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「見ろよあいつの泣き顔。それに…朝届いたとか何とか騒いでいた思い出し玉を落としている。」
 笑うスリザリンの中からマルフォイが出てくると、ネビルが落ちた場所から何か光るガラス球を拾い上げた。
 ガラスでできているであろう球は落ちた後に落としたらしく、傷一つなくマルフォイの手の中で光を反射して輝いている。
 ネビルを馬鹿にして笑うマルフォイを快く思っていないハリーは前に出た。
「返してよマルフォイ。それはネビルのものだから。」
「いやだね。これはネビルにとってきてもらおうか。屋根の上なんてどうだろう。」
 笑うマルフォイは素早く地面をけると空に飛び、取り返したかったらこいよ、という。
「だめよハリー!先生が飛んではいけないと言われたでしょ!」
 挑発するマルフォイにむっとするハリーはハーマイオニーを無視して地面をける。
マルフォイと向き合うところで制止するハリーに地上にいる他の生徒ははらはらしながら見つめた。
「じゃあ箒を使わなきゃいいだろう?」
 箒で飛んじゃだめって言われているのに、というハーマイオニーにヴォルはにやりと笑うと、箒から手を離し、地面をけった。
 滑るように移動するヴォルはマルフォイの死角に回るとそのまま浮上する。
「そんなに欲しいならほら!とれるもんなら取ってみろ!」
 返してと言うハリーにマルフォイは笑うと思い出し玉を放り投げた。
キラキラと光る球を目で追うハリーは箒を握りしめると勢いよくそのあとを追う。
「ハリーが怪我でもしたらほんとお前ここからたたき落とすぞ。」
 気配なくマルフォイの背後に回っていたヴォルは耳元でそう告げるとマルフォイはぎょっと振り向いた。
 落ちる球を追いかけていくハリーが地上前にキャッチするとそのまま地面に降り立つ。
それを確認したヴォルは唖然とするマルフォイを置いてハリーのそばにと降りる。
「さすがハリー。動体視力と反射神経、いいからね。」
「はー緊張した。」
 ええへと笑うハリーの頭をなでるヴォルは早歩きでやってくる人の姿に顔を上げた。
「ポッター!」
 怒鳴るマクゴナガルに笑っていたハリーはどうしようと顔を凍りつかせる。
「なんてことを…あんな高さから…一歩間違えていれば首の骨を折っていたかもしれないのですよ!ついてきなさい。」
 怒るマクゴナガルは来なさいと言うと、ハリーは肩を落としてそのあとをついていく。
「それとミスター・セルパン…少し尋ねますが…。その飛び方はどこで?」
「なんとなくできると思って前に試したら飛べたので…。」
 振り向くマクゴナガルはヴォルに尋ねると、特にどこでともなかったため、ありのままに伝える。
 あまりやらないように、と言うマクゴナガルはハリーを連れて城へと戻って行った。
 残されたヴォルは戻ってきていたフーチに箒では飛んでませんよ、と言うと注目される中を気にせず箒を手に取った。
 
 
 マクゴナガルの後をついていくハリーはどうしようかと考えつつも、空を飛んだ時の高揚感を思い出していた。
呪文などはヴォルにいつも教えてもらっていたが、箒で空を飛ぶ方法は教えてもらっていない…つまりは僕自身の力で飛べたんだ、と嬉しさがこみ上げてくる。
 マクゴナガルが途中で呼び出た生徒と共に空いている教室に入った。
「ウッド、この子は最高のシーカーです。彼は手に持っているガラス球を始めてにもかかわらず上空で落とされたこれを地面にぶつかる前にキャッチしました。」
「本当ですか!?僕はオリバー=ウッド。クィディッチのキャプテンをやってる。」
 よろしく、というオリバーにハリーは目を白黒させた。


