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「あーこれ、アルバス=ダンブルドアだ。ほら、ホグワーツの校長先生。」
 ロンがハリーの落とした包みからカードを拾うと、ハリーのだよ、と渡す。
白いひげが特徴的で、折れ曲がった長い鼻を持った老人がカードに描かれており、不思議そうに見るハリーとヴォルにウィンクする。
 目を瞬かせ、今のは目の錯覚かと考える二人は裏を返し、彼の功績を読んでいく。
表に返せば先ほどいたダンブルドアがいない。
「え!?消えちゃった!?」
「そりゃ写真だもん。じっとしているわけないよ。特にお茶目なダンブルドアはいっつも他のカードにお邪魔するからびっくりするんだよ。」
 ハリーの声にロンは何を言ってるんだい、という顔をし、自分の分のカードを見る。
欲しいカードだったのか、しまうロンにハリーとヴォルは魔法界の常識って何から何まで想定外なんだ、と認識を持つことにした。
 
 
 列車が到着すると、聞き覚えのある声が一年生を集めていた。
「いっち年生はこっちだ!おぉ、ハリーそれにセルパン。それと…その赤毛はウィーズリー家の子だな。お前さんの兄二人には手を焼いてんだ。」
 着く前に制服に着替えていた三人に気がついたハグリッドはそう声をかけつつ一年生たちを集める。
 船主のいない船に乗り、広い湖を通ると見えてきた大きな城にハリーとロンは畏怖の様なものを感じ、ハグリッドの号令と共に頭を下げる。
 ヴォルはまた既視感を覚えつつも目立たないよう頭を下げ、ハグリッドの案内のもと城に入って行った。
 すでに席についているのは在校生達…つまりは先輩だ。
4つの長い机にそれぞれ色の違うネクタイを締め、入ってきた一年生に目を向ける。
そして一段高くなった所に教師と思われる複数の大人が座っていた。
ハグリッドはまっすぐその壇上…正確にはその下に設けられていた椅子と、それにのっている薄汚いボロボロの三角帽子の前まで一年生を連れてくると、待つように、と手を合図し壁際へと下がる。
一人の女性が前に進み出ると一年生を見回した。
一瞬、ハリーとその隣にいる赤い目の少年…ヴォルに目を止めるが、何事もなかったかのように咳払いをする。
「では儀式を始める前に、ダンブルドア校長からお言葉があります。」
 しっかり聞くように、と目で言うとダンブルドアが前に進み出た。
「マグゴナガル副校長から紹介があったアルバス=ダンブルドアじゃ。まず初めに注意事項を言っておこうかの。1年生の諸君「禁じられた森」は立ち入り禁止じゃ。生徒は決して入ってはならんぞ。それから管理人のミスター・フィルチからも注意事項がある。右側の四階の廊下には近寄らぬこと。そこには恐ろしい苦しみと死が待っている以上じゃ。名前を呼ばれた生徒は前に出て来なさい。」
 ダンブルドアもまた全体を見回すと不安げに寄り添うハリーと睨むように自分を見るヴォルを見つけた。
 
 
マクゴナガルが再び進み出ると長い巻物を取り出した。
「あぁ何するんだろう…。」
 緊張で居ても立っても居られないロンはちらりと4つ並ぶ長机の一つを振り返る。
にやにやと笑う兄の姿に心配しか増えない。
しん、と大広間が静かになると帽子が歌いだし、それぞれ4つの寮の特徴を歌にのせて説明する。
その歌を聞いていたハリーはスリザリンというあのマルフォイが入りたがっていた寮の特徴にちらりとヴォルを見上げた。
 入る条件を満たし過ぎている、とため息をつくが、それなら僕も一緒に入ればと思い返し、いやでもあのマルフォイと一緒はいやだなと首を振る。
 列車でロンに質問攻めをした際にロンの一家は皆グリフィンドールと聞いていたため、できればロンと同じほうがまだいいかなと、無意識のうちにヴォルの手を握る。
「大丈夫だ。ハリー。ハリーがどこの寮に入っても…俺の方があとなんだ。なんとでもなるさ。」
 大丈夫、と握り返すヴォルにハリーは小さく頷いた。
ABCから順に名前を呼ばれ、Gが終わるとヴォルは安心させるようにハリーの手を強く握る。
「ハリー=ポッター!」
 マクゴナガルに呼ばれたハリーは痛いほどの視線と注目を浴び、椅子に座ると帽子を頭にのせた。
「お願い…ヴォルと同じ寮がいい…。でもスリザリンは絶対にダメ。スリザリンだけはだめ。」
 必死に念じるハリーの帽子は唸る。。
「君は可能性を秘めている。その可能性・才能をいかすのにスリザリンは最適だと思われる。けれどどうしてもだめと言うなら君は…グリフィンドール!」
 必死のハリーと帽子はしばらく考えていたが、最後にそういうと高らかにグリフィンドールと声を上げた。
「ポッターを取ったポッターを取った!」
 はしゃぐグリフィンドール席から両手を上げて歓迎されるハリーは少し照れながら不安げにヴォルを見つめる。
帽子は才能があればなんとか考えを変えてくれる…だが、他の子の中には頭に触れるや否や叫ばれることもある。
 
