------------

  クリスマス休暇中、部屋にはロンとハリーとヴォルしかおらず、他に人がいなきゃいいだろ、と言って寒さに降参したヴォルがハリーの布団にもぐりこみ、ナギニと共に暖を取っていた。
 ロンはまぁいいんじゃないの、というだけで深くかかわらないでおこうと、怒るハリーを宥めたため、ハリーもそれ以上は言えず、休暇中だけだからね、と折れたのだった。
「起きろよ二人とも!今日はクリスマスだ!!」
 はしゃぐロンはもうヴォルの威圧的な雰囲気にも慣れ、毛布を引っぺがすとおきなよと声を上げる。
 不機嫌なヴォルがのろのろと起きると、ヴォルの分もあるからと言って先に下へと降りていく。
「クリスマスって…何があったっけ…。」
「さぁ。」
 叔母の家でクリスマスと言ってもほとんど良い記憶のない二人は顔を見合わせると首をかしげ、談話室へと降りていく。
 そこには少し前から飾られていたツリーときれいなラッピングの箱の山。
ほらハリーの分、と一つ山を示されたハリーはえ、と目を瞬かせた。
「これハグリッドからだ。梟の笛だって。」
「このセーターは?」
 包みを開き、自分たちへのプレゼントに驚く二人はハリーとヴォルあてに包まれた箱を開きその中のセーターに目を瞬かせる。
「あ、それうちのママから。二人ともあんまり家の人とうまくいってないって言ってたのちょっと話したから…。だけどウィーズリー家特性セーターを贈るなんて…。」
 ロンは少し顔を赤らめ、迷惑だったらごめんという。
「ハリーの眼の色と同じエメラルドグリーンだ。」
「ヴォルも目の色と同じピジョンブラッドだ。」
 おそろいのデザインで色違いのセーターを手に取った二人は早速首を通し、笑いあう。
「ロンのママにありがとうって伝えて。こんなにあったかいプレゼント初めてだ。」
「いつもダドリーのお下がりだったり、バザーのセール品だったりだけど…これはあったかいな。ありがとう。」
 予想以上に喜ぶ二人…特にハリー関連以外では感情の起伏がないヴォルの喜んでいる姿におっおうとロンは答えた。
「僕のはあーまた栗色だ…。」
 自分の袋を開けるロンはあーとうめくとそこにフレッドとジョージがやってくる。
「ハリー達もウィーズリー家のセーターを持ってるぜ!」
 全く同じデザインのセーターにはそれぞれのイニシャルがあり、間違えるわけないのにと二人は笑う。
 
じゃあな、と立ち去っていくのを見送ると、薄い包みを見つけハリーはそれを開いた。
 何か不思議な文様の布とメモを見つけ、メモを手に取ると柔らかな布は地面に落ち、それをヴォルが拾い上げる。
「それってもしかして…透明マントじゃないのかな?すごい!!」
「透明…?ハリー!これ着てみて!」
 目をまん丸にするロンに、拾い上げたヴォルがハリーを呼び、ふわりとその肩にマントを乗せた。
「 「え…すごい!見てみて消えてる!」
「魔法界って本当に何でもありだな…。」
 マントで覆われたハリーの体が消え、その後ろが見えるとハリーは興奮気味に声を上げ、本当に見えないのかとヴォルは感心する。
 ロンに至っては噂程度でしか知らなかったようですごいなぁと呟くだけだ。
ふと、床に落ちているメモにヴォルが気が付き、拾い上げる。
「このマントは特別なマントで、ハリーの父親ジェームズから預かっていたものだ。大切にしなさい。だって。」
 細い書体に誰の字かなと考えるヴォルは、ズキンと痛む頭に眉をひそめた。
そうだ、と顔を上げたハリーにヴォルは軽く首をかしげる。


 昼間、ずっとニコラスという人物の載った本がないかを三人は図書室で探していた。
 しかし、ダンブルドアの知り合いということならば年齢層が広く、絞ることができない。
「どっかで聞いたような見たような…。」
 唸るヴォルはなんだったかなぁと、気分転換に全く違う本を手にとり、ふいにたちあがった。

