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「ハリーってヴォルの事大好きだよね。」
 ロンの部屋で寝っ転がっていたハリーは同じように横になったロンに言われてえっと顔を赤らめた。
 幸い月明かりだけしかない部屋ではロンにばれはしなかったが、ハリーはタオルケットを顔まで上げてそう?と平静を装った。
「だってハリーってヴォルといるときが一番安心した顔していると言うか…。ヴォルと一緒にいるときとそうじゃない時とでちょっと顔つきが違うと言うか…。」
「えっ!?うそ!そっそんなに違う!?」
 慌てて顔を触るハリーはヴォルにばれてないかなとタオルケットの中にもぐりこんだ。
兄達からの指令でハリーに探りを入れるロンはハリーってわかりやすいのになぁと鈍感というか気が付いていないらしいヴォルの事を思う。
「ハリーから告白すれば一発でOKもらえそうなのに。」
 思わずつぶやくロンにハリーはこれ以上ないほど顔を赤くしてだけど、という。
「ヴォル…昔の約束覚えてないんだもん。それに…ヴォル…あぁ見えて結構いろいろ考えるから…うんって言ってくれないと思う。ヴォルが気にしていること大丈夫だからってちゃんと言ったけど、多分…過去やらかしちゃったことの清算がつかないと先進んでくれなさそう。」
 はぁっとため息をつくハリーにロンはそっか、というとそのやらかした内容ってなんだろうかと考える。
 そういえば昔より随分ましな何かをノーバートの時にしたらしい、と二人が話していたことを思い出す。
 ヴォルのやらかしたこと…なんだろうと考えるがなかなか思いつかない。
 
「なにしたの?」
「昔ヴォルは僕の事嫌いだったみたいで…本当にいろいろやってきて…。でも僕がいとこにいじめられているときに割って入ってきて…それで約束してくれたのにまったくヴォルってばすっかり忘れてるし…。だからヴォルが思い出すまで僕もいわないって決めたんだ。」
 かわいらしい悪戯とかじゃないだろうな、と想像をするロンにハリーは詳しくは言わないよ、という。
 ヴォルの忘れた約束…ハリー可哀そう、とロンは兄達に渡された遠くを聞くための道具(試作品)を蹴飛ばして思い出してくれるといいねとハリーに笑いかけた。
 
 
 家に飛んできた梟が学校の用意する教科書などのリストを届けてくると、ジニーのを見たモリーが小さくため息を吐く。
 ぐったりとしたエロールというウィズリー家の老梟を止まり木に持って行ったロンは自分のリストを見てうわっっという。
「ロックハートの本ばっかりだ!新しい闇に対する防衛術の先生はロックハートの大ファンに違いない。」
 これ安くないんだよ、とうめくロンになんとかするわ、とモリーが答えるとハリーとヴォルは顔を見合わせた。
「ロックハートって誰?」
 そんな偉人いなかったぞ、と考えるヴォルは考えるがまったくわからない。
「ギルデロイ・ロックハート。売れっ子の魔法生物とかに対する本の著者だよ。」
 耳打ちをするジョージにヴォルはふーんと言って家にあるその本を手に取った。
「多分ヴォルは絶対に気に入らないタイプの…有名人。」
 フレッドの言葉にハリーは表紙の青い瞳でウィンクするブロンドの髪の男を見るヴォルの顔を見てだね、と頷いた。
 いらっとしているヴォルは無言で本を戻すとどうやっていくんだ?とハリーの手を握り返しながら問いかける。
 まぁみてなってというと、今日行くわけじゃないからちょっと箒でも乗ってこようという兄弟とともに二人は外へと出て行った。
 夏の日差しに辟易するヴォルはなんとなく内容が気になって借りたロックハートの本を木陰で読んでいた。
 読めば読むほど殺意がわくが、何か引っかかってん?と首をかしげた。
 
 買い物に行く当日、ちょうどハーマイオニーも行く予定だと言う手紙が来て、グリンゴッツで待ち合わせようとヘドウィグを飛ばしていた。
 モリーは暖炉の上にある小さな壺を手に取ると残り少ないわね、とため息をついて煙突飛行粉で行くのよと初めて見る2人に説明する。
 暖炉に入れて目的地を言うことでそこまで飛ばされるらしく、肘をしっかり体にくっつけることなど注意事項を兄弟達にいわれ、まぁお手本見せてやるからというと先に暖炉に入って消えて見せた。
「ハリー。ナギニが出かけたいって。服の中入れてもらってもいいか?」
 財布にされる恐怖からやっとぬけたナギニがハリーを見つめると、ヴォルはこの家に住む害獣を食べて少し大きくなったナギニを手渡した。
 わかったと服の中に入れると、炎を見て大丈夫かなと考えてスネイプの試練の炎を思い出す。
 色が変わった炎に足を踏み入れると、思った通り炎は熱くなかったが、行き先を言おうとした途端煤を吸い込んでしまい、むせながらの発音になってしまった。


