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 小さな家の上に増築を繰り返したような奇妙に曲がった家に入ると、ペチュニア叔母さんが見たら卒倒しそうだ、とそのごちゃごちゃっぷりにハリー達は目を点にする。
 家族人数分の秒針が付いた時計には家や学校などの他に命が危ない!と書かれているだけで今は一つ以外が家を示していた。
 先に部屋きなよ、というロンに呼ばれて曲がった階段を上っていくと一番上でここが僕の部屋なんだと二人を通した。
「ときどき屋根裏のお化けとかうるさいけど…その…。あんまり大きな部屋じゃないしボロボロだけど…。」
 顔を赤くして天井低いから気をつけてと言うロンは物珍しげなハリーとヴォルに恥ずかしいなぁと言う。
「そんなことないよ!うわーすっごい嬉しい。」
「友達の家とか初めてだ。魔法使いの家とか…こんな風なのか。」
 面白い、と部屋を見回すハリーとヴォルは動く写真にみたことのない題名の漫画、その他魔法グッズかなと思うものを見つけて面白いとそれを眺める。
 朝食食べようか、とロンと共に一階に降りていくと、ウィズリー夫人がぷりぷりと双子についてまったくあの子達ったらと言いながら杖をふるってジャガイモを潰すと勝手にかき混ぜている鍋に入れて…
貴方達のせいじゃありませんよ、と言ってハリーとヴォルの皿にウインナーを乗せる。
 焼いたパンが皿に乗せられるとネグリジェを来た女の子が目をこすりながら下りてきた。
自分を見るハリーとヴォルに気がつくと、キャッと言って駆けあがって行き階段でパーシーとすれ違ったのか声が聞こえる。
 
 そこに疲れた様子の赤毛の男…ウィーズリー氏が帰ってきて家族全員が狭い居間に集結する。
「まいったよ。マグルを騙す消える鍵とかやかんとか…。」
 まさかの徹夜だったというウィズリー氏はため息をつくと夫人が入れたコーヒーを一口飲む。
 子供たちの質問に答えていくと夫人がやってきて、中を調べるため、分解すると言って魔法をかけた車、というと顔色を変えて目を瞬かせた。
 飛ばすつもりがなければ法には触れないと言うのに対して夫人はきりっと眉を釣り上げて声を張り上げる。
「アーサー!昨日の晩、貴方の息子が貴方のその飛ばすつもりがないと言ったマグルの車を使って飛んできましたよ。」
 ふん、と、胸を張る夫人にもう一口飲もうとしていたアーサーはえっと顔を上げてフレッドとジョージを見た。
 そしてそのままきょとんとしているハリーとヴォルに気が付き、おぉと立ち上がった。
「君がハリー・ポッターだね!それとロン達が噂していたヴォル・セルパンだね!!何かあったんじゃないかと思って迎えに行こうかとモリーと話していたんだ。」
「貴方の息子が貴方の車を飛ばして、ハリー達を連れてまた戻ってきたんです!!」
 大きく息を吸い込むモリーに喜んでいたアーサーは首をすくませてフレッドとジョージを見る。
「その…うまくいったのか?」
「そうじゃないでしょう!!」
 こらえきれずと言った風に二人に問いかけるアーサーにモリーの火花が飛び散り、ハリーとヴォルはロンに促されて部屋分けしようか、と上がって行った。


 ロンたち家族との日々はハリーにとってもヴォルにとっても新鮮で、おんぼろな箒を使っての空を飛ぶ練習や、ロンのいう屋根裏お化けや…双子の部屋から聞こえる爆発音など、刺激が多い日となった。
 ヴォルはというと、双子に何かいわれた後、嫌そうな顔をしつつその爆発する部屋で新しい悪戯グッズ開発の手伝いをしている。
 部屋もロンの部屋は狭いという理由でヴォルは双子の部屋を使い、ハリーはそのままロンの部屋を使っていた。
「ヴォル、この花火なんてどうだ?爆発で火の鳥が噴き出すんだ。」
「火の鳥もいいけど…あれって赤単色だろ?孔雀や鳳凰の方が色鮮やかじゃないか?」
「それって東の国にいる鳥だっけ?ヴォルって本当にわけのわからない知識があるなぁ。」
 ごちゃごちゃと器具を動かし、魔法グッズを作る双子にこっちの火薬の方がいい、と言って手伝う元闇の帝王。
 作るのも楽しいな、とハリーのお守りも作り直さなきゃと考えるヴォルは外で庭小人を退治しているロンとハリーの声に耳を傾ける。
「それで、あんなにびっくりしてたってことはまだ未遂ってわけかな?」
 どんなものでも酸っぱくなると言う薬を入れた水を試飲として飲んでいたフレッドがにやにやしながら、辛くなる薬を入れた水を飲んでいるヴォルに問いかけた。
 げふっとむせるヴォルは辛いこともあり余計に咳込んだ。
「何のことだ?」
 何とか平静を装うヴォルだが、そこにジョージの声も加わる。
「ハリーと二人で一つの寝台で寝ているって聞いていたけど、同じ男としてわかるよ。気になる相手が無防備で寝ていたらそりゃな。」
「しかもぐっすり眠っていて、しがみつくように眠っていたら男としてはもう…我慢というか忍耐を試されると言うか。」
 両脇から肩に腕を回す双子にヴォルはうるさい、ともう一口水を飲んで辛いこと思い出し、またむせる。
 おかしいな、今までの人生振り返ってもこんなへまはしないぞ、と内心動揺しているヴォルはにやにやと笑う双子にいらっとするがどうすることもできない。
 何かやれば間違いな自分はハリーから引き離されてしまう。それだけはいやだということで自制をし、抑え込む。
 
「本当にヴォルはハリー一筋だよなぁ。」
「ハリーも部屋分けると言った時さみしそうだったし…ハリーもヴォルの事好きなんじゃないのか?フレッド、この薬苦み成分すぐ飛んじゃってるからもっと長持ちさせないと。」
 眉を寄せて試飲をするジョージは弱いなこれ、と薬の量を少し多くしてもう一度飲み、ぐぇえっとはきだした。
 そんな苦い顔をするジョージと同じように苦い顔をするヴォルはどうだろう、という。
「ハリーの場合…その…俺の事をれん…対象として見てないだろう。それに俺の…まぁいろいろハリーに取り返しのつかないことしているし…無理だ。ハリー…俺の事はただの幼馴染で安心できる場所であって、人生を共にしたいとかそういうのはまだないんじゃないのかなと…。」
 この悪戯グッズはこれでいいと思う、と普通の水に手を伸ばした。
 
「なんだよ、ヴォルはそれでいいのか?」
 先に水を手にしていたフレッドがヴォルに水差しを渡すと、小首を傾げた。
「いや、まぁ学期末にハリーにずっとそばにいてとか…まだあの叔父の家に一緒にいてとか、どんなことがあっても俺の味方だとか…そうは言われたが…。やっぱりそれイコール想い人っていうわけじゃないだろう。」
 口直し、と水を飲むヴォルは酸っぱさに思わず吹き出し、フレッドを睨みつける。
悪戯が成功したフレッドは匂いがないから成功だな、とにやにや笑いながらジョージと顔を見合わせる。
 それって普通にハリーもヴォルの事意識してるだろう、と頭がいい癖にそういうところは奥手というか鈍感なのか、とにやりと笑いあった。
 
 
 




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