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じっと窺うようなハリーの視線から何とか逃れようとするヴォルはハグリッド、と窓から見えるものを聞くため声をかける。
その言葉にそうだそうだ、とハリー達を外へと連れ出すと、カボチャ畑へと案内をした。
大きなカボチャは今年のハロウィン用だとかで、すでに大きく育っているのにハリーはようやくヴォルから目を離してすごいね、と圧倒されたように大岩の様なカボチャを眺めた。
「太らせ魔法ね。とても上手にやったじゃないハグリッド。」
「その…まぁなんだ。お前さんの妹もそう言っておった。」
 ハグリッドは3年生の時に退学し、それ以降魔法は使っていはいけないことになっている。
 ハーマイオニーの言葉にハグリッドは曖昧に答えて、まだ気持ち悪そうなロンにジニーが来たことを話す。
「俺が思うにあの子は欲しがるぞ、おまえさんのサイン入りの写…。」
 ちょっと意地悪気に笑って振り向いたハグリッドはうっかり大蛇の尻尾を踏んじまった、と無言で睨むヴォルにそんな噂があっただけだ、と冗談だと言葉を濁した。
「誰から聞いたその戯言。」
 先ほどの動揺はどこへやら、こめかみをひくつかせるヴォルにナギニはロックハートが朝来たみたいね、と部屋の空気を嗅いで呟く。
 びきりと、血管を浮き上げるヴォルにハグリッドはさっきロックハートが来てそう言っていたという。
「そうだあいつに言ってやったぞ、そんなことをしなくたってやっこさんよりハリーの方が有名なんだとな。」
「気にいらないって顔してたでしょ。」
 どこかむっとするハリーはヴォルの顔を見ずに有名とかもういいよ、という。コリンといいロックハートと言い…。
 ヴォルデモートはヴォルとして今ここにいるのに、とモヤモヤが胸にわだかまる。
 そんなハリーを見るヴォルは抱きしめようとして迷った挙句はぁとため息をついた。
 ぎくしゃくとした二人にハーマイオニーは首をかしげ、カボチャからげっぷをするロンを遠ざけた。
 穢れた血、という話を聞いた途端動揺していた彼と、それを見ていたハリー。
 何か隠しているのかしら、とぎくしゃくとした二人を見る。
 
 
 そろそろ昼食だ、と城に戻るとハリー達をマクゴナガル先生が見つけ、呼び止めた。
「今夜8時に罰則として、ロン・ウィズリーあなたはフィルチさんとトロフィー室で銀磨きです。ハリー・ポッター、あなたはロックハート先生がファンレターを書く作業の手伝いをしなさい。ヴォル・セルパン、あなたは…スネイプ先生と魔法薬の材棚の整理をしなさい。」
 え、と顔を上げた3人…特に露骨に嫌そうな顔をしたヴォルに罰則ですとマクゴナガルは告げる。
 あなた単体だと何をしでかすかわらかないから、当然でしょうと言うマクゴナガルにヴォルはそうじゃなくて…とハリーを見た。
「あの糞花畑にハリー一人で向かわせるのが心底いやなだけです。それにスネイプ…先生の胃痛が半端じゃなくなると思うのでロンと同じトロフィー室の銀磨きがいいです。」
 あいつのところに、と嫌そうな顔をするヴォルにハーマイオニーが睨みつけると、マクゴナガルは気持ちはわかりますが、と心の中で呟いて決定したことです、と首を振る。
「そんなに心配ならばあなたの蛇をハリーに同行させればいいでしょう。別にペットの同伴は許可していないわけじゃありません。それと、心配せずともスネイプ先生はこの話があった時から胃痛薬を生産していたため、問題はありません。」
 一番素性がわかる分良いでしょうと言う言葉だけで決まったセルパンの罰則。
 ダンブルドアがいれば彼の部屋の整理をやらせた方がより効果的な罰則だっただろうが今日は不在だ。
 マクゴナガルの言葉にヴォルはナギニをハリーの肩に乗せて、何かあったら迷わず攻撃しろと命じ、ナギニもわかったと頷く。
 ヴォル自身の罰則よりも自分を心配してくれたことにハリーは嬉しくてナギニがいれば大丈夫と答える。
 入学して以来スネイプの天敵の様なヴォルになんとなく気が付いている二人は胃痛と聞いてもさほど驚きはしない。
 ただ、今日の寮の点数が明日変動していないことを祈るばかりだ。
 
