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 とりあえず今は寮に戻るようにと返された4人は寮には戻らず、人気のない廊下を歩く。
具合が悪いと言うヴォルはそのままマダム・ポンフリーのもとに行き、空いた教室へとハリー達は場所を移動した。
「さっきのダンブルドア先生の話…本当なの?ハリー。」
 扉を閉めたハーマイオニーが振り向くと、自分で喉に薬を塗っているハリーに問いかける。
うんと頷くハリーはどう話そう、と自分を見るロンとハーマイオニーを見つめ返した。
下手なことを言うと後でヴォルとの話合わせが大変だし…と困ったなぁと頬をかく。

「ヴォルの事は去年の終わりに…ほら、あのヴォ…例のあの人の魂と出会ったって話をしたよね。その時に実はヴォルも出会っていたみたいで…。その時にわかったって。ダンブルドア先生の話だと、ある事情で僕の家に一時的に保護されていた晩に…えぇっと…。例のあの人はヴォルの事全然知らないんだって。いろいろあって…偶然…その…保護されて家にいた晩に襲って来たんだけど…。それで僕と一緒に保護されたんだって。ヴォルはそのこととかで悩んでて…。闇の魔術とかがあるとヴォルデモー…あぁごめん!例のあの人が付けたこの傷を持つ僕に反応して攻撃するような呪いが掛かってるって。」
 ちゃんと話合って考えておけばよかった、と、必死に考えるハリーは眉を寄せるハーマイオニーから目をそらして後でヴォルにも説明しなきゃと手のひらに汗をかいた。
 間違いではないはず。矛盾もしてないはず、と今の説明を思い返すハリーはふと、どうしてヴォルが苦しみだしたんだろう、と首をかしげた。
 今回の事件に…またヴォルの過去の魂が関係しているんじゃ、と拳を握りしめた。
 今度またヴォルデモートの魂が…ヴォルにぶつかったら今度こそ自分から離れてしまうんじゃ、と不安になる。
 だからと言ってヴォルを拘束したくはないし、でもヴォルが抱え込んで悩む姿も見たくない。
 そんなハリーの姿に何を考えたのか、ロンとハーマイオニーは顔を見合わせて何か困ったことがあればいつでも協力するから、とハリーの手を取った。

 
 翌日、戻ってきたヴォルはため息をつきつつ、作文疲れたというハリーを抱きかかえてもう二度としないと髪を撫でる。
「でもどうしてフィルチの猫が襲われたのかしら?」
 出来た作文の出来を確かめるハーマイオニーは小首をかしげると、それならとロンが声を上げた。
「前にフレッドがフィルチに捕まった時に見たらしいけど、フィルチ、スクイブだってさ。」
「あぁ、スクイブか。どうりで魔法を使っている姿を見ないわけだ。」
 笑いをこらえるロンにヴォルはそういうことか、というと首をかしげるハリーにハーマイオニーの反対と答える。
「ハーマイオニーみたいにマグルの両親から生まれた魔女っていうのと反対に魔法使いの両親から生まれた魔法の使えない魔法使いってこと。訓練次第では簡単なものなら使えるらしいけど…まぁマグル生まれと同じく純血らからは侮蔑の対象になる人たちだ。」
「なるほど…。でも…スクイブっていっても魔法使いの家系なんでしょ?ならマルフォイがいうようなマグルの血が入っているわけじゃないのに…。」
 変なの、とヴォルを見るハリーにヴォルはそういう習慣だ、と目をそらす。
 
「昔から魔法の力が弱いのはよく思われないんだよね。逆に強いのをあがめると言うか…。」
「あー…だから…例のあの人も最初はだれも止めなかったのかな。」
 魔法使いたるもの魔法が使えなきゃってことなんじゃないの?というロンにハリーはねぇとヴォルを振り返る。
 そうねぇとハーマイオニーも相槌を打つとちらりとヴォルを見た。
「まぁ…否定はできない…か。」
 力あるものが一番ということで出自が…ん?とヴォルは何かを思い出しかけ…そもそも両親なんていたかと首をかしげる。

「仕方がないだろう。マグルと違って力がある分、それの強弱で傾倒するのは生き物の性というようなものだろう。」
 じっと見つめるハーマイオニーにヴォルは肩をすくめて見せると、どこか不機嫌なハリーをみた。


「…ハリー?やっぱりちょっと怒ってる?」
 過去様々なことをした…という話を聞いてはいるがまだ詳細を思い出せないヴォルはなぜハリーが不機嫌なのかわからず、ハリー?と呼びかける。
「別に。ただ、例のあの人ってどうしようもなく子供だったんだなーって。」
 力が全てって馬鹿みたい、というハリーにヴォルは眉を寄せる。
「馬鹿みたいってどういうことだハリー。」
「力がある方が偉いとかダドリーと同じで子供みたいって言ったの!力がない人だって偉大な人は偉大だよ!」
 思わず声が低くなるヴォルにハリーはむっとすると力が全てとか馬鹿みたいだと繰り返す。
こめかみをヒクリと動かすヴォルは大きく息を吐くと、ちょと風にあたってくると談話室を出て行った。

「ハリー?」
 二人のやり取りに驚いたロンがハリーを覗き込む。
 泣き出しそうな怒っている様な顔のハリーは馬鹿みたい、と繰り返す。
「例のあの人を倒した僕がすごいとか、力をもった闇の帝王だとか…。」
 僕は僕だしヴォルだって、と閉じた口の中で呟くとはぁと深く息を吐いてヴォルはそうじゃないのかなと机に突っ伏した。
 クリビーやロックハートのせいでヴォルもまたヴォルデモートであること、そして過去にやっていたことを突き付けられているようで始終思い悩んでいた。
 そしてその彼を打ち破り、生き残った男の子であるということにハリーもまたヴォルとのことで悩んでいた。
 もう、というハリーに何が何だかわからないロンはハーマイオニーに肩をすくめて見せ、ハーマイオニーもまたそっとしておきましょうと肩をすくめて見せた。
 
 
 




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