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出たところで素早く身を隠し、じっとうかがうヴォルだったが目の前を去っていく一団を見送り、出てきたハリーにさっと寄り添う。
『ほら、言ったじゃない。絶対隠れているって』
驚くロンとハーマイオニーにさぁ戻ろうと促すヴォルに、ナギニが勝ち誇ったような顔で私の勝ち、と言う。笑うハリーはヴォルの手を取ると冷たい、と顔をしかめた。
「まだ一緒に城内にはいるとフィルチがすっ飛んでくるから……あとで話してあげる」
待っててくれ、と言うヴォルは自分のマフラーをハリーに巻くと足早に去っていく。あったかい、とほほ笑むハリーにハーマイオニーとロンは頭を抱えて、またあとでね、と別れる。
ナギニとともに秘密の通路を使い城に戻ると、談話室で3人の帰りを待っていた。ほどなくして談話室に現れたヴォルは溶ける様に縮んで一匹の蛇がハリーの膝上に這い上がる。
『目はちゃんとヴォルのままなんだね』
『夏休みを費やしたからな。ハーマイオニーの鞄を軽くするのと中を広くする魔法の代わりに、ちょっと手を借りたんで何とか取得できた』
赤目の蛇をじっと見つめるハリーにヴォルはさすがの俺様も時間がかかった、と答える。人が来るとハリーの服に隠れ、ちろりと肌を舐める。
「あら、ヴォルはまだ来てないのかしら」
服越しにヴォルを抑えるハリーにハーマイオニーが声をかけ、首元から顔を覗かせる蛇に気が付く。あとから入ってきたロンも赤い眼の蛇に気が付いた。
「ハーマイオニー、練習時間の確保、手伝ってくれてありがとう」
ハリーを抱き抱えるヴォルは上機嫌で取得するための時間が本当に足りなかったんだ、と言う。ため息を付くハーマイオニーはそれはよかったわ、と呆れるように返し、さっきの話ってどういうことなのよ、と問いかける。
「どうもこうも……。シリウス=ブラックは嵌められただけのちょっと異常な男で、闇の陣営ではないという話だ」
だから安心してハリーと言うヴォルに、ヴォルがそういうなら信じるよと返す。絶対あのジャムのついたクッキーに何か仕込んだな、と考えるハリーだが仕方が無いなぁというのと同時に絶対ため込ませたりするのはやめようと心に決めている。
例の魔法薬についても絶対止めないと彼の暴走が止まらないと危惧してはいるが、流される予感に不安しかない。
「どういうことだよヴォル。例のあの人の右腕だって話じゃないか」
なんでそう言い切れるんだい?と不思議そうなロンにヴォルはしばしば考える。ここで自分の正体を明かしてもいいが、幼い頃から闇に帝王に対し怖いという感情をもって育ったロンを思うとどういう返しをされるだろうと考えた。
うーんと唸るヴォルを見て、ハリーは少し考えるともしもだけど、と前置きをする。
「もしも、ヴォルがヴォルデモートの記憶を持っているって言ったら納得する?」
ハリーの突然の発言に眉を上げるヴォルだが、当人とは言っていない。ぎょっとする風のロンはヴォルを見て、驚きつつもはっと何かに気が付いたように手を叩いた。
「一年生の時、確か例のあの人の魂がヴォルにぶつかったって言ってた!まさかその時……。でもそれならヴォルの規格外の強さも、魔法使っても未成年の禁止事項に引っ掛からないのも納得できるかも……」
そういうことだったんだ!と一人納得するロンに、正体を知っている二人と当人は騙されやすいかもしれない、とだましの天才である兄を持つ弟を心配する。
こほん、と咳払いするヴォルはまぁそういう事なんだと誤魔化す。そんなヴォルが言うんだったらなんで捕まったんだろうと首をかしげるロンにさてなと肩を竦めて見せる。
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