 マグル式の磨き方苦手なんだよ、というロンと夜別れると、ナギニが私がしっかり守るから大丈夫、というのだけを励みにハリーは重い足取りでロックハートの部屋の戸をたたいた。
「おや、悪戯小僧のお出ましだ。さぁ中に…そっその蛇は…。」
 にこやかな顔で出てきたロックハートはハリーの肩から顔をのぞかせる蛇に顔をひきつらせ、ハリーの肩に置こうとした手を硬直させる。
「セルパンの蛇ですが、少し体調が悪いのと、彼が今地下で罰則を受けているので、冷えないように僕が預かっているんです。この部屋なら暖かいのでナギニも体を冷やさずにすみますし。」
 だめと聞いていなかったので、と歩いている間に考えていたことを言うと、セルパンと聞いて更に顔をひきつらせるロックハートがどうですかをハリーは慎重に待つ。
 蛇同伴がだめなら今すぐ帰りたいが、困った挙句ロックハートは仕方ありませんと自分の写真だらけの部屋へとハリーを案内した。
 四方からの視線に苛立つナギニが一枚の写真に向かってのびあがるとその牙をむき…少量の毒をかけて焼いたことで、写真のロックハートは脅え、皆窺うような風に顔を隠した。
「すみません。あんまりこういう環境に慣れていないので…。」
 内心舌を出すハリーは叱るふりをしてありがとうとナギニの頭を撫でる。
 宛先をかくと言うことは大変名誉なことだと言うようなロックハートに呆れるハリーは書きながらずっと話し続けるロックハートの言葉を耳から耳へと聞き流す。
 ダドリーの言葉に比べれば…学校にいた時の言葉に比べたら…。
 宛名の書き間違いがないかを確認しながらあーとかうーといった言葉で流す。
【評判なんて気まぐれなものだよ】という言葉にはじゃああなたもですね、と返すヴォルの幻が浮かび、【有名人は有名人らしいことをしてこそさ】という言葉にはじゃあハリーは有名人じゃないのでほっといてくださいという幻が聞こえ…。
そうやってロックハートの言葉にヴォルの言葉を当てはめていたハリーはヴォルどうしているかなとインクが渇くのを待つふりをしてそっと考える。
 
 
 ふと、何か…冷たい声が聞こえた気がしてはっとヴォルの幻を消す。
「来るんだ…俺様のもとに…。八つ裂きにしてやる…。」
 はっと顔上げたハリーとつられるようにして鎌首を上げるナギニは部屋を見渡す。だが、そこにはゴーストの姿もない。
「今の声…何…。」
「6週間連続べストセラーですよ!」
 呟くハリーに気がつかないロックハートはまだ自分の自慢話をしていて、どうやら声には気が付いていない。
「今、何か声がしませんでしたか?冷たい声で…八つ裂きにしてやるって…。」
 もう一度ハリーが問いかけるとようやく声が聞こえたらしいロックハートが目を瞬かせてハリーを見る。
「ハリー、いったい何のことかな?おや、もう4時間もたっていました。信じられませんね。それではもういいでしょう。早く帰って寝たほうがいい。」
 何を言っているんだと言うロックハートを無視して警戒態勢のナギニともう一度声が聞こえないかとハリーは辺りを見回す。
 こんな良い罰則ばかりだと思ってはいけませんよ、というロックハートに碌に返事もせずハリーは暗い廊下を見つめると明りをともした杖を前に突き出し、寮へと戻って行った。
 
 
 




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