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 魔法学校の一年生となって初めての夏休み。
ヴォルデモートに両親を殺され、そして生き残ったハリー=ポッターと、その家に襲撃しに行ってどういうわけか赤ん坊に戻って人生をやり直すこととなったヴォルデモートことヴォル=セルパンはハリーの叔父の家へと帰って来た。
 一年間見ない間にダドリーは良く肥え…大きくなり、バーノンやペチュニアは相変わらずで魔法が使える二人を奇異なものを見る目で見ていた。
 
 魔法を使ってはいけないと言う紙をとっくに破棄していた二人は部屋に戻ると、寮の広い空間とは違う二人の部屋にせまさを感じるよりもなんだかほっとする。
 窓に格子が入っていたが、事前にトランクに何かの魔法をかけて細工をしていたヴォルのお陰で、部屋にもちこめたトランクから取り出した杖を使い外せるようにした。
 呪文等を使っていないのか、特におとがめはないがヴォルいわくあまりやらない方がいいと言う。
 大きなトランクを広げてしまえば部屋はあっという間に足場がなくなり、ヴォルとハリーは苦笑しつつ片づけをおこなう。
 
「あ、そうだハリー。俺の金庫のカギ、ダンブルドアから取り戻してきたから…二学年の必要なもの、今度は俺が買う。一学年の時はハリーの金庫から出してもらったからな。」
 これ、とハリーのカギとは少し違う鍵を取り出すヴォルにハリーはわかったと頷くと、なんで杖と一緒にくれなかったんだろうと首をかしげた。
「まぁ…そのなんだ…。おぼろげな記憶ではあるが…いろいろとな。いろいろと入っていて見せられないからだ。それと…普通の金庫ではなく特別金庫を使っていたらしい。」
 おぼろげな記憶ではあるけど、というヴォルにハリーは少し考えてだろうね、と頷く。
「ヴォルの金庫って…危ないものしか置いてないイメージしかわかないかも。」
「それなりに金も入って入るんだけどな。」
 晩年(?)に至っては全然開けた覚えはない、と考えるヴォルは使い終わった自分の教科書とハリーの教科書を見比べる。
「ハリーの教科書、大分よれよれだ。」
「なんでヴォルの教科書はそんなにきれいなの?」
「大体一度見たらわかるからな…。」
 必要なければ処分しよう、とまとめるとあくびをするハリーを見た。
気がつけばすっかり暗い。 そろそろ休もう、と寝支度を整えて今までの様に一つしかない寝台に並んで横たわる。
 今までも十分くっついてはいたが、それ以上に密着した状態となりヴォルは床で寝るよ、と起き上がった。
「大丈夫だよ。ヴォル体温低いから並んでても暑くはないし…一緒に寝よう。」
「でもハリー狭いんじゃないか?」
「大丈夫。それに…やっぱり学校の寮だと一緒に寝ていてもロンたちがいたけど、ここだとヴォルだけしかいないから一緒に寝るとなんだか安心する。」
 狭いだろう、というヴォルにハリーは首を振るとハリーを抱きしめるように横になるヴォルに嬉しそうに寄りそう。
 腕をまわしてすがりつくハリーは安心したように寝息を立て、ヴォルもまたハリーを抱きしめて眠る。
 
 ハリーの柔らかな髪がちょうど顔にあたるヴォルはハリーの香りをかいでふと目を開けた。
 精神的には記憶が戻ったことで大人びたが、肉体の年齢が現在の年齢であるためか…。
 これはこれで困ったな、とため息を吐くヴォルは一学年の時買えなかった本を買うか、と思い出して腕の中のハリーを見る。
 これは本当に困ったことになったと寝不足ならないようにしないと、と寝ることに集中することとした。
 
  ハリーの誕生日が近付き、ヘドウィグを借りたヴォルは何かを買おうとするが、どういうわけか手紙が戻ってこない。
 本当はバーノンはヘドウィグとナギニが入った籠に鍵をかけようとしたが、それに気がついたナギニが籠に噛みつき、牙の毒で一部を溶かしたことから籠に触れることはなく、部屋から出さないことと何度も何度も聞いて部屋の中で2匹とも自由にさせている。
 夜はずらした格子からヘドウィグを外に飛ばしているおかげでナギニの餌もどうにかまかなえている。
 だが、手紙だけはどういうわけかヘドウィグも運んでこれなかった。
 
 困惑気なヘドウィグにヴォルとハリーはどうしたものかと顔を見合わせた。
そういえば二人からも手紙が来ない。
ただ単に送ってないだけだと思っていたが、もしかしたら何かに邪魔されているのかもしれない、とヘドウィグを気遣うナギニを見る。
「どうも何者かにとられてしまうらしいわ。」
 ナギニから事情をきくヴォルは眉を寄せてもしかしたらと言う。
「何者かがハーマイオニーらの手紙を取っているのかもしれないな。ナギニ、ヘドウィグ…ちょっといいか。」
 どうしたものかと考えるヴォルはヘドウィグに袋と手紙を持たせると空へと放った。
心配げなハリーにまぁ様子を見ようと肩をすくめるヴォルは魔法が使えないなりに何ができるかと考えを巡らせる。
 それ以上に…カレンダーの日付をみるヴォルは苛立つ気持ちを隠せない。
 
 
 2日後、バーノンらに呼ばれたハリー達は正装した姿に数日前の話を思い出した。
なんでも客が来るとかで…鳥が大嫌いなのと、蛇がトラウマだとかで絶対リビングに近づけるなということと、物音を一切たてるなということを念を押して約束させる。
 元から2匹はいないと言うのを知らないバーノンらにわかりましたと頷くと簡単な夕食をとって部屋へと戻った。
ふと、開けたままの窓から戻って来たヘドウィグの足元にぼろきれの様なものと、それに巻きつくナギニを見てヴォルはやれやれとため息を吐いた。
 ナギニがしっかりとまきつくぼろ布からヘドウィグがくちばしを差し込むと手紙の束を引き出し、それをハリーへと届ける。
「ありがとうヘドウィグ。ナギニ…それなに?」
「屋敷しもべ妖精だ。魔法使いの家に仕える…小人…の様なものだ。」
 目を回している耳の大きなちょっと変わった姿をした小人を見るハリーにヴォルはうろ覚えながらに記憶を呼び起こし、ナギニをねぎらってから気絶している小人をたたいた。
 うめきながら目を覚ます妖精は自分の前にいるハリーと、不機嫌そうなヴォルを順に目に入れ、自分を締め上げる蛇にひぃっと声を出した。
「今あんまり大きな声を出すと…ナギニにまた噛ませる。」
 不機嫌そうなヴォルがそういうと、ナギニは舌を出して妖精の頬を何度か舐める。
 
「まずお前は誰だ?」
「どっドビ―と申します!」
 キーキーと甲高い声にヴォルはナギニ、と短く呼ぶとその絞めつける力を強めさせた。
「ヴォル、あんまりやるとさすがにかわいそうだよ。」
「ハリーの手紙とったのはなんでだ?」
 ヴォルの手を握るハリーにヴォルは小さく頷いてから、手紙とったのお前だろうと言うと、ドビ―は震えながらもこくこくと頷いた。
「ドビ―はハリー=ポッターに警告しに来ました!ホグワーツに行ってはなりません!罠です!」
「お前が自分で考えてやったのか?」
 苛立つヴォルに甲高い声で話すドビーは自分を締め上げるナギニを恐怖の目で見つめると、小刻みに頷いた。
 
 




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