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 城につくとそこにはマクゴナガルが待っていて、ハリーとハーマイオニーを呼び出す。顔を見合わせるハリーとヴォルだが、マクゴナガルはセルパンは失神呪文だから大丈夫でしょう、と言ってロンと一緒に大広間に行くよう指示を出す。
「ハリー、多分ディメンターで体調を崩したからだ。ナギニ、ハリーについて行ってくれ」
「え、でも…」
 戸惑うハリーの首にナギニをおいて、見てもらった方がいいとヴォルが押し出す。倒れた時のみんなの視線を思い出すハリーは、腫れもの扱いされたくないと首を振るが、珍しくヴォルはおれずに大丈夫だからと再度押し出した。

「あれは本当に体に悪いからハリーの生気が吸い取られ過ぎていないかとか見てもらった方が俺も安心できる」
 あいつらは本当に欲望に忠実なんだ、とハリーの頬に手を添えて、心配げに眉を顰める。ハリーが弱いとかそういうんじゃない、というヴォルはふつふつとした怒りを募らせていたのか、不安げなハリーを見つめたまま徐々に瞳を一層赤く光らせた。

「そもそも、幼少期の死の経験があるハリーがいるっていうのにあいつらを護衛につかせるなんて魔法省は本当に愚かだ。あいつらのせいでハリーが体調でも崩したりでもしたら、あいつらを手なずけて魔法省に攻め込ませ、ファッジに死の接吻させにいく」
 それぐらいムカついているんだ、と続けるヴォルに聞こえたマクゴナガルは頭が痛いとため息をついた。あとでダンブルドアにディメンターの数を確認してもらわなければ、というのと同時にハリーを何としてもあの連中に近づけさせてはいけない、と頭を悩ませる。


 しぶしぶマクゴナガルの後をハーマイオニーとともについていくと、思った通りマダム・ポンフリーのもとに案内されて、チョコは食べたか、他の症状はないかと問診を受けて早い処置を施したルーピン先生を褒める。
 問題ないと言われて解放されたハリーだが、ハーマイオニーへの話があるとうマクゴナガルに廊下で待っているようにと言われて、ナギニとヴォルについて話し合い、笑いあう。程なくして出てきたハーマイオニーはどこか嬉しそうで、ハリー達はヴォル達の待つ大広間へと向かった。

「何でもないってさ。そういえばさっき言ってた死の接吻って何?」
 ヴォルが確保していた席に着くハリーは先ほど聞こえたヴォルの言葉を思い出す。ディメンターにかかわる言葉だとは思うものの、名前が不吉だ。
「あぁ、ディメンターの最大の攻撃方法だ。魂を吸い取るんだけど、そもそもあの連中に口付けられたら誰だって自我を失うだろう」
 そういう生き物なんだ、というヴォルにハリーはぞわりとした悪寒に小さく震える。それを見ていたヴォルは命令が無ければしないはずだ、と言い合わせるだけの口づけをする。

 軽いリップ音を残して離れるヴォルはそのまま唇が触れそうなほど至近距離で落ち着いた?と囁く。
「本来はこういうものであるべきなのに、ほんとあいつらは悪趣味だな」
 顔を真っ赤にして小さくうなずくハリーは、その拍子に唇が触れてさらに顔を赤くする。周辺では何人かの女子生徒が顔を覆い何やら呟いていたが、素知らぬ顔でヴォルはハリーに夕食を食べるよう促した。
 その様子を隣で見せられたハーマイオニーとロンは見てられない、と顔を背けてカボチャジュースを一気に飲み干した。ハーマイオニーの視界の中、ハリーとヴォルのそれぞれのファンクラブ的な人たちが互いに、がしっと手を握り合っているのが気になるが、私はもう知らないわ、と夕食を取り終える。
 ロンはといえば顔をそむけた先が教員席側で、マクゴナガルが固まっており、話していたダンブルドアが微笑み……くそ爆弾を顔面に当てられたというような顔のスネイプを見て……寮の点数今年もどうなるんだろう、と考え……なぜか女子生徒に囲まれているクリビーを見る。なにやら写真の話をしているらしいが、首を突っ込むのはやめておこうと、手もとにとったソーセージにかぶりついた。

 新しい先生として列車で一緒だったリーマス=ルーピンが来たことと、魔法生物学の教授にハグリッドが就任されたことが告知される。ルーピンはあの列車でのことを知らない生徒らからは今年一年持つのかなとささやきがされ、ハリー達は祝う様に拍手を送った。
 ハグリッドに関しては驚きの声が多数で、知らない生徒がいないだけに拍手は大きく広がる。照れ恥ずかしそうなハグリッドにあの本はそういうことか、とようやく理解したヴォルは嫌な予感がする、とため息を吐く。
 その理由を知っているハリーもまた心配だな、と記憶で見たアラコグと思われる毛むくじゃらの足を思い出す。
 まさかとは思うが、それを連れてきたりはしないだろうか、と一抹の不安がよぎり、それを見てしまったらロンがどうなっていしまうかと心配になる。
 いつものように各々の旋律で歌い終えた校歌にダンブルドアが拍手を送り、いつものように寮へとやって来た。寮内で度を超えたいちゃいちゃはだめ、とくぎを刺されたヴォルとハリーは久々に一人でベッドに横たわり……もの寂しくなったハリーがヴォルの寝台に潜り込んで、いつものように抱きしめあいながら眠りに落ちていった。


 翌朝、大広間で時間割が配られると、ヴォルは占いと聞くと嫌な記憶がよみがえりそうだと言って数占い学を専攻し、ハリーとは別々になる。
「ハーマイオニー、君の時間割おかしくないかい?なんで同じ時間に別々の授業が入っているんだ?」
 うへぇと自分の時間割を見ていたロンはハーマイオニーの時間割を見て目を大きく見開いた。どこが変?と見返すハーマイオニーは何も間違いはないと頷き、気にしないでとぎっしり教科書の詰まったカバンを肩にかける。

「ハーマイオニー、後で鞄を軽くする魔法と、中身を広くする呪文を教えようか」
 鞄が机にあたる音に、ヴォルはさすがに重いだろうと声をかける。少し考える風のハーマイオニーだが、その校則はないはず、と呟いてあとで教えて、と立ち上がった。

「ハーマイオニー、どうやって受けるつもりなんだよ……」
 びっくりしているロンにヴォルは少し考えて、まぁ魔法界だからな、とあいまいな答えを出す。わかるの?というハリーの視線に当然と言った風に頷いて見せ、後で教えてあげると知りたそうなハリーの唇に指をあてた。

 
 




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