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 晴れ渡った空の下、クィディッチの優勝を決めるスリザリンとの戦いが始まるとあって、学校内の活気が最高潮に達する。スネイプに脱狼薬の改良を焚きつけてから、時折ひどく具合の悪そうなルーピンの姿にはらはらとするハリーだが、ヴォルのどこからくるのか不明な自信ありげな笑顔に励まされ、うまくいきますようにと祈り続けた。
 ロンは4人で固まって眠った時以来、いつものように接するようにはなったものの、ヴォルと二人きりになると緊張しているらしい。が、ハリーとの人目を気にしないやりとりで怯えていたことが馬鹿らしくなり、今ではチェスで相変わらずヴォルを負かしている。

 ハリーを害するもの以外に興味はない、と言っているヴォルにそれもそうか、と受け入れて逃げたスキャバーズ……ピーターの行方を一緒に探していた。ずっと可愛がっていた鼠が本当に……ハリーの両親をヴォルデモートに密告した裏切り者なのか、真実を聞きたいと。


 何が何でもマルフォイを負かせて、といつも以上に応援に気合の入るハーマイオニーに、ハリーは両肩に乗った重圧に耐えながら頷いた。
 こんないい加減な教科、うんざりだわと占い学をやめた後、バックビークをハグリッドをバカにするマルフォイを殴るという過激なことをした。そのあと、すぐ後ろにいたはずが消えて、開始ギリギリに呪文学に飛び込んできたハーマイオニーはヴォルに感謝しないと、と額に流れる汗をぬぐう。
 その一件ですっかりマルフォイに対しての怒りやら何やらが爆発したらしく、クィディッチの優勝杯を手に取り喜ぶ姿を見たくないのだと言い放った。
 だから選手並みにハーマイオニーの闘志も燃え上がっているという事だ。ヴォルはそんなハーマイオニーにハリーにあまりプレッシャーをかけないでくれ、と小さくたしなめるがマルフォイに対しては苛立ちがつのっているのか口数が少ない。

「確か裁判は……最後のが試験最終日だったか。ルシウスも来るだろう」
 ここで締めておくか、と声が聞こえた気がしてハリーは聞かなかったことにした。じゃあ、と別れて控室に行くといつもは激励するオリバーがもう言葉を出すことができないようで、緊張がチームを包み込む。
 きびきびした様子でじっと時間を待つと、そこにヴォルが顔を出した。

「ウッド、優勝杯を手に入れた後はシーカーをいつ抱きつぶしても文句はないだろうな」
 しれっとそう言いだすヴォルに驚くハリーは顔を赤らめ、にやにやとする双子が50点点差をつけてからスニッチを握らないと大蛇様の鬱憤が大爆発だとはやし立て、それはハリーに許可を取ってくれ、とオリバーの肩ががくっと揺れる。頑
 張れよハリー、と人目を気にせず口づけると抗議するハリーを置いてさっさと姿を消して客席へと向かって行く。
 もう、と怒るハリーに労うようにアンジェリーナが肩を叩き、さぁ行こうとオリバーが声を上げた。いつもの調子に戻るチームにハリーは恥ずかしいのを隠し、頬を叩いて気合を入れると箒を手に取った。

 点数の差をじっと聞くハリーはマルフォイを誘導して的外れな場所に連れて行き、飛び回りながら小さな金の光を追う。がくんと級に落ちたスピードに驚いて振り向くとマルフォイが箒を掴んでいて……。

「君、そろそろヴォルに腕折られるよ……」
 ぼそりとつぶやくハリーにマルフォイはっとして客席を見ると、慌てて箒へと戻る。怒鳴るマクゴナガルやリーなんか目じゃないほどに怒りのオーラを垂れ流すヴォルは深紅に染まった目でひたとマルフォイを見つめ……急ににこりと笑う。
 その笑みで、あ、マルフォイ氏が終わった、と確信したハリーはアンジェリーナのマークを追い払い……先にスニッチを見つけたマルフォイを追いかけて無事スニッチを握り締めた。
 初めての優勝杯に喚起する群衆の中、ヴォルを見つけて駆け寄るハリーを今日ぐらいは仕方がない、とみんなに見えるよう肩に座らせ、優勝杯を掲げるハリーを眩しげに見つめる。
 そのままスリザリン側を見て、酷く落ち込んだ様子のマルフォイの背に、にやりと笑みを浮かべた。

 
 




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