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 一方その頃、めんどくさそうなヴォルに同じように眉間にしわを寄せるスネイプはこちらだ、と教師用の棚へと連れていく。
「あれ?生徒用じゃ…。」
「今更生徒用のをやらせたところでものの一時間もかからないだろう…。もっとも、貴重な…特に君が好きそうなものはあらかじめ数は把握している。これの数の記録をつけたまえ。」
 罰則らしいことをというスネイプは首をかしげるヴォルにこれだ、と小さな凍った卵の塊…アッシュワインダーの卵を出す。
「愛の妙薬の材料…。」
 凍結された物を素手でやれと言うスネイプだが、呟いたヴォルの言葉に素早くおおよその数を数える。
「昨年の授業でつくりたいと言っていたが…誰に飲ませるつもりだったのかね。」
 冷たい、とぶつぶついうヴォルはスネイプの言葉に目を上げてそりゃ…と言いかけて深々と溜息を吐く。
 
「どうせ俺様がヴォルデモートだと言うことをわかっているんだろう。ならば他人がいない時ぐらい前のようにふるまったらどうだ。」
 なんかお前の前で生徒のふりしているのしんどい、というヴォルデモートはまぁ学校の規則ぐらいは守るがな、と数だけは真面目に数える。
 本人の口から正体をあっさり言われるとは、とこの罰則を引き受けたことを後悔する。
「記憶がないと聞いたが?」
「あの夜までの記憶はほぼない。学校の記憶などなおの事。ただまぁ…年を追うごとに徐々に思い出してきてはいるが…。」
 この塊の卵のうち2つ割れて使いものになりそうにない、と使えない卵の数までも記録すると、次の塊に手を伸ばす。
 あの夜、ということにスネイプの目つきが鋭くなり、卵を見るヴォルを睨むようにじっと見つめた。
「愛の妙薬はな…ハリーに飲ませたかったが…ハリーは今の俺はヴォル=セルパンだから、と言ってくれたが…。この夏大変だったんだぞ。ハリーに俺は床で寝ると言ったのに俺様の体温が低いから暑くないとか言って、抱きついて無防備に寝るから毎日寝不足だった。少し暑いなと思ってもハリーから離れたくないし、でもぐっすり眠ったハリーの細い腕とか、腰とか、ぽかんとあいた口とか…目を閉じてもハリーの吐息を感じて目が覚めるし…本当にロン達が来てくれてよかった。贅沢を言えばもう少し遅く来てくれればよかったが、寝ている相手の口を無理に奪うわけにもいかないし。フレッド達の部屋で久々にハリーがいない夜を過ごしたが…。あの双子のつくった余計なグッズのせいで、ハリーを押し倒す夢見た…。そのせいで最近のハリーの顔をまともに見れなくなった。」
 
 やっぱり愛の妙薬つくりたいと言うヴォルは数を数えながら、そうすればハリーがもし俺様を嫌ってもとりあえず一回は…というのにスネイプは思わず手に持っていた魔法薬の瓶を握りしめてヒビを入れた。
 昔も昔でとんでもない奴だったが、今は今で…一人に対してだが、別の意味でとんでもない奴だ、と最後の塊に手を伸ばすヴォルを見る。
 昔も今も欲望に忠実で…衝動を抑えられないところはやはりどう一人物か、とため息を吐いている元闇の帝王をみた。
 唯一の救いは昔と違って一応衝動を抑えて危害を与えていないと言うところだ。
 その我慢もいつまでもつかは分からないが…。
 
 目を離せない、とため息を飲み込むスネイプは突然立ち上がったヴォルに若干驚いて険しい顔の少年を見る。
「卵の数はそこに書いた。寮に戻る。」
 がっとそう言い残すとスネイプが止める間もなくヴォルは寮への道を急いだ。
こういう時ナギニがいないと若干不便だ、と寮に向かおうとして蜘蛛が逃げていく姿に何かを思い出しかけて立ち止まる。
 蜘蛛…姿の見えない声…。足音が聞こえ、ハッと振り向いたヴォルは光をともして恐る恐る歩く小柄な姿を目に入れ…ほっと肩の力を抜く。
 相手も誰かいることに気がついたらしく、足音がやみ、すぐにパタパタと軽い足音でかけってヴォル、と飛びついた。
「ヴォル!わっ!手冷たい…。大丈夫だった?」
「ハリーこそ。あぁ手のインクついてる。早く暖炉のある談話室に戻ろう。その…何か…いや、なんでもない。」
 眠そうな太ったレディを起こしてなかに入るとナギニ、とハリーの腕からナギニを呼び出す。
 そんな様子を見ていたハリーはギュっとヴォルに抱きつく。
 あの声が去年聞いたヴォルデモートの影のようなしゃべり方だったのが何だか気になる。
 それもあって抱きつくと驚いたらしいヴォルが体をこわばらせた後そっと抱きしめ返す。
 
「なんかあのロックハートのところ香水臭くて…。やっぱり一番ヴォルが落ち着く。」
 すりっと顔を寄せるハリーにヴォルは抱きしめ返しながらそれってどういうことだ、とハリーに顔を見られたくなくてしっかりと抱きしめる。
 ん?と顔を上げたハリーはなんかヴォルの懐冷たいね、という。
 ぎくっと肩を揺らすヴォルは早く寝ようか、と逃げるようにして部屋へと上がっていった。
 戻ってすぐに懐から瓶を取り出すとそれを鞄にしまい込む。
 
 
 




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