「そうだ…。思い出した!ハリー、ダンブルドアのカード、どこにある?」
 たしかあれに、というヴォルにロンとハリーは顔を見合わせ、あの汽車で手に入れたカードを思い出す。
「え?あーそれなら多分サイドテーブルの引き出し…かな。」
「じゃあ大丈夫だな。アクシオ、ハリーのダンブルドアのカード」
 ハリーの答えに頷くヴォルは杖をふるうと、何か呪文を唱える。
 ほどなくして飛んできたカードを掴むと、その後ろの功績に目を通す。
「今のは…。」
「呼び寄せの呪文。あぁ、ほらここだ。」
 目を瞬かせるロンにそっけなく答えるヴォルは、ここだと一文を示した。
「友人ニコラス・フラメスと錬金術を共同研究…。よく覚えていたね、ヴォル。」
 ドキドキと不安でいっぱいの汽車のなか、驚くことばかりの連続だったハリーにとってはヴォルに言われるまでカードの事は少し忘れかけていた。

「まぁそれだけじゃなくて…これはどの本だったか思い出せないけど…賢者の石とかいう石を生成したって。フラメルっていう名前だけ覚えていたからやっとすっきりした。」
 今ので全部つながったと一人すっきりしているヴォルは、背後に感じる気配に振り向く。
探るように見つめるスネイプを見つけ、ヴォルは不快気に睨み返す。
ハリー達が気がつくより前に踵を返し、立ち去るがヴォルはまだいた場所を睨むように見つめていた。
 
 賢者の石とは何か、探す三人だったが、詳しい情報はわからず、もしかしたら閲覧禁止の棚にあるかもしれないとため息を吐いた。
 勝手に見ることはできないため、今までのように手あたり次第探すことはできず、大広間へと向かった。
 
 クリスマスですっかり彩られた大広間にはツリーが立ち並び、置いてあるクラッカーは大砲のような音を放つ。
ホグワーツに来てからやっとまともにイベントを受ける二人はとりあえず席に着くとチキンをほおばった。
クラッカーは一度引いただけで音がうるさいとヴォルは顔をしかめるが、ナギニが嬉々として飛び出たネズミを追いかける姿にまぁいいかと教員席に目を向けた。
 何があっても相変わらずなスネイプの眉間にしわが寄っていることに気が付き、そのままダンブルドアに目を移して短くため息を吐く。
今この大広間で心底楽しんているのはダンブルドアだろうが、心底楽しんでいないのはスネイプだな、とお腹をパンパンにさせたナギニを心配するハリーにどっかのクラッカーから飛んできた帽子をかぶせた。
 
 
 寮に戻り先にロンが眠ると、ナギニが動き出しハリーとヴォルは透明マントをかぶってこっそり寮を出た。
 夜これでこっそり出て調べものとかできるかも、というハリーの案にヴォルはにやりと笑い、二の返事で行こうと返事したのだった。念のため、気配に最も敏感なナギニを先導させ、偵察をさせながら歩く。
 特にペットが出かけることにはゴーストも気にしていないのか廊下の足を滑るように進む蛇には気にも留めない。
「特に異常はないわ。物音もないし、猫の臭いもしないわ。」
 先に進むナギニが見えない主人ら二人に角を曲がりながら状況を話す。
「じゃあ図書室に向かうからそこまで。」
 答えるヴォルにナギニはわかったというと、そのまま先に進む。
以前、動物園で会話できたのは何かそういう装置があるのかと疑っていた二人だが、どうもこうもハリーとヴォルにしか声は聞こえていないらしい。
魔法使いなら普通なのかと考えていた二人だったが、蛇を見た時の皆の反応からちょっと特殊なのかもしれないと考え、他に人がいないとき以外はなるべくナギニとは会話しないようにしていた。
 
 




≪Back Next≫
戻る