------------

 そして迎えたクィディッチ。呪いを警戒するヴォル達だったが、客席にいるダンブルドアを見た途端肩の力を抜き、物の数分でスネイプの横ぎりぎりを飛んで行ったハリーがスニッチを掴んだことで瞬く間に終わってしまった。
「気苦労だったな…。にしてもハリー…箒の扱い本当にうまいな。」
 ため息を吐きつつも、すっと地上に降りるハリーをみつめるヴォルは仲間に囲われもみくちゃになる姿に眉間にしわを寄せた。
「流石ねハリー。ヴォル、仲間同士で健闘をたたえてもいいじゃない。」
「ほんと君って嫉妬深いと言うか…。ほらっ、早くハリーのところに行こう!」
 眉間にしわを寄せたままハリーに抱きつくメンバーを見つめるヴォルをハーマイオニーとロンは引きずってピッチに降りる。
 気がついたハリーが見てた?と嬉しそうにヴォルに飛びつくとようやく機嫌がよくなったようで、もちろんと顔を和ませた。
 
 その様子をヴォル並みに眉間にしわを寄せ憎々しげな様子で見つめるスネイプは、ハリーを肩車するヴォルの姿に大きくため息を吐いたのだった。
 ダンブルドアにはぐらかされたため未だ確証は得てはいないが、そうだとしても釈然としない。
考えれば考えるほど頭が痛いと、スネイプは競技場を後にする。
その後ろを一匹の蛇が静かにつけていたが、誰も気がついてはいなかった。
 
 
 ヴォルいわくたった一勝でこの騒ぎって今までグリフィンドールは一体どうなっていたんだ、と騒がしい談話室にため息をつき苦笑するハリーと共に寝静まるまで静かに見守っていた。
 椅子で眠ったネビルをディーン達が引き摺って行き、誰もいなくなるのを確認した2人は途中からかぶっていた透明マントを脱ぎ、談話室に入ってきたナギニを見る。
「お疲れ。なにかあった?」
 持っていたチキンをナギニに渡すヴォルはかぶりつく愛蛇の頭をなでる。
ハリーもまたお疲れさまと長い体をさすってあげ、冷えた体を温めてあげる。
「森を警戒してたわ。実は最近、森の様子が変なの。ケンタウロスが落ち着かないし…他の動物の姿もない。おまけにユニコーンの血があちこちに落ちていて…。変なにおいもしているわ。」
 チキンを飲みこみ、一息ついたナギニがハリーの袖を引くと、ハリーは膝の上に持ち上げその頭をなでてあげた。
「ユニコーンの血?怪我でもしているのか?」
「ホグワーツの森って本当に何でも住んでるんだね…。」
 眉を寄せるヴォルは何かを考え、ハリーは森に行ってはいけないために何が住んでいるのか興味深げに話を聞く。
 
 変なにおい?、とナギニに尋ねるハリーにナギニは少し考えるように首をかしげた。
「このホグワーツ内で嗅いだ事のある匂いなんだけど…なんだったかしら…。ホグワーツ内は人とかペットとか梟の匂いとかいっぱいで…あぁでもなんというか魔法薬…?の臭いに近いかしら。」
 どんなにおいか思い出すナギニに、ハリーとヴォルは顔を見合わせた。
彼女の嗅覚はかなり鋭いが、それゆえににおいが多く存在する城内では、一つのにおいに集中できないのだと言う。
「スネイプとか?」
「うぅん。というか、スネイプは目視で確認してないと匂いが薄くて見失いやすいの。なんというかこそこそ隠れたり、追跡をかわすためにわざと薄くしている的な。」
「いかにも陰気臭い育ち過ぎた蝙蝠がやってそうな小細工だな。ということは相手はこそこそするのにそう慣れていなくて、スパイだとかそういう行動に適してない人物か…。まだ名前の知らないような教師も数人いるからな…。まぁクィレルとかあぁいう人間じゃまず向いてないか。あ、でもあいつのターバン…臭いな…。」
 ハリーは一応呪いを解こうとしていたらしい苦手な教師を思い浮かべるが、ナギニは違うと首を振り、ヴォルもまた食事の時見る教師の席を思い浮かべ、誰だろうかと唸る。
「ユニコーンの怪我は気になるな…。本で読んだ情報だと、まず人前にほとんど出ないユニコーンを見つけ、さらに危害を加える様な奴は魔法使いでもめったにいないんだそうだ。そもそも傷をつけようとしても魔力を持った生物はそう簡単に怪我をしない。ユニコーンの素材は様々なことに使用できるものの、血は命を長らえる代わりに呪われるらしい。」
 考えるヴォルにハリーは呪われた命、と考え眉をしかめる。普通に怪我をするような生物じゃないことはハリーにも想像ができ、怖いなと呟く。
 
