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そして迎えたクリスマス前のホグズミード。ヴォルとハリーは当分の間二人っきりで過ごすことを禁じられ、ホグズミードに行くハーマイオニー達を見送った後は別行動せざるをえなかった。
もっとも、ヴォルが魔法薬やら何やらを作るのに専念すると宣言していたため、初めから単独行動するつもりだったハリーはどうしようかな、と当てもなく歩く。

「ハリー、こっちだこっち」
 突然呼びかけられ、振り向いたハリーは大きなこぶのある魔女の像の脇から顔を覗かせるフレッド達に気が付き、どうかしたの?と近づいた。
 すぐにジョージも顔を覗かせて……そんなスペースあったかなと首をかしげるハリーを空き教室へと連れて行った。

「ちょっとタイミングがおそかったからヴォルがいないけど、まぁ細かいとはいいかって思って」
「これ以上ディメンターが消されないようにするためにも、これはハリーに渡すべきだって昨日二人で話し合ったんだ」
 左右から矢継ぎ早に言われ、ハリーは差し出された古い羊皮紙に視線を向ける。これが何をするのだろう、と思うとみてなって、といってジョージがその羊皮紙に杖を当てた。

「われ、ここに誓う。われ、よからぬことを企む者なり」
 呪文のような、合言葉を唱えると途端に古い羊皮紙に地図が描かれ、ハリーは驚いてその精巧な地図を見つめた。なんだか人の名前がちらほら書かれていて、驚くことにそれらは全部動いている。

「むかーし、俺たちが未熟な青二才だった頃、うっかり現場をフィルチに抑えられて」
「やれ内臓引きずり出すだのなんだかんだ」
「そんな時にみつけた没収品・特に危険の文字」
「そんな文字を見つけた日にはわかるだろう」
 一年生のころは詰めが甘かった、と言うジョージにフレッドが引き継ぎ、二人交互に言葉を紡ぐ。一年生のころからなんだ、と思うハリーはまさか、と地図と二人を見比べる。確かに、これは危険なものだ。

「騒ぎを起こしている間にちょろっとね」
「この4人の諸兄にどれだけ恩を受けたことか」
 パットフット、ムーニー、プロングズ、ワームテール。凄い人がいたんだ、と差し出された羊皮紙を受け取りながらその4つの名前を見つめる。
 ヴォルが知っていたらディメンターを出し抜く方法を考えているはずがないため、本当に彼も知らない情報なのだろう。

「おわったらこう唱えるんだ。いたずら完了。ってね」
「じゃないと誰かに見られちまう」
 抜け道を教えてもらうハリーは最後にそれを教えてもらい、わかったと頷いた。

「ヴォルの接近禁止が解かれたらぜひ二人でも来てくれ」
「絶対楽しいからな」
 今日はハリー一人で我が愚弟の後を追うと良い、と言われてハリーはロンに言いつけるよ、と笑う。ロニー坊やの怒り何て母さんに比べたらそよかぜさ、というフレッドがじゃあそろそろいくよと扉に手をかけた。

「ありがとう。えーっとなにかお礼ができればいいんだけど……」
「いいんだよハリー。ヴォルには散々イタズラグッズ開発に協力してもらっているんだし」
「ただまぁそうだな。どうしてもお礼と言うのなら、ヴォルにこの鏡の裏の道、直してくれないかって聞いてくれると助かる」
 何か返せればいいんだけど、と言うハリーにジョージはいらないと言い、フレッドがここ崩れて困っているんだ、という。それぐらいなら、と引き受けるハリーはどこかに……おそらくホグズミードに向かう二人を見送る。できればヴォルと行きたかったが、そうもいっていられない。


「ナギニ、二人で行っちゃおうか」
『えぇ。楽しそうね』
 襟から顔を覗かせるナギニと企む様に笑いあい、地図を開く。幸いこの近辺には誰もいないようで、ハリーは素早く教室を出ると像の陰に隠れ、地図を見る。
 泡のような字で呪文が書かれていることに気が付き、ハリーは杖を取り出した。

「ディセンディウム」
 途端に開いた道に体を入れ、ハリーとナギニはグネグネと曲がった道を進む。やがて見えてきた階段を上ると跳ね扉にぶつかり、そっと抜け出す。
 そこはどこかの倉庫のようで沢山の箱が置かれている。ハリー隠れて、と言うナギニの声に従い隠れると、上から一人の男が降りてきて、奥の在庫を取りに行く。
 今だ、と抜け出して階段を上がるハリーはどこかのお店のカウンター脇にいることに気が付き、人ごみに紛れるようにして歩く。

『ハリー、ロンとハーマイオニーよ』
 あっち、と尾で示されたさきにハリーへのお土産を悩む二人の姿があった。ゴキブリごそごそ豆板と言うのと手に取るロンに思わずそれは嫌だ、と口に出すと、二人は驚きハリーとナギニを見つけた。
 ちょっと抜け道を教えてもらって、と答えるハリーはあの地図の話はヴォルにしたい、とそのことを伏せて伝える。フレッド達に教えてもらったというとロンはなんで僕に教えてくれないんだと憤慨し、ハーマイオニーは規則を破ったハリーに何か言いたそうにちらちらとみる。

「他の抜け道はちょっとヴォルの助けがいるから今はまだ使えないんだ」
「でもやっぱり駄目よハリー。シリウス=ブラックがどこにいるかもわからないのに」
 危険よ、と言うハーマイオニーだが、ロンのもったいぶった咳払いとここを見てという事にでも、と何か別の理由を探す。

 ディメンターが定期的に巡回するというポスターに、あまり長居はできないかなとハリーはお菓子を買う二人を待ってからハニーデュークスを出ると、雪の降る中震えながらあっちはフクロウ便、など震えながら二人はハリーに案内するも、マントを着ていなかったハリーは見る余裕がない。ナギニが凍えないように懐に入れるのがやっとだ。

 
 




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