------------
「スネイプ?またどこかで聞いたことのあるような…。」
どっかできいたような、と考えるヴォルはまさか自分に予知能力でもあるのかと考え、ないないと頭を振った。
ふと、視線を感じ、ハリーとヴォルはその視線の先を見る。
ちょうど考えていた人物がいぶかしむように二人を見ていることに気が付き、ハリーは首をかしげヴォルは睨むように見返す。
ホグワーツの校歌を各々の旋律で歌うと、にこりとダンブルドアは笑い、就寝の時間であると皆に告げた。
パーシーに案内されたグリフィンドール寮は六人部屋で、あーつかれたとロンは自分の荷物が置かれたベッドに倒れ込んだ。
シューっと空気の抜ける音に目を向けると、あのナギニがヴォルに向かって舌を出し、まるで会話しているような様子に初めて見たディーンなどが驚きの声を上げる。
「ペッペットって…フクロウとカエルと猫とかだけじゃ…。」
「ナギニはハリーがくれた大事な蛇だ。あんな家に置いてこれるわけないからね。それに禁止とはどこにも書いてない。」
現に部屋の荷物と一緒に連れてこられているのだから、まぁちゃんと管理すればいいんじゃないかな、というと、なるべく俺たちのベッドには来ないように躾けといてくれよと、各々自分の荷物を開ける作業に移る。
様々な授業を受けていく中でロンは印象が強く残る魔法薬の授業を思い出した。
地下で行われる授業と言うことで少しピリピリとした空気のなか、ヴォルだけはやっぱり見たことあるなと石の壁を見る。
合同授業のためスリザリン生と教室で待っていると時間きっかりに入ってきたスネイプは魔法薬学とは何かを説明し、それをメモしていたハリーに突然話を振って来たのだ。
「その名も高きミスター・ポッター!アルフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる。」
話を振られたハリーはえっと顔を上げ目を瞬かせた。
その近くではハーマイオニーが手を上げているが、スネイプは全く無視している。
「あの…アルフォデルの球根って…」
戸惑うように聞き返すハリーはそのそもの材料が分からず困惑したように眉を寄せる。
「生きる屍薬。6年生で習う高等魔法薬でマグル出身の俺らにはまるで意味がわかりません。」
意地悪気に口を開こうとしたスネイプに、ヴォルは静かな声で答えると睨みつけるスネイプの視線を受け流す。
「ほぅ、自意識過剰なものが他にもいたようだなヴォル=セルパン。だが君には聞いていない。よってグリフィンドール5点減点。」
「え、ハリーが僕と同じマグルの世界で育ったと言うの知らなかったんですね。知っているのが当然の魔法使い界の常識を知らないだけで5点減点なんてサラザール=スリザリンの純血主義は根深いんですねぇ。」
「ヴォっヴォル…。」
スネイプの減点に落ち込むグリフィンドールと喜ぶスリザリン生に対し、ヴォルはわざと驚いたような声を上げ、一つ学習しました、とにこりと微笑む。
慌ててハリーがなだめるがその赤い目がギラリと光っていることに今彼が怒っていることを理解した。
おそらくは自分らの知らないところでハリーが有名だとわかり、そのことでハリーが良くも悪くも遠巻きに囁かれてハリーが少し困っていることが我慢ならないらしい。
有名でもなんでも良いから俺のハリーに向かってちらちら好奇の目を向けるんじゃない、見せもんじゃない、というのがここになってスネイプの態度に一気に延焼してしまったらしい。
怒りのあまりか無言で睨みつけるスネイプに対しヴォルはあくまでもいつもの優等生の顔をかぶったまま何でしょう、と口元に笑みを張りつけ、まったく笑っていない赤い目でスネイプを見る。
「ほう、ではこの教科書にのっていないような情報をどこで手に入れたと言うのかね?我輩はあらかじめ予習をしていると考えての質問だが?」
「ハリーの教科書と僕の教科書を用意してもらっている間に本屋で立ち読みした中にそれがありましたので。使うつもりなんて全くありませんけど。むしろアモルテンシアの調合方法が知りたいです。」
