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「俺はハリーやハーマイオニー達に質問を無視されても…特にハリーに対しては苛立たないけどな、それ以外の…ましてや屋敷しもべ妖精に無視されるのは嫌いなんだ。」
 苛立つヴォルにハリーはどうしてだろうと考えてカレンダーを見て納得する。
 今日はハリーの誕生日だ。
 魔法使いのお金を換金していないからお金はあまり持っていないしでヘドウィグを借りてプレゼントを準備したかったのを邪魔され…それでかなり苛立っているらしいい。
 
「ヴォルさえそばにいてくれればそれでいいのに…。」
 思わず小さくつぶやくハリーに名前が聞こえた気がするヴォルはどうした?と小首をかしげる。
 口をついて呟いていたことに気がついたハリーはぱっと顔を赤くすると何でもないと言って一番新しい手紙に目を落とした。
「次。じゃあなんでハリーの手紙を取った。」
「ハリー=ポッターが友達から忘れ去られていると思えばきっと学校にも行きたくなくなると考えたからです!」
 
「どう思うハリー?」
「逆にみんな心配でいてもたってもいられなくなる…かな。」
 ドビ―がどうして手紙を取ったか、それを聞くとハリーとヴォルは顔を見合わせた。
「それに…学校からの手紙とか無視すると…100%マクゴナガル先生かスネイプか…ダンブルドア先生がここに来ると思う。」
「…だろうな。」
 ヴォルの正体を知っている教員の…特にスネイプ辺りがこめかみをヒクリとさせながら乗りこんでくる…それが思い浮かぶハリーにヴォルも同じことを思い浮かべて苦笑いする。
「なぜです!?学校は危険です!行ってはいけないのです!」
 全然意味がわからないと言うドビーにどうしたものかと顔を見合わせると、俺に合わせてとヴォルがハリーに目くばせする。
「俺がヴォルデモートの息子だと言ったら意味わかるな。」
 流石に本人だとはいえないが、これならまぁごまかせるだろうというと、ドビ―が大きな瞳をぱちぱちとさせていわれた言葉をゆっくり飲み込むかのように固まった。
「なっ名前を言ってはいけない例のあの人の息子!?そんなはずはないです!あの人は誰も愛さないし、だれにも愛されません!」
 ぱたぱたと耳をはためかせながら首を振るドビ―にヴォルのこめかみがヒクりと動く。
まぁあれだけの事をしたし、確かに誰か一人をとか特別な感情を抱いたかどうかは、記憶がないながらにもないといえる自信はある。
 
「ヴォっヴォルは誰にも愛されていいないわけでも、誰も愛さないわけでもない!」
 ドビ―の言葉になかば納得しているヴォルの隣でハリーは違うと声を上げる。
下の音が一瞬静まった気がして慌ててハリーは口をつぐむと自分のいった言葉に顔を赤らめる。
 その隣でヴォルでもまた、ハリーの言葉に本当にハリーはいい子だと過去や正体などを抜きにして今すぐ抱きつきたいと、悶絶する。
「ハリー、俺の事じゃなくてヴォルデモートのことだろう。それと…まぁ間違ってはない。」
「そっそうだったね。えっと…でもほら、目の前にいるわけだし…。だから僕達、学校に行かないっていっても強制的に迎えが来ると思うから…。それに行かないなんて絶対に嫌だ。」
 何をどう成長したのか、噂で聞いている闇の帝王とは全然印象の違うヴォルにハリーはそっと手を握る。
 どうして自分の時代にハリーみたいないい子がいなかったのだろうかと、うっすらとした学生時代の記憶に舌打ちをするヴォルはその手を握り返す。
せっかくできた友達に会いたいと言うハリーにヴォルはドビーを見た。
 
「でっでも罠です!恐ろしい罠があるんです!!」
 キンキン声で叫ぶドビーにヴォルは無言でクローゼットに蹴り入れ、ハリーも慌てて出ていた学校関連のものに布をかぶせる。
 どたどたという足音が聞こえて、がちゃりとドアが開くと顔を真っ赤にした叔父さんが小僧ども、と押し殺した声で怒鳴る。
「せっかくの話しのオチに…台無しにしてくれおって!今度騒いだらそこにいるペットで財布をつくってやるからな!!」
 ヴォルの脇から顔を出すナギニを示してわかったな、というとドアを勢い良く閉めて下に戻っていく。
 言われたナギニはおろおろと不安げにハリーとヴォルを見ると財布は嫌だという。
「当たり前だ。ハリーの次に大切なお前をそんな目に合わせるわけない。」
 安心して、とナギニの頭をなでるハリーにヴォルもまた大丈夫だと告げた。
「ナギニがそんな目にあったら俺はこの屋敷しもべに呪いをかけて、こいつのご主人もろとも呪い殺すぞ。」
 苛立ちが募るヴォルはぎらりとナギニがしっかりと押さえているドビ―を睨みつける。
これ本気かも、とハリーはヴォルの手を握りしめた。