 授業後、大広間で合流したハリーにロンは大興奮し、クィディッチ自体よくわからないヴォルとハリーは顔を見合わせる。
「ハリー、平衡感覚いいし…きっといい選手になれるよ。」
 にこりと笑うヴォルは箒のスポーツなら陸上の競技と違って筋肉はつかないだろう、とハリーの細い腕を見る。
 筋肉が必要になるようなスポーツなら反対していたが、程よくつく程度なら問題はない。

 教室に向かう途中、偶然合流したハーマイオニーと共に移動していると、階段が動き出し勝手に他の通路につながってしまった。
「あーかぼちゃジュース飲んでる場合じゃなかった…。」
「ハリーと一緒に歩く時間が増えて僕は嬉しいけどね。」
「そんなことより早く移動しないと!ここどこだよ。」
「落ち着きなさいよ。少し回っていけばどこもつながっているのよ。」
 はぁ、とため息をつくハリーにヴォルはほほ笑むと、慌てるロンをハーマイオニーがなだめる。
見慣れない廊下に出た四人はここはどこだ、とみまわした。
「ここは立ち入り禁止の廊下じゃない!?はやくでないと!」
「立ち入り禁止?あぁ、そういえば…そんな話してたな。ハリーと同じ寮に入れるかで頭がいっぱいだったから全然きいていなかった。」
「え…ヴォル…すごく余裕そうに見えてのに…。あ、僕はちゃんと聞いてたよ。」
 どうしましょう、というハーマイオニーにヴォルはあの爺の話しきいていなかったと言い、ハリーは聞いていたけど場所までは知らないと言う。
 各々考えていると、一匹の猫が四人を見つめ一声鳴いた。
「フィルチの猫だ!」
 ロンの声に四人はあわてて身近の扉に体を滑り込ませる。
 
 
「あっ…。」
「どうしたの?ヴォ…」
 耳を澄ませてフィルチがいなくなるのを待っていると、部屋の中を見たヴォルが声を上げ、振り向いたハリーが思わず声を詰まらせる。
 何よ、と振り向いたハーマイオニーとつられて振り向いたロンは驚いた様子の3対の眼と眼があってしまった。
「ケルベロス…って…魔法界に実際にいるんだ…。」
 流石に顔をひきつらせるヴォルにハリーは思わずすがりつき、ハーマイオニーとロンは叫ぶこともできずにじりっと扉に下がる。
「逃げよう!」
 ハリーの声に弾けるように扉に向かうと、3首の犬が逃げる四人に吠えたてる。
「プロテゴ!」
 先にハリーを扉に通すヴォルは振り向きざまに魔法を唱えると、ガツンと言う音共に犬は何かに頭をぶつけたかのように頭を振る。
その隙に部屋を出ると、勢いよく扉を閉めた。
「何なんだよ今の犬…」
 恐怖で声を震わせるロンにヴォルは昔読んだ本に出ていたケルベロスに似ていたな、と言う。
「ヴォルっていつも変な本読んでたけど…。ケルベロスって?」
「冥府の門番で、なんだったかな…なんかまぬけな弱点があったような…。」
「そうね。あの犬…何かの扉の上に立っていたからあながち間違いじゃないかも。」
 本当に何でもいるんだなこの魔法界って、と言うヴォルはあの蛇もいるのかなと、ちょっと考える。
ハリーは休み時間ダドリー達から逃れるためにヴォルと共に図書室に入っていた時のこと思い出し、それにしても怖かったという。
 どこまでもマイペースなヴォルに冷静になるハーマイオニーは犬の足元を思い出し、はっと顔を上げた。
「このままじゃ授業に間に合わないわ!それにこんなところにいる所をフィルチに見つかったら最悪、退学よ!早く行きましょう!」
 時間を気にするハーマイオニーは早く、と三人を促す次の教室へと向かって行った。
「最悪、退学って…」
「まぁ…勉強が好きなんだろう。」
 ヴォルの顔を見るハリーにヴォルは肩をすくめて見せると、ハーマイオニーの後を追う。
 
 




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