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 一度落ち着きたいと、部屋を出たハリーは悲しくてうなだれる。
「ハリーどうしたの?」
 側にやって来たハーマイオニーにハリーは困ったように眉を寄せ、ヴォルの正体を言えずに首を振った。
本当は相談するためにも言わなくてはならない。
だけど今は彼の正体を言わず、“トム・リドル”としての情報を伝えるほどの力が無い。
今すぐあって、すべてを聞きたい。きっと困ったようなそんな顔で抱きしめてくれるはずだ。

「ヴォルに会いたい。」
 その一言に尽きるハリーにハーマイオニーはそっと寄り添った。
泣きはしなくとも顔を覆うハリーにジニーが心配げにちらちらと見ていた。
傍にいつもいる人が居ないのは見ている方からしても悲しいものがある。
「あのリドルの日記で何か相談事があったらいつでも言って。やっぱりただのノートがマートルの所に捨てられるだなんて変だと思うのよ。」
「うん。ちょっとわかりそうだから…もう少し待っててもらっていいかな。」
 ハーマイオニーの言葉にハリーは大きく息を吐いて、ちょっと待ってという。

 そして数日がたったころ、再び騒動が起きた。
ハリーの部屋が荒らされ、日記が消えたのだ。
 グリフィンドール生以外が入れない部屋ということもあり、3人は隅によって顔を突き合わせた。
「おかしいわね…ねぇハリー。あの日記は何だったのかしら?」
 時間が空いたこともあり、少し落ち着いたハリーはハーマイオニーの問いに考える。
「あれは50年前の襲撃事件を止めた人の日記だった。」
 そう切り出すとロンとハーマイオニーは驚いた顔になってなんで黙っていたのかと詰め寄る。
言い淀むハリーは実はとリドルが捕まえたのはハグリッドだったと伝える。
「じゃあ怪物を解放させたのは…。」
「違うんだ。ハグリッドじゃない。ハグリッドが連れていたのは…アクロマンチュラっていう大きな蜘蛛だったんだ。」
 一瞬見えたフォルムは蜘蛛だったと、考えるハリーにロンの顔が明らかに変わる。
そんなの化け物じゃないかというロンにハーマイオニーは何かを考える風だ。
「もし本当に冤罪なら…ねぇ、アラコグってもしかしてその蜘蛛の名前なんじゃないかしら。」
「あーそういえばヴォルがなんか言ってたっけ。そんな名前。でもなんでヴォルがそんなこと知ってるんだよ。」
 ハーマイオニーの言葉にロンは聞いたことがあると言いながらなんでだ?と首をかしげる。
彼の知識の深さは今に始まったことじゃないでしょ、と返すハーマイオニーにロンはそれもそっかと納得する。
「明日のクィディッチの試合終わったら…ハグリッドに聞いてみましょう。アクロマンチュラとアラコグについて。」
 ハーマイオニーの言葉に二人はそうだね、と頷いた。


 よく晴れた朝になり、ハリーはナギニとともに朝食を取りにやって来た。
あの日以来、ハリーとナギニはずっとヴォルの寝台を使って眠っていることはルームメイトもハーマイオニーも知っていることだ。
今日もまたそうやって目を覚まして…ハリーは元気出さないと、とナギニと顔を見合わせた。

 寝ているところはともかく、少し元気が出たようでよかったと笑ってそうだわと立ち上がった。
「そろそろ本が戻ってくる頃よ。誰かが持っていく前に借りてから行くわ。」
 調べなきゃというハーマイオニーはジニーとすれ違いながら早歩きで大広間を出ていく。
ハリーもまた準備をするとナギニが居ないことに気が付いた。
また探しにいったのかな、とハリーが競技場に向かうといつになく熱の入ったオリバーが激励し、チームメイトを鼓舞する。
「今年こそ、クィディッチのカップは我々のものだ!」
 そういうオリバーに去年は昏睡状態だったことを思いだし、胸元のペンダントを握り締めた。




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