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それからもなんだかぎくしゃくするハリーとヴォルにロンとハーマイオニーはただ首をかしげるばかりだ。
ハロウィン…出たくないなと、呟くヴォルを引きずり廊下まで来た4人は地下へと降りるピープズとその他の幽霊を見つけて顔を見合わせる。
一人の女子生徒風の幽霊を見てハーマイオニーはやだ、とロンの影に隠れた。
「あの子知ってる…。なげきのマートルだわ。ちょっと厄介な子だから…。」
女子生徒風の風貌に何かを思い出しかけるヴォルは思わずまじまじと見つめ…その視線に眼鏡の女子生徒幽霊が顔を上げた。
陰気臭い顔で猫毛な髪と眼鏡が特徴的だ。
「どうせ私の事馬鹿にしていたんでしょう?太っちょマートル、みじめや、わめき屋…」
やってきてすぐに言うと、じっとヴォルの顔を見る。
「そっそんなことないわ。なんだか今日のあなたはとてもすてきだわって言ってたのよ…。」
慌てて取り繕うハーマイオニーだが、嘘言わないで、とその目から涙をあふれさせる。
「マートル、ニキビ面っていうの忘れてるって。」
いつの間にか戻ってきたピープズがそう囁くと、マートルはしゃくりあげて泣きながら上の階へと消えていった。
ゲラゲラと笑うピープズは上機嫌に上下に体を揺らしながら地下へと消えていった。
はぁとため息をつくハリーははっと何かを聞いた気がして顔を上げる。
同じように反応したヴォルは鋭くあちこちを見回すがどこにも異変は見られない。
「どっどうしたんだよ2人とも…。」
驚くロンをしり目にハリーとヴォルは顔を見合わせると、聞こえた?と言いあう。
「あぁ。今聞こえた。引き裂く…って。」
「腹が減ってるって…。」
「いったい何の話をしているの?」
何が何だかわからないと言うハーマイオニーに大広間に先に行っててと言って、二人は揃って上へと階段を駆け上がる。
ちょっと待って、と追いかける二人をさておき、どっちに行った?と耳を澄ませながら走る。
ふと、足元が濡れていることに気が付き、滑らないよう足をとめた二人はぶら下がる奇妙な物体に目を止めて立ち止まった。
「ミセス・ノリスだ…。」
「ヴォル、ここに何か書いてある!秘密の部屋よ開かれたり。継承者の敵よ、気をつけよ…一体どういうこと…。ヴォル、ここを離れよう!僕たちここにいちゃだめだ!」
いったい何が、と屈むヴォルは焼け焦げた跡を見つけて眉を寄せる。
ばっと何かの記憶が猛スピードで横切り…ヴォルは急激な記憶の流れに吐き気を覚えて思わず片膝をついた。
ずきずきとした痛みとめまいで立ち上がれない。
焦るハリーと何が何だか分からず、この異様な光景に戸惑う二人と…混乱する間に大広間から人が戻って来たらしく賑やかな声が聞こえ…やがて4人のいる廊下へとやってきた。
先頭にいる人が猫に気がつくとあっという間ににぎやかな雰囲気は消え、頭痛でうずくまるヴォルとハリー、そしてロンとハーマイオニーは廊下の真ん中に取り残される。
「継承者の敵よ気をつけよ!次はお前たちのばんだ穢れた血め!」
マルフォイの声が響き、皆が注目すると、マルフォイはニヤリと笑って立ち去る。
その声に呼ばれるかのようにいったい何事だ、とやってきたフィルチは愛猫が動かないことに驚き、私の猫、と叫ぶようにやってきて、唇をわななかせた後一番近くにいたハリーに目を向けた。
「お前がやったのか!」
叫び声にハリーは首を振るが、フィルチは殺してやる、と一歩前へと出てきた。
「待つのじゃ。アーガス。」
この騒ぎを聞いたのか、やってきたダンブルドアはうずくまるヴォルと、どうすればいいのかと自分を見るハリーと…そして猫を見て場所を移そうとミセス・ノリスを下ろす。
「それならば私の部屋をお使いください!」
