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スリザリン以外が劇的なグリフィンドールの勝利に浮足立っていると、無情にも試験が手をこまねいており、無理やりにでも地に足を付かざるをえなかった。
いつもはこんなときでもペースを崩さない双子がO・W・Lの試験を控えているためかヴォルを交えて勉強し、最高学年のパーシーはN・E・W・Tの勉強を行う。おかげで初めて試験に挑む一年生までもが例年以上に緊張し、年下のヴォルに質問する双子を不思議そうな目で見ていた。
ヴォルはヴォルでぱらぱらと教科書をめくる程度で、いつ勉強しているのか定かではない。悪戦苦闘するハリーに悪戯を我慢するヴォルは、試験をいくつも抱えたハーマイオニーの手伝いをしている。
その方が頭に入るというヴォルは涼しい顔で時折スネイプの所に出かける事すらある。
「ねぇヴォル。ちょっと聞きたいんだけど……。フクロウと、イモリ、ヴォルの成績って……」
疲れたーと寝台に倒れるハリーとロン、そしてヴォルだけが部屋にいる時、ハリーが呻きながら問いかけた。ヴォルがヴォルデモートあることを知ったロンも首席トム=リドルの実力が知りたくて顔を上げる。
「9割以下を取った記憶がない」
ちゃんと授業中に覚え、そして教科書を見ていればどうして間違えるのか、逆に分からない。そう答えるヴォルにロンは嘘だろ、と寝台に突っ伏す。
この人なんで闇の帝王になったんだ、と言葉に出さず呆れるロンに、ハリーは察して頷き、ホグワーツはじまって以来の秀才怖い、と仰向けに寝台に転がった。
「あぁ、ハーマイオニーのように無茶な量は選択していない。ごく一般的なものだけだ。占い学は……専攻した上の学年の奴に無理やり対象にされて、あなたの未来を見るのが怖い、とかなんだかんだ、好き勝手なことを言われたのが嫌だったのと、君臨していた時代にいろいろあったから選んでいない」
ロクな目に会ってない、と言うヴォルにロンは笑い、ハーマイオニーが啖呵きって出ていく姿、ヴォルも見ればよかったのにと返す。
数占いの授業の時、本人にその話を聞いた、と答えると、ロンとハリーは眼をしばたたかせた。
「そういう特殊な道具があるってことだ。親友であろうとも話せないことなど、たくさんあるだろう」
どういう道具か、説明しないヴォルにロンは考えられる限り考えるが、答えはない。だが秘密という点ではなるほど、と共感してヴォルとハリーに目を向けた。
話してくれたとはいえ、とんでもない秘密だった。ならば、ただでさえ提出物が多くて悲鳴を上げていたのに、そこにたくさんの授業を抱えるハーマイオニーの秘密は些細なものだろう、と頷いた。
試験が始まると一日が飛ぶように過ぎていき、ぐったりした最終日にはバックビークのことが頭から吹き飛びかけていた。死刑執行人を連れてくるというハグリッドの手紙に、ヴォルは動じず、その執行人の名前をじっと見つめる。
「試験が終わったらハグリッドの所に行こう、ハリーとロンは占い学が最後だったな」
色々話したいことがある、というヴォルに3人は頷き、各々の試験を受けに行く。ルーピンのような障害物競走みたいな試験だったらいいのに、とハリーはため息を付いた。
そういえば、ヴォルにボガートの所をどう切り抜けたのか聞きたいハリーだが、かつての自分がハリーを殺すという事に対し、どのような対策をしたのか、怖くて聞けずにいた。とりあえず、違法なことはしていないようで、それだけはほっと胸をなでおろしている。
そんなことを思い返している間に一人ずつ呼ばれると、ハリーは水晶をのぞき込み、何も見えないことからどうしたものかと考えていた。ここで見えないと言って×を付けられるのも、一年頑張ったのに悲しいものがある。
ふと、バックビークを思い出し、無事飛び立っていく姿が見えるとそう嘘をついた。どこまで信じたかわからないが、何やら書き込むトレローニー先生から離れ、出口に向かうと突然背後から荒々しい声が聞こえ、驚いて振り向いた。
「闇の帝王のかけら、ドラゴンの守る深き地にて解放の時を待つ。番人となる女より鍵を受け取りしは巣穴から飛び出た隠者。隠者は廃屋より古の輪を手に入れる。主のいない屋敷を守る虐げられたものの手から金色の光を盗み、3つの破片は一つとなる。大いなる記憶を写したそれは、この世に混乱を巻き起こすだろう。愚か者の不注意をすり抜け、隠者が解き放たれるのは明日の夕刻。今晩、過ちは正され一人の男が世に出るだろう」
だらりとした様子で、ただ眼だけが力強くしている様子のトレローニーにハリーは本能的な怯えを感じ、じっと見つめるしかできない<。
誰か呼んだ用がいいだろうか、と悩んでいる間にがくんと頭が下がると呻いたかと思いきや、まるで居眠りをしていたかのように頭を持ち上げた。
今、と恐る恐る尋ねるハリーだったが、トレローニーはまるで覚えていない様子で逆にハリーを不思議そうに見返す。
これは何か重大ないことに違いない、とハリーは退出する旨を伝えると、急いでヴォルのもとへと向かった。
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