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 ノクターン横町に行ってしまったハリーについて問い詰めるフレッドたちに、先ほどであったマルフォイ親子の話しをするとアーサーはふぅとため息をついた。

どうやらいろいろ確執があるらしい。
ハグリッドと別れてグリンゴッツに向かうと、最近マグル不正使用について抜き打ちの調査があるから売りに来たのだろうと言う。
「いずれは尻尾をつかみたいものだ。」
「アーサー気をつけて。無理して火傷しないように。」
 銀行に入りながら呟くアーサーにモリーが注意をすると、そこにはハーマイオニーとその両親がマグルのポンドを魔法界のお金に変えているところであった。
 マグルである二人に気がついたアーサーはハリー達とハーマイオニーが親しげに挨拶をするのを見て、君がハーマイオニーだね、というとポンド札を見て嬉しそうにその両親のもとへと向かった。
 じゃあとりあえずお金をおろしてこないと、というモリーに促され、ヴォルが鍵を取り出すと子鬼の顔つきが変わり、丁寧に改めた後身元の確認と言って何やら複雑な道具を取り出した。

 初めて見る道具にフレッドたちが興味深々でのぞくと、子鬼は何かに納得したのか、ご案内いたしましょうと丁寧なお辞儀を返した。
「ヴォルの金庫って…両親の?」
 両親がわからないと言っていたヴォルの家の金庫と聞いてハーマイオニーが首をかしげるとヴォルはまぁそうなんだけどさという。
「うん…まぁ…。家の金が入っている。ダンブルドアが学期末にやっと見つけたと言って渡してくれたんだけど…中身が怖いな。あ、アーサーさん。僕の家の金庫…かなり中身が特殊なので…念のため一緒に見てもらってもいいですか?」
 案内する子鬼の後をついていこうとしたヴォルはいろいろ質問をしたそうなアーサーを振り向き、魔法省の役人ならどうにかする方法もわかるかな、と面白そうに目を輝かせる双子を見る。
 ハリーの金庫は?とモリーに言われて、念のためにとハリーの鍵も子鬼に渡した。
トロッコにのり、最初にウイズリー一家の金庫につくとモリーはそこにある金貨や銀貨をかき集めるようにして小銭入れに入れる。
 自分の家の金庫を思い出すハリーは申し訳なさでなるべく見ないようにすると、次はそちらの方の金庫にご案内いたしますとヴォルの金庫…ヴォルデモートの金庫といういやな予感がしかしない金庫へとトロッコは向かっていった。

 
 
 ひときわ大きな扉の前に到着すると、何が入っているのか知っているのかい?というアーサーにいやな予感しかしないけど、と返すヴォル。
 子鬼が何やら扉を指でなぞると、最後に鍵を入れてゆっくりと扉を開いた。
 何があるんだ?と興味深々なアーサーと息子たちは中身を見て顔をこわばらせる。
「あー…やっぱり。処分して金にしないとな。たしか…ガリオンはこの辺に…。」
 不気味な魔法グッズが置かれている金庫に一応コレクションだからもったいないけど、としなびた手を掴んでなんだっけこれ、と考える。
「これは…。どうみても違法グッズとか闇の魔法グッズとか…。」
 これはすごいな、と見上げるアーサーは双子に障らないようにと忠告すると、これは驚いたと言う。
 確かこの辺に、としなびた手をほおりだし、何か不吉なオーラーを発している椅子をどけるとがさごそと体を入れて何かを漁る。
 あったあったというヴォルが体を引き出すと、どこかにぶつかったのかオルゴールが開いて叫び声を上げた。
 うるさいと閉めるヴォルはガリオン金貨とシックル銀貨を手にとって大丈夫呪いとか掛かってないと自分の使う分とハリーの分を袋に詰め込んだ。
「アーサーさん、これどっかで換金できませんかね?」
「いや〜…なんというかここまですごい量とものは見たことがないから…。こういうグッズを研究している人とか聞いてみるよ。」
 闇のオーラ全開の金庫が閉じると、ハリーが子鬼に自分の金庫はいいよと断って一行は地上へと向かっていった。
 フレッドたちでさえ息を飲んだヴォルの金庫の中身。
 ヴォルの家ってかなりどっぷりとつかった闇の魔法使いだったんじゃ、と考えるアーサーはヴォルの名前からまさか信者だったんじゃないかとハリーと何か話す少年を見つめた。


