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「ホグワーツだ!」
ハリーの声にロンも歓声を上げるがヴォルはそれどころではない。
噴き出る汗にハリーも気が付き、ロンに校庭に降りようと言う。
「どうしよう…操作が利かない!」
「ブレーキブレーキ!!ヴォル、つかまって!!」
焦るロンの声にふっと意識を失いかけるヴォルはハリーの声に何とか体を固定させる。
強い衝撃に頭を打つヴォルははっと顔を上げるとハリー大丈夫か、と声を上げた。
「大丈夫だけど…こんなところに木があるなんて…。ロン、大丈夫?」
「どうしよう…杖が…。」
いたたた、というハリーが隣のロンを見ると、どうにかしようとして取り出したのか、杖が握られていた。
だが、その杖は衝撃でなのか真っ二つに折れ、木片一つで繋がっている状況。
ヴォルは自分の握った杖を見るが、どうやら無傷の様でほっとする。
とにかくどうにかしようと窓を見たヴォルは太い枝に目を瞬かせる。
どん、という衝撃に杖が折れたショックからまだ立ち直れないロンはパニックになり、ハリーもまた何、と窓の外を見て目を瞬かせた。
「暴れ柳だ。ロン、エンジン動かないか!?この木はまずい。」
とにかくエンジンだ、と言うヴォルに慌てるロンは動けよと言いながらバンバンとハンドルをたたく。
マグルの車がそんなので動くわけないだろう、と焦るあまりイラつくヴォルはアクセルを踏め、と怒鳴ると、ギアを操作して唸りを上げる枝を横目に動いてくれよ、と杖で軽くたたく。
「お願い動いて…。」
ハリーの呟きに答えるようにエンジンがうなりを上げると、車はものすごい勢いでバックし暴れる木から離脱する。
ほっとしたのもつかぬま、車が大きく震えて3人のトランクを吐きだし、乗っていた3人までもを振り落とす。
「待ってよ!どうしよう…ママに殺されちゃう…。」
いかないでと言うロンに車は冗談じゃないと排気ガスを吐きだし、森へと消えていった。
「仕方がないな。」
ずきずきと痛む頭とロンの行動と…何者かの妨害と。
いらだつヴォルはトランクを起こし、怪我をしているヘドウィグを気遣う。
とにかく城に行こう、と歩き出すヴォルにロンもとぼとぼと続き、ハリーもまたそのあとを追う。
苛立っている、とヴォルの手を握りたいが、その手には杖が握られたままになっていてハリーは小さくため息を吐いた。
大広間の中が見える窓にたどりつくと、ちょうど組みわけ帽子が小柄な少年の頭で何かを告げているところであった。
「組みわけ中だ!ジニーどこに入ったかな。」
少し元気を取り戻したロンは妹を探して熱心に大広間を見る。あれ、と声を上げたのはハリーだ。
「スネイプの席…誰もいない。」
「スネイプの奴、とうとう首にでもされたんじゃないのかな。」
どこに行ったんだろう、と言うハリーにロンは明るい声で悪戯っぽく答える。
そうかなと言うハリーに今年も闇に対する防衛術の教員になれなかったんだし、やめたのかもよという。
「ヴォル?」
「やばい…かなり気持ちが悪い。ちょっと浮遊呪文使いすぎたかも。」
黙ったままのヴォルを振り返るハリーは慌てて倒れるヴォルを受け止める。
その衝撃で尻もちをつくが、それよりも疲れきって青白い顔をしているヴォルが心配で大丈夫?と覗き込んだ。
「とにかく中に入らないと。スネイプがやめていたらいろいろ嬉しいけど…。」
「残念ながらそのやめたかもしれない教員は列車でこなかった生徒らを探して、何故のらなかったかの理由を聞こうとしているのだが…。」
ヴォルの事知ってるし…と口ごもるハリーは頭上から聞こえた声にハッと顔を上げてかたまるロンと共に、トロールの前だってこんなに恐怖は覚えないんじゃないかと目の前にいる黒服の男に目を向けた。