 
 いよいよ移送と言う日になったヴォルはロンの腕に巻かれた包帯にため息をついた。
大丈夫?と気遣うハリーにロンはごめんと謝る。
ハグリッドに言われて餌の手伝いをしている途中噛まれてしまったらしく、さらには毒があったようで真っ赤にはれてしまったのだ。
 マダムポンフリーになんて言おうと言うのをナギニの尻尾を踏んでかまれたと言えばいいだろうと言うヴォルの提案に何とか治療してもらっていった。
 だしに使われたと言うナギニはふん、と機嫌を損ねてしまったがハリーの手からステーキをもらって今は上機嫌だ。
「とにかく三人で運ぶしかないな。あんまり肉体労働は得意じゃないんだけどな…。」
 しかたない、というヴォルはハリーの肩で昼寝をするナギニを見つめ、蛇に変身できたらなと、内心うらやましがる。
「そうだ…。思ったんだけど…ハグリッド、きっと最後まで見つめているだろうから…場所が変更になったことだけ伝えたほうがいいんじゃない…かな。」
 どう思う?と首をかしげるハリーにハーマイオニーもそうねぇと賛同する。
 ヴォルもまたここ最近の溺愛っぷりにたしかに、とつぶやく。
 もしも塔を見上げていて、箒が見えず何の動きもなかったら確かめに来るんじゃないか、なにか行動を起こしそうな気がする。と、顔を見合わせてため息をつくとヴォルが俺が話すよ、という。
 
 
 透明マントをきてハグリッドの小屋の前にやって来た三人はやれやれとため息を吐いて扉を開く。
「ちょっとまっちょくれ。まだノーバートが眠らないんだ。」
 バタバタと言う羽音にハグリッドの焦ったようなほっとしたような声が聞こえ、三人は細く開いた扉から中へと滑りこむ。
 ロンが怪我したり眠らなかったりでいろいろ予定がくるわされていることに苛立っていたヴォルは無言で杖を取りだした。
「ステューピファイ!」
 赤い閃光が走り、ハグリッドの手を焼かせていたノーバートがぐったりと動かなくなる。
「すごい…ドラゴンの鱗って呪文受け付けにくいって本に書いてあったのに…。」
「まだ幼獣だからだろう。ハグリッド!さっさと箱に詰めて。」
 杖をしまうヴォルに流石ね、と言うハーマイオニーは驚きで固まったハグリッドをさっさとしろよと促す。
「せっセルパン、お前さんの呪文は威力が高いんだ。ノーバート大丈夫か?」
 辛うじて息をしているノーバートを心配気に見つめるハグリッドをヴォルは無言の圧力でせかし、木箱に入れると可哀そうだからとティディベアを入れてふたをした。
 
「あぁそうだハグリッド。いろいろあって集合場所がかわったから見送りなしで。」
 ハンカチを出し、鼻をかんでいるハグリッドに透明マントをかぶりながらヴォルが口を開いた。
よし、隠れているな、と三人と箱を隠すマントを確認するヴォルに、ハグリッドは目を瞬かせた。
「何だって!?どっどこに…。」
「ハグリッドに言うとそのでかい図体でついてきそうだからダメ。一応校内であるのと、ここから歩いていける距離。」
 透明マントから出てきたハーマイオニーが扉を開けると、慌てるハグリッドをしり目にヴォルとハリーが箱を持って外に出る。
 多分出たであろう三人を追ってハグリッドが外に出ると、ハーマイオニーも見えなくなり、.ハグリッドはきょろきょろと見回した。
「わかった。じゃあ無事届けたらここにまた戻ってくる。だから頼むから部屋に戻るか、裏口にいてくれないかな。目立ってしょうがない。」
 ヴォルのため息交じりの声がどこからともなく聞こえ、ハグリッドははっと城の方をみる。
人影が見えた気がしてしぶしぶ部屋の中へと戻った。
 
 





≪Back Next≫
戻る