 ひゅっと体が引っ張られるハリーは様々な暖炉が過ぎていくのを見てどさりとどこかの暖炉に落ちる。
 どこだろう、と落ちた時に割れた眼鏡であたりを見回すと、どうみてもダイアゴン横町ではない。
 しなびた手やら何やらで早く移動しなきゃ、と立ち上がるとナギニが袖からするりと地面に降り立った。
『ハリー。ここがどこかわからないわ。それと…ドラコだわ。ドラコが近付いてきている。私があたりを見てくるからどこかに隠れていて。』
 ナギニは早く、とハリーを促し、タンスに隠れるのを見届けると扉の上に登って開いたすきに音もなく外へと出て行った。
 入ってきた親子はナギニのいうとおりドラコと…おそらくはその父親と思われる人物で、ハリーはタンスの隙間からそっとのぞきこんだ。
 なにやら店主とあやしい取引をする父親がアーサー・ウィーズリーという言葉を口にしてはっとハリーは身構える。
 どうやらアーサーの勤める魔法省のマグル製品不正使用取締局の捜査に問題のある品物を売りに来たらしく、そのやり取りを行っていたのだ。
 早くナギニ帰ってきて、と焦るハリーはハリー出てきて、と呼ぶ声にほっと溜息を吐いた。
 
 マルフォイ親子と店主が消えたことを確認するとなるべく音を立てずに外へと抜けだし、ナギニと合流する。
『ダイアゴン横町の隣のノクターン横町なのよ。さっきハグリッドを見つけたから誘導して来たわ。』
 その角のところ、と案内するナギニに従っていくと、見慣れた大きな姿があり、ほっと溜息をつく。
「ハリー!蛇が急に出てきて引っ張るからまさかセルパンの蛇じゃないかってぇ追いかけたんだ。なんでぇこんなところに。」
「フルーパウダーっていうのに失敗しちゃったんだ。あぁ早くダイアゴン横町のヴォル探さないと…焦って暴れたりでもしたらヴォルの正体がばれちゃう…。」
 驚くハグリッドに説明するハリーはダイアゴン横町の場所教えてと言う。
ヴォルの正体を知っているハグリッドはそりゃあてぇへんだ、とハリーをダイアゴン横町へと道案内をした。
 
 ヴォルの匂いがする、と先に進むナギニは慌てた様子のヴォルの肩にのって戻ってきた。
「ハリー!いったいどこに飛ばされたんだ!」
 無事でよかった、と抱きつくと頬についたすすを払い、壊れた眼鏡に目をとめた。
「今俺が直すと俺が使えるのがばれるから…ロンの父親に頼もう。それまでハリー危ないから手、つなご。」
 本当は直したいけど人の目があるから、とハリーの手を握ると見たことのある通りへとハリーを引っ張った。
「あぁそうだ。ハグリッド、ハリーどこの店にいたのか知ってるか?」
「ボーンジ・アンド・バークスだったかその辺から出てきたんだが…。あぁそうかセルパンはしっちょるのか。あの辺の店を。」
 ノクターン横町の事を知っているヴォルは変な店じゃないだろうな、とハグリッドに確認を取る。
 正体を知っているハグリッドは常連客だったんじゃないだろうかと考え、知っているのかと問うとまぁなぁという。
「元店員。」
「え!?就職しちょったのか!?あ…あーっとロン!こっちにハリー達いるぞ!」
 店の名前を聞いて思い出すヴォルの言葉にハグリッドは目をぱちぱちと瞬かせた。
闇の帝王が闇の魔法グッズの店員というのが全然結びつかない。
詳しく聞こうとしてロン達がこちらに向かっているのに気がつくと、今度また改めて聞こうとモリーの出した毛ばたきで顔をこすられるハリーと、眼鏡を直すアーサーを見る。
「詳しくは思い出していないからそのうち思い出したら話してやる。」
 今はわからないと言うヴォルはナギニを首に乗せて頭をなでる。

 
 
 




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