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 翌日、食事をとりながら考える二人にジニーが話があるとやって来た。
落ち着かない様子のジニーに何があったのか、促すとそこにパーシーがやってきて慌てて立ち去っていく。
「パーシー!ジニーが大事な話をしそうだったのに!」
 怒るロンにパーシーは咽て、いったい何の話だったと問いかける。
「あーそれは多分関係ない話だ。」
 慌てて関係ない話だと、なぜかパーシーが答え、大慌てて詰め込むと逃げるように立ち去って行った。
いったい何なんだろうかと顔を見合わせるハリーとロンにナギニが顔をのぞかせる。
『前に…女の子と一緒にいたことじゃないかしら?』
 見かけた、というナギニにハリーはあの真面目そうなパーシーでも青春しているんだと内心で思う。
このことは弟であるロンには黙っておいてあげようと、席を立った。

 マートルには過去の話も聞きたいと、機会をうかがっていると、その機会はその日のうちにやって来た。
闇の魔術に対する防衛術はハグリッドが連れて行かれる前から少し機嫌がよくてそれがハリーには不満だった。
ヴォルデモートの息子と言われたヴォルが石化して授業に参加していないことが理由だと、なんとなく感じている。
 最初のミニテストについてヴォルになんて答えたかと聞いた際、埋めた内容に笑ってしまったが、もともとが相性の悪い二人だ。
 だが露骨にされるとハリーとしては不満しかない。
幸い、ヴォルの大暴れを止めたハリーということで再現などにハリーを指名することはなかったが、嫌なものは嫌だ。
 そんなロックハートはハグリッドが連れて行かれたことでさらに上機嫌で…ハーマイオニーのいない今、ロンとともに露骨に嫌そうな顔をしていることだってある。
 そして今日もまたもう脅威は去ったのです、と自分が解決させたかのような口調で語る。
「今夜にも哀れにも石にされたみんなは目を覚ますでしょう、そして犯人については口をそろえて『ハグリッドです。』ということです。マクゴナガル先生がまだこんな処置をとっていることは驚きです。」
 引率しながらもう必要ないというロックハートにハリーはチャンスだと閃いた。

「その通りです先生。」
 あいつに何か頼みたいときはおだてて、同意してやれば簡単に乗る。
めっきり一緒に寝ることが少なくなったヴォルが、初雪が降った際寒すぎるともぐりこんできた時にそんな話をしたことを思い出す。
 今夜戻るのであれば先にマートルの話を聞きたいと、ロンに話を合わせてと、目配りした。
ロンもピンと来たのかうんうんと頷いて見せる。
「そうですよ先生。あと一つ廊下を渡ればいいんですから、先に戻ってはどうでしょう?」
「それもそうですね!私はこの後の授業の準備がありますから…ではお先に。」
 どっどういうこと?と言いう顔をするネビルらを置いていそいそと戻るロックハートに、シューマス達も自慢話から解放されてよかったとため息をついた。
 ちょっと手洗いに行きたいというロンとハリーが先に行くよう促し、グリフィンドール生らはぞろぞろと歩いていく。
 早く行こうと歩き出した二人だが、あと少しというところでマクゴナガルと鉢合わせ、どこに行くのです、と声をかけられる。
 女子トイレに行くなんて言えず、慌てるロンを不審なものを見る目で見つめ…ハリーに目を移す。
「僕たちハーマイオニーに今夜戻れるよって声をかけに行こうとしてて…。いっ行ってもいいですか?ヴォルには会いに行けないですからせめてと思って。」
 ハリーは半分本心で、半分は誤魔化しでマクゴナガルに告げる。
マクゴナガルは少し黙った後、いつもの厳格な雰囲気を和らげてわかりました、と頷く。
「いいでしょう。ミスター・セルパンはダンブルドア校長がしっかり守ってくださっています。もう少しの辛抱ですよ。杖も無事だと聞いています。ビンズ先生には二人が欠席することを私から伝えておきましょう。マダム・ポンフリーには私が許可をしたとお伝えなさい。」
 さぁ気を付けて、と二人を送り出したマクゴナガルがこっそり涙をぬぐうように目元を抑えたことに、顔を見合わせてその場を立ち去って行った。

「ハリー、さっきの最高傑作だ!」
 よく思いついたな、と笑うロンにハリーはでも医務室に行かないと、と苦笑する。
そういえば、と向かう道中ロンが首を傾げた。
「なんでヴォルだけ医務室にいないんだ?」
 杖も無事って…というロンにハリーは少し考えた後、ヴォルの父親の話おぼえてる?と切り出した。
「ヴォルの体を利用としたりする可能性があることから、石化した無防備なヴォルの体をダンブルドア先生が、使っていた杖をスネイプが預かっているんだ。ほら、前に一度ヴォルが闇の魔法で呪いが発生したことあるだろ?」
 ハリーの説明にフィルチの猫が石化したときを思い出し、そういえばという。
窓から吹く風にもうすぐ初夏になるよ、とハリーは目を伏せた。
もう半年、彼に会っていない。今夜戻ると聞いて、早く会いたくてたまらない。


 医務室でマクゴナガルの許可を得たというと、石化した人に何を言っても無駄ですよと、あきれられ、ハーマイオニーのいるベッドを案内した。
 傍によればハーマイオニーは変わらず鏡を見た姿勢のまま瞬きもせず横たわっている。
 ふと、握り締めた手に何か挟まっていることに気が付き、ハリーとロンはポンフリーの目を盗んでなんとかそれを引っ張り出した。
「羊皮紙の切れ端かな?ハーマイオニーの字だね。」
「パイプってなんのことだ?」
 切れ端の殴り書きにハリーとロンは首を傾げ…同時にパイプ!と声を出した。
ポンフリーに怒られる前に医務室を出るとそういうことだったのかと、足早に…職員室へと向かった。




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