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 部屋に戻ってきたヴォルはいつも通りハリーの寝台に上がると天蓋を下ろす。
「それでホグズミードに行く方法っていうのは?」
 なんだというヴォルにハリーは忍びの地図を広げた。目の前で合言葉を使うと名前が現れ……あ、とハリーは気が付く。
 ハリー・ポッターの隣にあるのは彼の本名で……とっさにヴォルの腕の中に入り、背中を預ける。

「これどういう魔法で作られているんだろうね。それで、ここの魔女の像の所の……」
「ドッペルゲンガーの魔法とかいうの等……学生が作ったにしてはだいぶ出来のいいものだな。出来が良すぎて少しイラっとするが」
 ハリーを抱きかかえてため息を付くヴォルはどんな魔法がかけられているのか、ある程度推測できるようで、ふむふむと言いながら巡回中のスネイプや、地図がなくとも出歩いているらしい双子を目で追う。
 クルックシャンクスなどの名前を見つけると周囲に目を滑らせた。

「それでこっちの通路が塞がれちゃったのをどうにかできないかって。フレッド達が前はこっち使っていたんだってさ」
 この鏡の裏にあるこの通路、と指し示すと、ヴォルはたやすいことだ、と言う。

「便利なものをあえてハリーのためにくれたとなれば、少々この地図に苛立ちもあるけど修復してこよう。ハリー、明日一緒に行かないか」
 この名前だけは許しがたい、というヴォルにハリーは笑って、楽しそうだと頷く。背後から抱きしめるだけだったヴォルはハリーの耳に口づけ、さわさわと妖しく胸元をまさぐり出す。
 だ、だめだって、と焦るハリーだが、わかっているという囁きとともに耳を舐められ、熱い息を吐いてヴォルに身をゆだねる。

「ロン達に怒られるよ」
「大丈夫だ。本番をしなければいいんだろう。だから今は」
 防音の魔法はかけてあるから大丈夫だ、と言うヴォルはハリーの抵抗する手を無視してズボンの中に手を入れる。
「今はかわいがるだけだハリー」
 俺様のハリー、と耳元で囁くヴォルにハリーは翻弄される。


 翌日、やけに上機嫌なヴォルとともに例の封鎖された道に来た二人は、さっさと直してしまおうと崩れた場所を確認する。ヴォルの唱える修復呪文レパロと、道を補強する姿にハリーはただ感心すると、おー早速、と言う声がして振り向いた。

「いやー俺たちレパロを唱えたんだけど規模が違うらしくて全然だったんだ」
「それにレパロを唱えて直ったと思ったらすぐ崩れるありさまでさ」
 本当に助かった、と言う双子にヴォルは二人でそれぞれ役割分断すればいいだろう、という。確かに、と笑うジョージはフレッドとともにじゃあちょっと行ってくるとホグズミードへと出かけて行った。

「さて……ハリー、おいで」
 地図を見ていたヴォルはハリーに地図を返すと、こっち、と言いながら……誰もいない倉庫にハリーを連れ込み、備品として置いてあったソファーにハリーを押し倒すのであった。


 今年は残るというハーマイオニーらとともにクリスマスを迎えたハリーは、いつものツリーの前のプレゼントを開けていると、大きな荷物に気が付いた。
 形状からまさか、とドキドキしながら開けるとそれはあの時ダイアゴン横丁で見たファイアボルトで、ピカピカの柄に刻印が施されている。
 特にカードも何もないことから誰のプレゼントだろうと思い、階段を降りてきたヴォルに振り向いた。寒いと言いながら降りてきたヴォルはハリーの手に持っている箒に目を止める。

「あ!俺様が予約したときはすでに5か月先まで埋まっていると言っていたのに……。奴だな!奴が……俺様がハリーにプレゼントするはずの箒を……」
 あーというヴォルの声にヴォルからじゃないんだ、と確認したハリーは誰の事だろうと考え……誰?、と箒を睨み付けるヴォルを見上げる。

「そうか、わかったぞ。奴のアニメーガス。確かに観客席に変なのがいたがあれか。奴は一族代々の金庫があるはずだ」
 悔しい、というヴォルに抱き寄せられるハリーは目をしばたたかせ、なんとなく話の流れから送り主を察する。ヴォルから見てもいかれた男だという話だが、一応は名付け親だ。何かしら関連があるのかもしれない。
 それにしても、とヴォルを見るハリーは何も言っていなかったのに箒を準備しようとしてくれていたそのことが嬉しくて、差出人不明な箒を抱きしめながら嬉しそうに笑う。

「それでこれは誰からの物なんだい?」
 すごいや、と感心するロンは触ってもいいかい?と箒に触れる。戸惑う風のハーマイオニーにヴォルはんーというとロンから箒を受け取り、杖を一振りする。

「うん、大丈夫。呪いの類は一切ない。くそ……俺が今度こそはハリーの箒を買おうとしていたというのに……」
 やっぱり悔しい、と箒を睨むヴォルにどうしようかなと考えるハリーは、箒が嫉妬で何かされてはかわいそうと考え……ヴォルの耳元で囁く。
 顔を真っ赤にしながら離れるハリーに、箒をやけに丁寧に下すヴォル。それを見ていたハーマイオニー達はあっこれは聞いたらダメな奴だ、と自分たちのプレゼントに取り掛かる。
 案の定、各々のプレゼントの開封を終えて朝食を取りに行き……マクゴナガルに箒の件を報告したハリーとヴォルは翌日まで姿を消すこととなった。

 
 




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