抱きかかえられてゆるくハリーに抱きついている少年と、青ざめた赤毛と…抱きつかれて座り込んでいる少年とに目を向けて、着いてきなさいと言う。
「あ…えっと…ヴォル起きられる?」
歩きだすスネイプに覆いかぶさったままのヴォルをゆするハリーはどうしようとため息を吐く。
ついてこない二人に不満げに振り返るスネイプは困った顔のハリーを見て、動かないヴォルを軽く睨む。
「あの…疲れたみたいで…寝ています…。」 」
とにかくおこなさなきゃとゆするハリーにスネイプは深々と溜息を吐き、セルパンと呼ぶ。
自分が起きれば起きるかも、と立ち上がろうとしたハリーは自分より大きなヴォルを持ち上げようとしてそのまま転ぶ。
「いたたた…。」
頭を軽く打ったハリーの思わず出た声に反応したのか、ヴォルがゆるく動くとぱちりと目を開けた。
自分が今倒れていること、そして受けとめようとしたハリーを巻き込んでいること…押し倒している形になっていることと顔が近いこと…瞬時に理解したヴォルは気分の悪さや頭痛を忘れ、がばりと勢いよく立ちあがる。
がつんという音にハリーは首をすくませ、驚いたロンはそのまま顔から血の気を引かせるという新たな表情をみにつけ…後頭部を抑えるヴォルと顎を抑えるスネイプを恐る恐る見上げた。
無理に起こそうとしていたのか、ちょうどわずかに屈んでいたスネイプに勢いよくぶつかったヴォルは何にぶつかったのかと振り向いてやばいとため息を吐く。
マクゴナガルとスネイプに説教を食らい、はぁとため息をつく3人は後日与えられる罰則を思い、うめく。
「なぜ梟を使わなかったのですか。」
まったくと呆れるマクゴナガルだが、ハリーがヘドウィグを籠からだし怪我の事を話した。
不満そうなヘドウィグの怪我を見たスネイプは眉を寄せ、ヴォルの肩で休むナギニを見る。
「転んだにしては少々気にはなる怪我の仕方をしているな。その蛇が驚いて噛んだのではないかね?」
それとも、わざと怪我をさせたのではないかと言うスネイプにそんなことしない、とハリーは違うと首を振り、何か考え事をしているヴォルを見た。
ヴォル?とハリーが覗き込むとはっと顔を上げ…貧血が来たのかぐらっと体を揺らす。
小首をかしげるハリーにマクゴナガルとスネイプはなんだか今年は嫌な予感しかしない、と元闇の帝王を見つめた。
簡単な食事が出され、寮に戻ると突然の歓声にロンとハリーは目を丸くし、まだ青白い顔のヴォルはすごいぞという声にますます頭を悩ませて椅子に腰を下ろす。
ハーマイオニーだけはふんとそっぽを向いて女子寮に上がってしまったが、どうやら車で来たと言うことに此処まで興奮が高まってしまったらしい。
具合が悪いヴォルを早く休ませようとハリーはその腕をとるともみくちゃにされながら自分たちの部屋へと転がり込んだ。
なんだか大変なことになったとロンと顔を見合わせるハリーはなんだか楽しくなってにやりと笑いあった。
翌朝は朝から大声を出す手紙…吠えメールによって大広間で大々的にモリーに怒られたロンとそれを聞いていたハリーにハーマイオニーはようやく怒りを納めたようでそれにしても、と矛先をヴォルにと向けた。
「もう少しヴォルも考えないと。」
特に反省している風でもないヴォルにハーマイオニーはため息をつくと貰った授業の時間割をみてそろそろ移動しましょうという。
「ねぇハーマイオニー。なんで闇に対する防衛術だけハートでかこってあるんだい?」
覗き込むロンにハーマイオニーは聞こえないふりをしてあれはどこかしら、と鞄を探る。
「とりあえず…やっぱり車…弁償したほうがいいか…。」
ようやく口を開いたヴォルにロンは慌ててヴォルだけにそんなことさせるわけにはいかないと慌てて首を振り、黙っていたのはそれを悩んでいたのね、とハーマイオニーはヴォルに対しても怒りを納める。
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