やっぱり載っていなかったのか、と勉強家のハーマイオニー以外が心の中で突っ込みを入れる中、ヴォルの言葉にハーマイオニーはきょとんとし、スネイプは教壇に教科書をたたきつけた。
最初の授業だと言うのに怒りマックス状態のスネイプが板書するようにといったものをかき取っていくと、次回からは魔法薬を実際に作る手順に入る旨を伝えられる。
最後まで険悪なヴォルとスネイプだが、授業の終了と共にヴォルは荷物をまとめ、ハリーやロンと共に教室を出て行った。
「あの陰険教師…なんなんだあれ。」
不機嫌どがこちらも高いヴォルはロンがいる前にも構わず、いつもの優等生面を外しハリーの前で見せる本来の彼のまま、ちっと舌打ちをする。
物腰柔らかく、少ししらじらしく見えるようなヴォルばかり見ていたロンはこっちが本性か、と少し窺うように見つめた。
「なんとなく…なんとなく…。あの教師…スネイプ。あいつは癪に障る。」
「ところでヴォル…君がさっき作り方が知りたいって言ってた薬…あれはなに?」
怒りを鎮めるためか、重々しい溜息を吐くヴォルはもう一度深呼吸するとおずおずとされるロンの問いに、んーと考える。
「まぁいわゆるハグリッドの言葉を借りればまだ早いっていう奴。」
どのみち今の僕らの技量じゃ無理そうな薬、と言うと、ロンは曖昧に頷く。
「ヴォルが好きそうな薬…なんだろう?」
んーと首をかしげるハリーにヴォルはなんでもないよーというと、ハリーの髪をなでる。
スネイプの無言の怒りになんとなく、彼にとって良い効果のある薬で、飲ませる対象はハリーだったんじゃ、と普段鈍い感が働くロンだが、いやまさかね、と頭を切り替えた。
結果的にそれから魔法薬学の授業があるたびにスネイプはハリーに難癖をつけ減点をし、その仕返しと言わんばかりに静かに怒るヴォルは、スネイプの怒りそうなことをずらずら並べて完璧な魔法薬を作り出し、なにか、と言うのが決まりとなっていた。
狡猾で執念深い…やっぱりヴォルはスリザリン向きな性格だな、と考えるロンは外で行われる箒の飛行訓練のため、外へと向かった。
魔法薬学の事を思い出していただけに今日もスリザリンの合同授業でロンは不満げに口をとがらせる。
「箒かぁ…マグル世界で言う魔法使いってこれっていうアイテムの一つだけど…どうなんだろう。」
箒の隣に立つヴォルはうわぁといって自分で飛んだ方がいいんじゃないのかと考える。
ハリーは楽しそうに目を輝かせ、早く乗りたいとわくわくしてフーチ先生を待つ。
「いよいよ飛行訓練です!さぁ皆さん箒の左側に立ってさぁ右手を箒の上にだして!はい!あがれ!真剣に!」
はきはきとした如何にもスポーツをやっているといった印象の女性はやってくるなりそういうと、あちらこちらから上がれという声が響く。
ハリーやヴォルはすぐに手に箒が治まるがロンやハーマイオニーはなかなか上がらない。
ようやく皆の手の中に箒が治まるとフーチはホイッスルを取り出した。
「合図をしたらみんな一斉に地面を強くけること!箒は常にまっすぐに!しばらくういてから前かがみになって下りてきます!行きますよ!イチ、ニ…」
皆が箒にまたがる音を確認したフーチはよく通る声で説明し、ホイッスルを口にくわえる。
だが、その前にロンの隣にいたネビルが慌てて地面を強く蹴ってしまった。
「ミスター・ロングボトム!落ち着きなさい!」
ホイッスルから口を離すフーチが半ばパニックになっているネビルに声をかけるが、どうしたらいいのかわからず、箒にしがみついてしまう。
すると箒は勢いよく飛び出し、制御ができないネビルはそのまま地面へと落下してしまった。
慌てて駆け寄るフーチは腕を抑えてうめくネビルを見ると、大丈夫よと起こす。
「この子を医務室に連れて行きます。全員地面に足をつけて待ってなさい。箒一本でも飛ばしたらクィディッチのクの字を言う間にホグワーツから出て行ってもらいますからね!」
泣いているネビルを支えてフーチはそう言い残すと、城に戻る。
|