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 なんとなくまた気まずくなった二人はあまり会話することもなく…ハリーはマルフォイの初陣であるクィディッチの試合に小さくため息をついた。ヴォルはちょっと思い出したことがあると、今朝早くにどこかに行ってしまって今はいない。
 思い出した事ってなんだろうとモヤモヤするハリーはマルフォイが何か嫌味を言っていた気がするものの、早く終わらせてヴォルを追いかけよう、と箒を巡らせる。ヒュっという音共に耳元を過ぎたブラッジャ―にひやりとするハリーは方向転換しようとして、再びブラッジャ―が飛んできたことに慌てて避ける。
 飛んで行ったブラッジャ―はフレッド達が構える前で方向転換してハリーに向かう。
驚いたハリーは必死になって避けると、ブラッジャ―は打ちかえそうとするジョージのバッドをかいくぐってハリーを只執拗に追いかける。
「どうしたんだフレッド、ジョージ。アンジェリーナがゴールの前でブラッジャ―に邪魔されて…。」
「それどころじゃないぜ。もう一つのブラッジャーが狂ったようにハリーを追いかけるのを阻止するのに必死でさ。」
「スリザリンの誰かがブラッジャ―に細工したんじゃないのか?」
 タイムを設けてもらい、集まるとオリバーはまけているぞとビーター二人に声を上げる。
それに対して二人は声をそろえてそれどころじゃないぜとハリーの上空を飛びまわるブラッジャ―を示した。
 雨が降ってきたせいで視界が悪くなるなか、調査をお願いするか、それとも続行するかと顔を突き合わせる。
 にやにやするマルフォイと、やっぱりなんかいまいち距離が開いているヴォルと、狂ったブラッジャ―と…。
苛立つハリーは僕が何とかするからと顔を上げた。
「二人がそばを飛んでちゃスニッチを見つけられない。だから僕の事はもうほおっておいていいから二人はゲームに集中して。スリザリンに負けたくない。絶対勝ちたいんだ!」
 大丈夫だからというハリーに双子は心配げに顔を見合せてちらりと観客席に目を向ける。
 オリバーもまた迷うようにしていたが、ハリーの負けたくないという言葉にわかったと頷き、二人にハリーの事はほおっておくようにという。
 飛び上がったハリーは耳元をかすめるブラッジャ―にぐるぐると回り始め、スニッチを探しながらブラッジャ―を避けて飛ぶ。

  「バレエの練習か?ポッター。」
 嗤うマルフォイの声が聞こえ、ちらりと見たハリーはそのわきに飛ぶスニッチに目を見張った。
 もし今マルフォイが気が付いたら簡単にとれるほどの距離。でもやっと見つけたスニッチ。
一瞬迷った隙に、ハリーの左ひじに鋭い痛みが走り、ブラッジャ―が当たったんだと、意識が薄らぐなか、マルフォイに向かって箒を勢いよく飛ばす。
 驚いたマルフォイのわきを通り過ぎ、伸ばした右手で固く羽ばたく感触を感じて地面に急降下する。
 地面に激突する寸前で誰か…おそらくはやって来たらしいヴォルの魔法で衝撃がやわらげられ、そのまま地面へと転がる。
 腕がおかしな方向に向いていることに折れたんだと、グリフィンドール勝利の声を聞きながらほっと息を吐いた。
ばんっという音にブラッジャ―が壊されたのかなと、痛みにうめく。


「ハリー大丈夫かい!?」
 集まってきたなかで誰か…これ又すぐわかるクリビーのカメラの音が聞こえてやめて、と弱弱しく拒絶するハリーに誰かが担架をという。
「骨折ならば私が直しましょう。」
 場違いなほど明るい声が聞こえて、ハリーが痛みをこらえて目を開けると、そこには花畑ことロックハートの姿。
 嫌な予感と、その後の事を瞬時に思い浮かべるハリーはいいからというが、声が出ない。
 それっという掛け声とともに嫌な感触がして恐る恐る腕を見て…青ざめる。
「あー…そのうまくいきませんでしたね。でももう痛くはないでしょう。」
「ハリー大丈夫か!?…なんだこれは。」
 雨でうっかりしていましたとか何とか言うロックハートが下がろうとして、やってきた今は最も頼りになる声なのに嫌な予感しかしない相方の声の低い声。
 静かな怒りに満ちた声が聞こえて今気絶するわけにはいかないと、ハリーは必死に意識を手繰り寄せる。
「誰かセルパンを抑えてくれ!」
 慌てたような声が聞こえて、ぐえっというつぶれたカエルのような声が聞こえた気がして…。
「ヴォル…。」
 それ以上ロックハートに攻撃しちゃだめだよ、とそういいたくてスニッチを離した手を伸ばす。
「ハリー!今医務室に連れていくからな。」
 怒りよりも優先することがあったといわんばかりにすぐに伸ばした手を掴むヴォルにハリーはほっとして…気を失った。
 
 
 




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