 流石にご主人と言われて顔を青ざめるドビ―はでもでも、という。
「お願いです。どうか学校には行かないと誓ってください。」
「そうやって誓いの呪いでもかける気か?ハリーのお陰で抑えているこの苛立ちが限界に来る前に立ち去らないと、そのでかい目ん玉くりぬいて口に詰め込むぞ。」
 行ってはいけません、というドビーにいら立ちを隠しもしないヴォルは鬱陶しい、と赤い瞳をさらに赤く光らせる。
「でっではドビーは…ドビーはハリー・ポッターを守るためにこうしなければならないのです!!」
 行ってはだめなんだと言うドビーはえい、っとナギニを巻き付けたまま消える。
 嫌な予感に顔を見合わせたヴォルとハリーは慌てて…静かに扉を開けると階段の下へと降りて行った。
 ダドリーの声やらが聞こえるリビングを横目に奥に進むと振りほどかれたらしいナギニが初めて来た台所にあたふたと立ち去ろうとして、宙に浮くケーキに身をすくませる。
 ナギニ、と声をかけるが、ダドリーの下品な笑い声にかき消され届かない。
何とかケーキだけでも取り返そうとして…がちゃんと派手な音を立てて皿がひっくり返る。
 驚いた様子のペチュニアがドアを開き、目の前のうずくまるナギニに驚いて叫び声を上げ…パニックになったナギニがリビングを通り抜けようとしてさらに叫び声があがり、あたりは大パニック状態となる。
 必死にとりつくろうバーノンをあざ笑うかのように突然入ってきた梟が手紙を落としたことで客人は怒り、出て行ってしまった。
 まずい、とヴォルがパニック状態のナギニを捕まえ、ハリーが素早くナギニ用の袋に入れると何事かと降りて来たヘドウィグへとそれを託す。
 何が起きたのか、何をすべきかとっさに判断したヘドウィグは空いたままの扉から外へと羽ばたくとくらくなった空へと消えていった。
 
 
 つばをまき散らしながら怒鳴るバーノンに居候二人はただ小さくなるしかない。
おまけに杖が部屋にあることを見つけられ、それら一式が階段の下の物置へと移されると、鉄格子をはめ直し、二人の部屋に鍵を取りつけて…朝夕以外は出してもらえなくなってしまった。
「まいったな…。あの屋敷しもべめ…。」
「ヘドウィグ大丈夫かな。どこまで避難したんだろう。」
 くそっというヴォルにしっかりとはめられた鉄格子から外を見るハリー。
困ったなという二人はハリーに届いた未成年の魔法にかんする違法通知の勧告状が届いたことに深々と溜息を吐いた。
「なんでぼくが使ったことになったんだろう…。」
 無意識にケーキを取り戻そうとして浮遊魔法でも使ったんだろうか、とため息を吐くハリーになんでだろうかと考える。
 
「俺なんて家についてから結構使っているのにな。」
「え…!?」
 なんで今になってと言うヴォルにハリーは目を瞬かせた。
もしかして、というハリーにヴォルは罰が悪そうに頬をかき、実はなという。
「俺様、一応未成年じゃないから。一度60歳までいってるから。だから肉体が戻っても未成年につけられるとかいう匂いはないらしくて…。あの狸爺にも念をおされていたんだ。」
 最初の鉄格子はアロホモラを実験的に使って、自分に梟が来ないことを確認していたというヴォルはベッドもという。
 首をかしげるハリーに良く見て、と二人の寝台を示した。
「あ、ちょっと広くなってるかも。」
「うん。足がやっぱりはみ出るんで、伸ばした。多分このままいけば…スネイプよりでかくなる。おぼろげな記憶ではあるけど、目線の高さがもう少し高かったはずだ。」
 身近にいた男…わかりやすい例としてスネイプの背格好を思い出すヴォルは部屋を見回してもやっぱりもう少し高さがあったと言う。
 立ち上がったハリーはヴォルを見ると背の高さを思い描く。
自分の身長と比べると僕だって とハリーは口をとがらせた。
 
あ、とハリーはヴォルを見てくすくすと笑いだす。
「今この状況って、悪名高い闇の帝王が初めて捕まったんじゃないかな。」
 しかもマグルに監禁って、と笑うハリーに目を瞬かせるヴォルは冷静に今の状況を振り返る。
 杖なし、鉄格子あり、連絡手段なし、ハリーあり…。
「確かに捕まったことは…ないな。」
 杖なしでも使える魔法があるが、それでも閉じ込められるということは前を含めてなかった気がする、と笑うハリーを見た。
「ハリー笑いすぎ。」
 くつくつと笑うヴォルは咎めるようにハリーにいうが、そのまま二人揃って笑いだす。
 
 
 




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