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 数日が経ち、あらかた見終わった二人は残っていた課題を済ませて何をするでもなくぶらぶらと歩く。
そうだ、と少し黒い笑みを浮かべるヴォルはハリーに黒いローブを着せ、フードで顔を隠す。
自分も同じようにするとおいでと手を引いた。
 何となく笑みから向かう先を予想するハリーはおとなしく指を絡めて結ばれた手に力を入れて、闇のはびこる場所……ノクターン横丁に足を踏み入れた。
「全く知らずにこの町に入ると危険だからな。俺様から絶対離れないように。ナギニ、ハリーから離れるなよ」
「もちろんよ。ハリー少し重いかもしれないけど、いい?」
「ありがとうナギニ。ナギニの体は冷たくて気持ちいいから大歓迎」
 路地でヴォルからハリーに移るナギニは、また大きくなったことに大丈夫かしらという。レディーだから気にしているのかな、と笑うハリーはローブに入ったナギニのひんやりとした感触にくすぐったそうにするとヴォルはその様子をじっと見つめた。
「俺様も真面目にアニメ―ガスでも習得するか……。うまくいけば蛇になるだろう……」
 良いなというヴォルにハリーはどうかした?と首を傾げた。なんでもないというと、しっかりと手をつなぎなおし、通りに足を踏み入れた。
 
 
 人の爪の様なものを売る人や、怪しげな薬を売る人。おかしな匂いの店。
うっすら漂う闇の気配にハリーはぴたりとヴォルに張り付き、人にぶつからないよう歩く。堂々と歩くヴォルは不安げなハリーを振り向くと抱き寄せる。
「怖いか?」
「なんというかダイアゴン横丁と路地を挟んでいるだけなのに雰囲気が違いすぎて…」
 歩きながら問いかけるヴォルにハリーは素直にうなずくと、路地の隙間から見える明るい道と今いる何処か薄暗い道を示す。
「怪しげな魔法薬の煙やらでこちらは暗いからな。そろそろ出よう。ハリー、こんな通りだから絶対に一人で入らないように」
 それを伝えたかった、とハリーを連れて大通りへと出る。

 明るい日差しが見え、ほっとするハリーを路地に引き留め、どうかしたのかと顔を上げたハリーに口づけた。
 抱きしめ、重ねるヴォルにハリーは恥ずかしさで今はダメというが、深く口づけられると縋りつくように抱きしめ返した。
「やっぱりハリーには明るい通りが似合う」
「学校では恥ずかしいから突然キスするの禁止だからね」
 かわいい、というヴォルにハリーは外にいることを思い出して顔を赤くして軽くにらみつける。
「そうだな。善処しよう」
「絶対だからね。じゃないと……冬にベッドに入るの禁止するから!!」
 ニヤリと笑うヴォルにハリーは顔を赤くして絶対だという。冬以外は普通にいいんだなというのと、守れば冬もいいんだなと、瞬時に考えるヴォルはわかったと頷く。アニメ―ガスを習得すればハリーとともに寝ても、誰にも咎められないな、と残りの夏の過ごし方をひそかにたくらむのであった。

 カフェで休憩する二人はぼんやりと明るい通りを眺める。
「そういえばヴォルの身長ってもうほとんど元通り?」
「あー……そうかもしれないな。スネイプがいればわかりやすいんだが……。日中活動してなかったせいか目安になりそうなものが全く思い浮かばない」
 長い足を持て余し気味のヴォルを見ていたハリーは、頭一つ分近く違うヴォルに首をかしげた。以前スネイプほどだと言っていたヴォルだが、もうそれに近いのではと頬杖をつくヴォルを見つめる。どうだか、というヴォルだが、普段夜に行動していたためにあまり周りを見ていなかったという。
「本当に夜型というか……闇だね……」
「日中に行動していることが本当に信じられない」
 妙に感心するハリーにヴォルは肩を竦めて見せてコーヒーを飲む。ローブを脱いでいるヴォルはこんな日に当たっていることが以前から考えればありえないというと、カップを手に持つハリーの手をにぎった。
「日中規則正しくしているおかげでハリーが一番輝いて見れる時間に会える」
 目を細め、ほほ笑む姿にハリーは顔を赤らめて、もう、と言ってからふと思いついたように握られたままの手を持ち上げ、ヴォルの手の甲に小さく口づける。
 驚いた顔のヴォルに顔を赤くしたまま、悪戯が成功したとハリーははにかむ様な笑みをこぼした。
そしてその悪戯がヴォルのいらぬスイッチを押してしまったことに気が付くのは夕食をとり、部屋に戻ってから押し倒された時であった。

 
 




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