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「あの気持ち悪い姿になって…ハリーはこのサイズでいい。この姿が一番だ。」
 気配もなくいたことに抱きしめられたハリーだけでなく、ロンもまた驚き、びくりと肩を揺らす。
何か変だ、と気が付くハリーはヴォル?と振り向こうとして、肩口に顔を埋めたヴォルに動きを止められる。
ピリッとした痛みに何が起きたかわからず、もう一度呼びかけた。
 はっとしたように体を起こすヴォルはハリーの肩を見て慌てて襟元を正す。
よくわからないハリーとロンは顔を見合わせて頭を抱えた風のヴォルを見る。
「さぁあなたたち早く寮に戻って。さぁ。」
 ガチャリと顔を出すポンフリーに3人は慌てて寮へと戻っていった。


 ハーマイオニーが居ないことに不安がるラベンダーたちにちょっといろいろあって医務室で一週間篭ることになったと伝えると、ハーマイオニーのルームメイトはそろって胸をなでおろした。
「ハーマイオニーを医務室に連れて行ってくれたんだ。ありがとうヴォル。」
「それにしてもなんで一目見ただけでゴイルじゃなくてハリーだってわかったんだ?」
 何か考えている風のヴォルにハリーが声をかけると、ちらりと赤い眼が向き、そのままロンへと向かう。
いや…と首をかしげるヴォルはわかるだろう?と返した。
「あんなにそっくりだったのに!?マルフォイだってわかってなかった。」
「ハリーはハリーだからな。にじみ出るかわいさでわかるだろう。」
 逆になんでわからないんだ、とそういうヴォルにロンは呆れて言葉も出ない。
ハリーはハリーで顔を赤くしてシャワー行ってくると飛び出していった。
 シャワー室につくとちょうどフレッドとすれ違い、ハリーを見てあれ?と声をかけた。
「ハリー、ついに食べられた?」
 蛇の王様に、と言われて首をかしげる。ちょうどヴォルが顔を埋めていた肩を見せていて、フレッドがここと指で指示した。
「キスマーク。」
 鏡で確認して赤くなっていると不思議がるハリーに面白そうなものを見つけた、といった顔で小さく囁く。
言われたハリーは最初は意味が分からず、なんとなく痕に手を触れてフレッドの言葉を反覆する。
 瞬間、意味が何となくだが分かってしまったハリーは顔を真っ赤にして個室に飛び込み、頭からシャワーをかぶるのであった。


 翌日、また団体行動を強いられたハリー達だが、次の授業が休講になってしまい、行き場を失ってしまった。
そこでヴォルが居ないことに気が付き、ハリーはきょろきょろとあたりを見回す。
 ちょうど角を曲がる足が見え、団体から抜け出すとその後を追った。
廊下の中ほどで追いつき、ヴォル、と呼びかける。
 振り向いたヴォルはハリーを抱きとめ…すぐに体を離す。
「ハリー、一人で行動は危険だ。眼鏡をかけていても多分防げない。危険すぎる。」
 ロンたちの所に戻っててくれというヴォルにハリーは意味が分からず目を瞬かせた。
一人行動というのであればヴォルも一緒だ。なのにハリーには戻れという。
眼鏡がどうかかわっているかわからないが、それなら裸眼のヴォルのほうが断然危ないに違いはない。
「思い出したのだ。あれがどこにいるのかと、そこに通じる道を。だが、それを操るものが誰かを突き止めなければならないんだ。今度こそ、ハリーを巻き込みたくない。」
 かつて自分が開いたとは言っていないヴォルだが、思い出したという言葉にハリーは目を見開いた。

「ルシウスから…息子の方からどの程度聞いているかわからないが、50年前扉を開けたのは俺様だ。そしてそのとき女子生徒が犠牲になった。経緯はまだわからないが、それだけで十分だ。ダンブルドアには昨日報告してきた。そしてその足でアクロマンチュラのコロニーを見てきた。あれは…あれは奴から逃げようとしていたのだ。アクロマンチュラにとって奴は天敵だからな。」

 ほとんどを思い出したのはハーマイオニーに会いに行ったとき、というヴォルにハリーは思わずすがりつくように自分を抑えるヴォルの手に手を重ねた。
 50年前ヴォルデモートが怪物を呼び出し、そして誰かに罪を擦り付けて逃れた。
 そのことが今のヴォルから考えられず、悲し気にヴォルを見つめる。

「あの時代にハリーに出会えていたらずいぶん違ったのだろうな。すくなくとも、こんな顔させたくはなかった。」
 泣き出しそうなハリーの頬を包み込み、撫でるヴォルは当時を思い出したのか、ハリーと同じぐらい悲し気につぶやく。
「お願いヴォル、一人で解決しようと思わないで。ヴォルが危険な目に合うのを黙ってみているのは耐えられない。お願い…。」
「今回のことについてはやはり分霊箱がかかわっている。ハリーを巻き込みたくはない。」
 お願いだから手伝わせて、というハリーにヴォルはダメだと首を振る。
思い出すのはクィレルの命を結果として奪ってしまったハリーの、あの不安げな顔。
もしかしたら今回もまた同じことが起きるかもしれない。
そうなってしまった時、ハリーの心が壊れそうで、ダメだ、と繰り返すしかなかった。




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