この近くだからと名乗りを上げたロックハートが嬉しそうに前を切って歩き、4人は一緒に来なさいとマクゴナガルに促されてその後を追う。
ロックハートの部屋に入ると、写真たちは慌てて影に隠れ、机に置かれた猫を興味深く眺める。
「これは異形拷問術のあとですな。」
べらべらと得意げになって私がいれば彼女は助かったなどいいたい放題のロックハートにフィルチはただ泣くばかり。
じっと猫を観察するダンブルドアはふむ、というと石化じゃ、とつぶやくように告げた。
「ミセス・ノリスは何者かによる強力な呪いで石化しておるだけじゃ。死んではおらん。」
「ほっほんとうですか!?」
こころの底からよかったと安どするフィルチに調子のいいロックハートは自分もそうだと思っていたと言う。
何があったんじゃ、というダンブルドアにフィルチはこいつがやったに決まっている、とハリーを示した。
「この呪いは未成年の魔法使いにできるものではないじゃろう。ふむ…。アーガス、君の猫は治してあげられるじゃろう。」
少し時間はかかるじゃろうが、というダンブルドアに泣いていたフィルチは顔を上げ、じっとダンブルドアを見つめる。
「スプラウト先生のもとで今マンドレイクが栽培されておる。十分に成長したら石化を治す魔法薬が作れるじゃろう。」
「それならば私がつくりましょう!今まで何百回もマンドレイク回復薬をつくったことがあります。眠ったって作れますよ。」
ダンブルドアの言葉に咳こんで声を上げるロックハートは得意ですから、と胸を張った。
「お伺いしますがね、この学校では我輩が魔法薬の担当教師であるはずだが? 」
はらはらと見守るロンとハーマイオニーがぞっとするような声で口を開くスネイプはちらりと静かな少年を見る。
気まずい空気の中、頭を抱えている少年と心配気に覗き込む少年。
ふと、嫌な気配にダンブルドア以外がぞっと肌を泡立てた。
ガツンっという音共に押し倒されたハリーにのしかかるヴォルは瞳を赤く光らせ、ぐっと腕に力を込める。
またか、とスネイプはいち早く状況を飲みこむと杖に手をかけた。
だがそれよりも早くダンブルドアの杖から光の弾が放たれ、ヴォルとハリーの間で鋭い音共に破裂させる。
驚いたのか身をのけぞらせるヴォルはぱちりと目を瞬かせて青ざめた。
「どうやら闇の魔法がこの事件に関係しておるようじゃな。ヴォル=セルパンは呪いでそういった魔法の気配を強く感じると操られてしまう呪いが掛かっておるから…そうじゃなハリー。」
咳こみながら起き上るハリーにダンブルドアは確認するように問うと、ハリーは頷き深く落ち込むヴォルの手を借りて起き上がった。
驚いているロンとハーマイオニーそれとロックハートに目を向けるダンブルドアはどこか緊張した面持ちのマクゴナガルとスネイプを見ると、不安げに自分を見るハリーに一つ頷いてみせた。
「ここにいる者だけの秘密じゃが…、ヴォル=セルパンの父はヴォルデモートなのじゃよ。ハリーの両親が襲われた晩の消える間際に思念が呪いとなって近くにいた彼に呪いをかけたようじゃ。」
彼とハリーの安全のために言わないでほしい、というダンブルドアにロンはこぼれおちんばかりに目を見開き、ハーマイオニーも驚いてハリーに謝っている少年を見つめる。
息子…似たようなものか、とスネイプは目が点になっているロックハートをみた。まさかそんなのに子孫がいたのかということで驚いているらしい。
「もし口外されるようなことがあれば…責任とって彼の安全のため、一緒に過ごしてもらいます。」
念のため、と付け足すマクゴナガルにもちろん秘密は守りましょう!とロックハートが再び頷きながらこの胸に誓ってと大げさなほど胸を張った。
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