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 ホグワーツに戻る朝、上から下への大騒ぎでバタバタと一家が慌てている間にヴォルはこっそり煙突飛行粉を補充し、前日に準備を済ませていたトランクを押してハリーと共にアーサーのあの車へとやってきた。
 ハリーに入れて来たよ、と言うと総勢7人の大人数が右往左往するのを手伝いべきか考え、見守ることとした。
 魔法で広くなった中にモリーには内緒だよと言うアーサーだが、ハリーとヴォルからしてみればこの大人数がこの車から出てきて何とも思わないわけないじゃないかと呆れてしまう。
 というか、バーノンが乗っていたワゴン車タイプの車をおススメしたほうがいいんじゃないだろうかと古い車を見つめた。
「それじゃあ行くぞ!忘れ物はないな?」
「あっ!!」
 アーサーの声で出発した車はものの数秒で急停車し、ジニーがノートを取りに行く。
時間ぎりぎりでキングスクロス駅に到着すると、パーシーたちが順々に中に入りロンとヴォル、ハリーが最後になる。
「さぁ急ごう。」
 ロンとハリーに先に行くようにと促すヴォルは何かの気配にあたりを見回すが特に何も見えない。
 何だろう、と首をかしげたところでガシャンと言う音が響き、慌ててハリーに目を向けた。
「いたたた…なんで急に通れなくなったんだろう…。」
「大丈夫かハリー。それとロン。カートが暴れたんだな。」
 いたたと倒れたカートから落ちたヘドウィグの入った籠を回収するハリーに駆け寄るヴォルはしっかりカートを持っていないと、と周囲に聞こえるようにいい、ちらちらと振り返るマグルらの視線を外す。
 
「入口が閉まっている…。どっどうしよう!列車が…。」
「だめだ。マグルの眼がある…。それに列車はもう出発の時間だ。」
 どうしよう、と言うロンにヴォルは同じように壁に触れてだめだ、と首を振って時計を見る。
とにかく荷物が目立つから車に戻ろう、と言うハリーの案で路地に止められた車へと向かう三人はどうしたものかと顔を見合わせた。
「とにかく梟を飛ばして状況の説明をしたほうが早いかもしれない…。」
 誰も出てこないところを見るとあっちも出てこれないのかもしれない、とヴォルは眉をひそめる。
 このままでも多分あの教師達の事だ、見に来るだろうとは思っているが、そのまえに何かしらの妨害があるかもしれない。
 ハリーの安全のためにもホグワーツに行くべきだなと判断するが、ハリーがだめだと首を振った。
「ヴォル…だめ。さっき転んだ時にヘドウィグ、羽を痛めちゃったらしくて…。」
「本当だ。この羽根じゃあ飛ばすわけにはいかないな。」
 どうしよう、と顔を見合わせる3人は車にもたれる。そこではっとロンが体を起こし、そうだよ車だよ!と言い始めた。
「この車で飛んでいけばいいんだ!」
 そうだよこの車があるじゃないか!と言うロンにハリーたちはあっけに取られて目を瞬かせた。
「運転できるのか?」
「フレッド達が運転できてたし…大丈夫!こんなの簡単さ!」
「いや、マグルの車だけど…簡単かなぁ…。」
 心配気なヴォルにロンは大丈夫と明るく答え、ハリーもまた不安を口にする。
少し思案するヴォルはなら、と杖を取りだした。
 
「ロン、これは内緒だぞ。」
 ニヤリと笑って杖をふるうヴォルはウィズリー夫妻にあてた手紙を書き、それを地面にピン止めする。
 魔法使いにしか見えないから大丈夫だ、というと続いて車に杖を向けた。
「目くらましの呪文だ。この前の夜は少し不安定な気がしたから…。よし、これで大丈夫…だと思う。」
 やっぱり呪文が使えるのは楽だな、と杖をふるうヴォルにロンは目を瞬かせた。
この間ハリーが魔法を使ったと言うことで警告状が出たって聞いたのにというロンに、ヴォルはだから内緒だってと言う。
「ヴォル、君魔法使って…。」
「俺の力強すぎて規格外ってことらしくて…未成年が使ったって言うのばれないらしいんだよ。」
 フレッドたちには特に内緒だというヴォルにハリーは苦笑いし、ロンに内緒だよと言う。
 そんなことあるのか―と感心するロンは運転席を開けたヴォルをさえぎり、大丈夫だってと言って運転席に収まる。
 あのなぁというヴォルだが、ハリーを助手席に座らせて後部座席にナギニ達と共に座った。
ロンの隣だと十中八九途中で手を出しそうだと、後ろから乗り出してえーっとと言うロンに操作説明をする。
「そういえば…ヴォルってできるの?」
「一応な。」
 必死に操作を確認するロンを横目にハリーが尋ねると、ヴォルはできると頷いた。
ようやくエンジンがかかると、車を消すためのスイッチを入れて空へと向けて発進する。

「すごい!ちゃんと消えてるかな。」
「万が一消える効果が不安定になってもマグルの目には鳥が飛んでいるぐらいにしか認識できないよう、目くらましの呪文をかけたから長時間見つからなきゃ大丈夫のはずだ。とりあえず雲の上に出て…ちょっとまってくれ…えぇっとなんていう呪文だったかな…。」
 ふわりと浮いて車ごと消えたことにハリーは驚き、夜の時はそこまで余裕がなかったとあたりを見回す。
指示を出すヴォルは何だっけかと掌に杖を置くとそれをまわした。
「よし、このまま太陽の方角に飛べばいい。」
 くるりと廻る杖が一点を示すとヴォルはこれで進路はわかると運転に必死なロンに声をかけた。
 しばらくこの車で学校いったらみんな驚くかな、とか話しているとロンがねぇヴォルと声をかけた。
「このメーター…何を示しているのかな?」
 これ、とアクセルを踏んで動くメーターとは違うものを示すロンに、ハリーとヴォルは覗き込んで…顔を青ざめた。
「これ燃料の残量…。」
「一応魔法の車だからなくなってすぐどうだとかいうわけじゃないだろうけど…多分飛ぶのに使ってるっぽい。」
 ほとんど0を示す針に思わず声がかすれるハリーは不安げにヴォルを振り返った。
ヴォルもまた燃料はどうにもできない、とロンを見る。
ロンは二人の反応に他の計器を見て徐々にエンジンの音が小さくなったことにどうしようと真っ青になった。
「足りない分は俺が何とかするから…とりあえず進路と…ハンドルだけはしっかり頼む。」
 とりあえずどうにかしないと、とハリーの杖をハリーの掌に乗せて、進路はこれで、とハリーの杖を回す。
 何かに集中するヴォルは前からよくやっていた宙に浮く呪文を応用して車へとかけるがそもそもこれだけの重量。
 じわりと汗が浮かび、とにかく高度を下げ過ぎないようにとコントロールする。

 
 
 




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