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夕食をとった後は備え付けのシャワーを浴び、寝巻に着替える間もなくシングルベッドに押し倒される。
眼鏡はシャワーを浴びた時から取り上げられて、サイドテーブルに置かれた。
「この宿、あまり壁は厚くないみたいだから……キス多めにしようか?」
もつれる様に抱きしめあい、口づけるヴォルはどこかから聞こえる物音に耳を傾け囁く。
顔を真っ赤に染めるハリーはできるだけ抑える、とヴォルの唇に触れるだけの口づけを落とす。
離れようとするのを押し付けるような勢いで口づけられ、薄く開いた隙間から食む様にして深く合わせられていく。
「んっ!」
舌を食まれ、声を出せないハリーだが最奥に伸ばされてきた手に眉を寄せる。
ほぐす様に縁を撫でられ、浅く指を入れたり抜いたりを繰り返されると我慢できずに腰を小さく揺らした。
「ぁっ!だっだめ……っ」
短い間隔で浅い所を弄られ、勃ちあがった物の根元を余った指で刺激されるとハリーはたまらず顔をそらして小さな悲鳴を上げた。
顔を真っ赤に熟れさせ、焦らされることに涙を浮かべるハリーにヴォルは目を赤く光らせながら首元に口づけを落とし、喉仏を食む。
「俺様のハリー」
目を細め、ほほ笑むヴォルにハリーは小さく唸りながらそっと顔を引き寄せて、拙いながらに口づける。
「俺様の……」
「ヴォル」
体を繋ぎ、ひくりと動くハリーを抱きしめるヴォルは待ってというハリーの声をよそに動き出す。
揺さぶられる衝撃に上ずった声が次から次に溢れるハリーは涙でぼやけるなか何かに焦るような、縋るようなヴォルの目を見つめた。そしてそのまま自分を掴むヴォルの腕をたどってその背中に腕を回す。
ヴォルもようやくそこで自分勝手な動きを緩め、掴んだ腕をハリーの背中に回した。
「ヴォル、僕は絶対離れないから。ここにいるよ」
「ハリー、ハリー。こんな幸せなこと……温かな幸せを手にすることは今までなかった。だから……とても不安だ。いつか俺のせいでハリーの運命を歪めるのではないかと。闇に生き、闇に包まれていた俺様が、こうして欲しくてたまらなかった暖かさを組み伏せて繋がっていることが現実なのか……。奪うばかりの俺様が……」
ハリーをかき抱き、首元に顔を埋めるヴォルの言葉にハリーはそっと微笑み、ヴォルと同じくらい強く抱きしめる。
「大丈夫だよヴォル。僕が好きなのは……かつて冷酷無慈悲な闇の帝王だった、僕が一番大事なヴォルだよ。ヴォルの不安も全部僕も抱きしめさせて」
動きを止めたヴォルの頭をハリーは優しく抱きしめた。
動く気配に手を緩めると、顔を上げたヴォルは黙ってハリーに口づけ、硬く抱きしめあう。
久しぶりに肌を合わせたことで二人そろって歯止めが利かなくなり……目が覚めたのは日も高くなってからであった。
まだ離れたくないとハリーはヴォルに口づけ、抱きしめる。
ハリーを胸に抱きしめてそっとハリーの癖っ毛をすくヴォルにハリーもまた耳を胸元に当ててほほ笑む。
「半年もヴォルに触れられなかった僕の方が不安だったし、すごく怖かったこと、忘れないでよね」
何度確かめても足りないと、縋りつくハリーにヴォルは苦笑し、額に口づける。
「それは本当に悪いと思っている。同じ魂であればいうことを聞くと思ったんだが……こざかしい時代の魂のことを侮っていた。俺様が対峙していたら縊り殺していただろうな」
してやられた、と反省するヴォルにハリーもくすくすと笑う。
「なんというか、ヴォルを子狡くした感じがした。やっぱり60年生きたヴォルのほうがかっこいい」
「ハリーの記憶で見る範囲だが、やることがいちいち詰めが甘かったな。髪飾りに潜んでいた俺様とはまるで違う……所詮は学生の魂だ」
襲撃したあの晩はまだ55歳だ、というヴォルにハリーはくすくすと笑う。今は同い年だけど、と続けるハリーにヴォルはいわゆるあれが黒歴史というやつか、とため息をこぼした。
記憶を取り戻していなかったらまたあぁなっていたというのか、と眉間に皺を寄せハリーを抱えなおす。
戻っていなかったらきっと年相応に、ハリーを抱くのはもう少し後だったかもしれない、とハリーの腰元をするりと撫で上げた。
ひくりと反応するハリーは顔を赤くして……もっとヴォルをくれるの?と囁く。
「あぁもちろん。幸いこの体は若いのでな。俺様が満足いくまでたっぷり付き合ってもらうのもいいだろう。お互い限界を知っていたほうが今後のためだ」
煽ったのはハリーだからな、とぐるりと体の位置を入れ替えハリーをシーツに押し付けると、少し陰のある悪い顔でほほ笑む。ぞくりと背筋を何かが伝うハリーは顔を真っ赤にしたままこくりと頷いた。
「ヴォルこそ、僕がクィディッチの選手だってことわかってるよね?ヴォルが先に体力尽きてもちゃんと最後までしてよね」
逃がさないから、と少し強気にヴォルの赤い目を見返し……箍が外れた元の闇の帝王と英雄は互いに精魂尽き果てるまで肌を重ね合い、互いに気絶するように眠ってやはり同時に目を覚まして……くすくすと枯れ果てた声で笑いあうのであった。
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