「ヴォルの金庫、凄かったね。あんなに魔法グッズ買い集めて…。全部呪い?」
「著名な魔法使いの愛用していた魔法グッズとか、いわくつきの呪いグッズと…。若いころ何集めてたんだろうか。」
 戻ってきてから思わず深呼吸する一行を横目にハリーはこそっとヴォルに尋ねると、振り返ると結構なものを集めていたなという。
 それにしてもちょっと出しすぎじゃない?というハリーに置いてある量のほんのちょっとをかすめたぐらいであんまり減ってないぞ、と何故か得意げになって返す。
 
 首を傾げるハーマイオニーと合流して買い物をすると、本屋の前に人だかりができていることに気がついた。
 足を止めるロンは行列の中に母モリーがいることに気が付き、入り口の看板に目を止める。
「ロックハートのサイン会…。あぁ、そういえば教科書に指定されていたな。」
 とりあえず手近のロックハートの本を掴んでモリーのもとへと向かうハーマイオニーを見て、ヴォルは普通にレジに向かおうと背を向け…魔女らの波に押されてロン達と一緒にモリーの元で並ぶこととなった。
「すごい人だかり…。」
 はぐれないようにヴォルの手を握るハリーはパシャパシャと言うカメラの音に顔を上げ、行列の先にいる男を見た。
 ブロンドの髪を輝かせている男とばちりと目が合うと、にこやかな笑顔を見せていた男がたちあがり、もしかして君は、とハリーに向かって声を上げた。
 ぱっと人が開いて男…ロックハートを通すと驚くハリーの前で立ち止まった。
 
「みなさん、ハリー=ポッター少年が私の本を買いに来ました!実は何を隠そう、私ロックハートは本年度の闇の魔術に対する防衛術の教鞭をとることとなっております!」
 ヴォルとつないでいた手を持ち上げられ、振りほどかれるのにハリーはあっと小さく声を上げたがロックハートは輝くような笑みを振りまいて気がつかない。
 ハリーこっちを見て、とカメラの方を向くようにされハリーはひきつった顔のまま、おされて人ごみに紛れた深緑の髪を探す。
 ロックハートが熱心に何かを話しているが、慣れないフラッシュに赤眼を探す。
「私の本を贈呈いたしましょう!」
 ヴォルの姿を探していたハリーの腕にドサドサと本を渡すロックハートにやっと離れられるとほっとするが、最後にもう一度、と肩を掴まれハリーは戸惑いつつ解放されたと同時にその場を離れる。
 
 
 ぐいっと腕をひかれて顔を上げれば不機嫌そうなヴォルがハリーを覗き込んだ。
ほっとするハリーによかったというとロックハートの周辺でまだ鳴るフラッシュ音にぶちりと何かが切れる。
 ロックハートがふれたところを払うように撫でるヴォルは赤い目を更に赤く輝かせた。
 あ、と言うハリーが止める間もなく、記者の持つカメラがぼんっと言う音共に黒い煙を吐き、レンズが割れる。
 驚き声と、ざわめきが占める中、私の輝きがカメラを壊してしまうなんて、という声が聞こえるが、まったくと苦笑いするハリーにヴォルは何食わぬ顔で自分の分の本を買いに歩きだしていた。
「何の騒ぎかと思えば…ポッターじゃないか。」
 入口から聞こえた声に目を向けるとそこにはうすら笑いを浮かべたドラコと、その父親が立っていた。
 ジニーやロン達の持っている本を見ると、マルフォイ氏はアーサーをみて馬鹿にしたように鼻先で笑った。
 かたや貴族風のきちっとした身のこなしと、子だくさんの役人。
 古本を鍋に入れていたジニーの本を手にとり、挑発するマルフォイ氏に怒るアーサーはその場で取っ組み合いのけんかになると、騒ぎが大きくなり…
我関せずとしていたヴォルは去年見つけていた本をロックハートの本に混ぜて購入すると、あほらしいとマルフォイの父親を見る。
「おっさん達やめんか。」
 大きな声と図体で割って入るハグリッドによってようやくおさまると、マルフォイ氏はジニーの本を返し、息子と立ち去ろうとして自分に向く視線をたどった。
 赤い目を目が会い、思わず目を見張る。
「ルシウス=マルフォイ?」
 記憶をたどるヴォルはマルフォイの父親の顔を見て呟く。
古い家柄で財力のある人物だったはず、と思いながら昔の関係者か、とジニーに貰った本をあげるハリーに目を移した。
 
 ハリーの分を購入していたヴォルは荷物がえらいことになったとため息を吐くと、ハーマイオニーに別れを告げてロン達の家「隠れ穴」にもどっていった。
 




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