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ピッチに出て、これから飛ぶぞ!というところでマクゴナガルがやってくると、試合は中止だとその場にいた全員に向かって声をかける。
信じられないものを見るオリバーが詰め寄るが、決まったことだと一蹴し、ハリーを呼んだ。
降りてきたロンにも来るようにと言うと、二人を連れて医務室へとやってきた。
見知らぬ上級生と思われる女子生徒が手当てを受け、その隣でぐったりしたナギニがハリーと小さく呼んでいた。
魔法生物学の教授がその傷を見て手当てをしている。
「先ほど図書室の近くでミス・グレンジャーと共に襲われたということです。幸い、彼女は現れたミスター・セルパンの蛇に驚いて…直接は見ることが無かったそうです。」
マクゴナガルの言葉にハリーは慌ててナギニの傍により、脱皮前の白くなった目に、だから怪我だけで済んだのかと、ほっと息を吐いた。
「ハーマイオニーは…。」
ロンのかすれた声に振り向けばマクゴナガルは沈痛な面持ちで首を振り、カーテンで隠れたベッドを示した。
「かっ角を曲がるときは鏡を見てっていって…そこで…。あの子が石になった後、その蛇が角を曲がって。何度も何度も蛇が威嚇するような音が聞こえて…壁に打ち付けられたその蛇がぐったりして…。」
とっさにその蛇を助けようとしたところで何かが足をかすめ、そこから毒が入ったという彼女の言葉にロンは青ざめ、ハリーとともにベッドを見る。
バジリスクの目を避けるために鏡をつかったのだろうと、わかるがそれでもどうしてと動かない親友にロンとハリーは愕然とした。
ヴォルに引き続きハーマイオニーまで石化してしまって落ち着かない。
ハーマイオニーが襲われたことと、ナギニがその化物と対峙したという噂はすぐに広まった。
なぜかパーシーがナギニに鼠を与えていたが、同じ監督生を助けたからだと、あたふたと言っていた。
脱皮を無事終えて傷もほとんど消えたナギニは今日も出かけて…大変よと戻ってきた。
聞けばハグリッドがこの件の犯人として…過去の経歴から考えてアズカバンに連れて行かれたことと…
「ルシウスがダンブルドアを追放した!?」
談話室でのハリーの大声に何があったと一斉に振り向く。
慌てた様子のナギニとハリーにいったい何が起きたのかとじっと見つめる。
ハグリッドが過去に起こした嘘の真実は言えず、ただたまにちょっと怖い動物を飼育した過去があり、そのことで問題になったことから今回についても関与していると思われて連れて行かれてしまったという。
そしてそこにやって来たホグワーツの理事を務めているマルフォイの父親が、今回の事件が解決できなかったとしてダンブルドアに停職命令が出たと言った。
「うそだろ…ダンブルドアが止められなかったっていうのに他の誰が止められるっていうんだよ。」
「マルフォイの一族親の代からそれかよ。」
「絶対理事脅迫しただろ…。」
「さすがスリザリン…三つ子の魂100までとは恐れ入った」
口々につぶやく声にハリーとロンは顔を見合わせた。ハグリッドに関してはどうなんだろうなと半信半疑の声が上がっていたが真実を言うわけにもいかないため、口をつぐむ。
マンドラゴラがそろそろ収穫ができそうという頃になると、やはりハグリッドが犯人だったんじゃないかと噂が流れ、ハリーはため息をこぼした。
ヴォルかハーマイオニーが居れば簡単に分かったことから謎が解けるのに、と考える。
ふと、そういえばリドルは何と言っていたか。
リドルは確か女子生徒が犠牲になったと言っていたような気がする。
あの時はリドルの家庭事情を知ったこととハグリッドを陥れていたことがショックで彼と、かつての校長との会話をゆっくり考えることができなかったと、聞いた内容を思い出す。
「犠牲になった女子生徒…。」
あの時線でつながった情報で、おそらくマートルだろう。
だからヴォルは思い出したのだ。かつて自分が初めて人を殺した相手…。
あれ?とハリーはマートルの顔を思い出す。
彼女は眼鏡をしているはずだ。でも彼女は死んでしまった。
バジリスクの目は直接見なければいいと本にも書いてあった。現にジャスティンがニックの体越しに見て石化している。
ヴォルだって自分の眼鏡越しに見たから石になるだけで済んだ。ヴォルの言うように目の一部の様なものだから駄目だったのか…あるいは…。
そして、リドルは学校に残れないか相談していた。当然死者が出ればかなわないことぐらいわかるだろう。
なのにマートルは死んだ。
もしこれが計画性を持ったものではなく、泣いていた彼女が、たまたま眼鏡をはずしているときにばったり出会ったとしたら。そして彼女はそこから動いていなかったら…。
「ロン、僕は見落としていたよ。」
呆然と呟くハリーにロンは何を?と首を傾げた。
「マートルだ。マートルがあのトイレで犠牲になった生徒だったんだ!」
「なんだって!?あそこには何度も行っていたのに…嘘だろ!?」
談話室の一角で一人ぼんやりとチェスをするロンにハリーは声をかけた。
ロンもあの時は調べられたのに、と談話室を見回す。石化が解かれない限り自由には動けそうにない。
どうすればいいのかと出口が見いだせないまま…マクゴナガルの2つのニュースに一喜一憂する。
1つはマンドラゴラがもう直に収穫できること…そしてもう一つが予定通り期末テストがあるということが告げられていた。
「もうすぐヴォルもハーマイオニーも戻るな!」
よかったと安堵するロンにハリーはナギニと顔を見合わせてよかったと久しぶりの笑みをこぼした。
ナギニもまたよかったと、ハリーにその頭をこすりつける。
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