドアがファッジとともに現れ、ピーター本人から写し取った記憶を確認し、ファッジは役人を呼んでピーターと……参考人としてシリウス、そしてジェームズの瓶を預かり魔法省へと消えて行った。
 瓶を破壊したらどうなるかわかっているな、というヴォルの視線にブルブルと震え、それならば返そうというのを、証人がいるのだろう、という声にそれはそれは大事に瓶をしまっていた。

「あれ?母さんの瓶は……」
 父ジェームズの瓶は今ファッジが持っていったが、そういえばと最初から最後まで持っていたスネイプの姿を探す。

「あぁ、もう一晩位貸しておいてやった方がいいだろう。謝ることが山ほどあって話足りないだろうからな」
 寝不足風に見えないのはさっさと寝ろとか言われたんだろう、と言うヴォルに何となく察したハリーは両親と話せるの楽しみだな、と笑う。

 もう私はこんな姿だから、と言い……かつての幼馴染の根掘り葉掘りと、息子らの話を分かる範囲全部教えて、とリリーがスネイプを質問攻めにしているとはさすがのヴォルもわからずにいたのだった。疲れた顔でいれば妙な勘繰りをされかねない、と一睡もできなかったスネイプが魔法薬を飲んでいることはリリーしか知らない。


 朝食をとっていると、口論になったらしいスネイプとルーピンのやりとりで、脱狼薬の話が二人の口からうっかり洩れ……大広間が騒然となる。狼人間に一年間教わっていたのかという声にヴォルはため息をつき、喉に杖を当てる。

「見分けがつかなったマヌケ共が何を騒いでいる」
 大声をわざわざ出したくないヴォルの声が大広間に響き、騒いでいた生徒らはぴたりと口をつぐんだ。

「外で狼人間に会うリスクより、管理されている狼人間の方が格段に安全であるし、そもそもグレイバックのような無差別に襲うやつに出くわした際、その批判した言葉が全て己に降りかかるとなぜ想像ができない。お前らがすべきなのは脱狼薬の製造方法を魔法薬学の教員に聞きに行き、薬を飲んだ狼人間がどのような姿かを観察する……知識を学ぶ機会をどん欲に得る事だろうが」
 朝からわかり切ったことを今更騒ぐな、と言うヴォルにダンブルドアは意外そうな顔をして、ハリーに抱きつかれる赤目の青年を見る。騒いでいた生徒も一年間被害が無かったことを思い出し、まぁそういえばそうだな、と席に座り直す。
 レイブンクローの生徒の中には早速薬の製造方法と、休暇前の最後の満月の日に観察したいという声が出始め、フリットウィック先生が慌てて、ご本人らに許可を取ってからと鎮める。

「まさか、彼に助けられるなんて」
 信じられない、と言うルーピンに、なぜかとばっちりで希望する生徒がいた場合、教えなければならなくなったスネイプが苦々し気に舌打ちをする。そもそもの発端が自分らにあるために反論できないスネイプにルーピンが笑って、事情を説明すべく立ち上がった。

「ヴォル凄い」
 大好き、と抱きつくハリーにヴォルはニヤリと笑う。
「あの様子だと、ブラックとジェームズ=ポッターが俺様とハリーの仲について散々反対するだろう。味方は一人でも多く……奴らにより近いものが適切だ」
 何も考えなしには庇ったりなどしない、と言い放つヴォルに言わなきゃ美談で済むのに、とハーマイオニーとロンは顔を見合わせて、揃ってため息を付いた。

 思惑を理解したのか、ダンブルドアは楽し気に目を細める。ポンフリーはルーピンを学生のころから知っているだけにその一連の話をこの後マクゴナガルから聞いて、嬉しそうにほほ笑んだ。

 
 




≪Back Next≫
戻る