 vはほとんど最後のため、長い時間が過ぎわずかな生徒だけが待っていると、マクゴナガルは一呼吸置き、赤い目の少年の名を呼んだ。
「ヴォル=セルパン!」
 少し緊張した面持ちのマクゴナガルに呼ばれ、ヴォルは少し首をかしげながら椅子に座ると帽子をかぶる前から異様なオーラを発し始める。
「ハリーと同じところに入れろハリーと同じところに入れろハリーと同じところに入れろ。」
「おや…君は…。ふむ…ハリーと同じ寮がいいと。確かに君は勇気もある。だが一番君に適しているのはかつて言ったようにスリザリンだ。」
 呪詛の様に念じるヴォルに帽子は驚いたようにつばの裂け目を動かし、困ったように唸る。
「ハリーと同じグリフィンドールに入れろ。俺が適しているかどうかなんてどうでもいい。」
「ふむ…まぁ…一人に対しての限定だが騎士道があるようなきもしないでもない…その執念…信念と…また君がかつての君にならないように…グリフィンドール!」
 禍々しいオーラと言っても過言ではないオーラを出すヴォルに引き気味に見ていたマクゴナガルは帽子が叫んだ寮名に持っていた名簿を落としかけ、飛ぶようにグリフィンドールの席に行く少年を見つめた。
 ハリーと一緒になれたことに喜ぶヴォルと、不安そうだったハリーはやったと抱き合うと笑いあう。
気を取り直したマクゴナガルが残りの生徒たちを呼び、全ての生徒の組みわけが終わる。
「はぁ…生きた心地がしなかった…。」
 くずれるように座るロンに双子がやってくるとでかしたロン、といってそれぞれ肩をたたく。
「あぁ、俺はフレッド」
「俺はジョージ。よろしくな、ハリー。ヴォル。」
 全く同じ顔で自己紹介する二人はロンの隣にいたハリーとヴォルに握手を求め、ウィンクをする。


 組みわけ帽子が片付けられると、マクゴナガルは疲れた様子で腰をおろし、これからの一年間を考えて深くため息を吐いた。
 ヴォル=セルパン…彼の事を知っているのはあの時いた三人だけだ。
そんな苦悩を知らない他の…とくに黒い髪の男は眉を寄せ、ひときわ異彩を放っている、生き残った男の子の隣にいる少年を見る。
 なにかひっかかり覚えるが、ダンブルドアが立ち上がったことに意識をそちらへと向ける。
「長旅で疲れておるじゃろう。それわっしょいどっこいしょ!」
 ダンブルドアの合図とともに一斉に料理が机に並ぶと、歓迎の食事の時間となった。
「君がハリー=ポッターだね。僕はパーシー。グリフィンドールの監督生だ。ロン、あの馬鹿とちがってちゃんと校則はまもるんだぞ!」
 眼鏡をかけた赤毛の青年がやってくると、口いっぱいにベーコンをほおばっていたロンの肩をたたく。
もごもごと返事をするロンを軽く睨むと他の新入生に声をかけに行く。
「あの時に出会った皆がグリフィンドールなんてびっくりしたわ。」
 そういうのはハーマイオニーだ。彼女もネビルもこのグリフィンドールにと呼ばれていた。
彼女が苦手なのか、眉を寄せるロンはぷいっとそっぽを向き、他の生徒との会話を始める。
「間違っていたら悪いけど…君も魔法界外…マグル出身だよね。僕らも全然こっちの常識が分からないから、お互い、頑張りすぎないように…よろしく。」
 深緑の髪に赤い目のヴォルは先ほどの組みわけ帽子の際に出ていた謎の負のオーラを感じ取っていなかった上級生の女性らから遠巻きに見つめられている。
 そんな中、全く気にも留めていないヴォルはハーマイオニーのはきはきとしたしゃべり方からそう声をかけ、ハリーの空いたグラスにかぼちゃジュースを継ぐ。
「あ…ありがとう。」
 きょとんと面を食らう彼女だが、そんなに変だったかしら、と口元に手を当て考える。
「そうだロン。僕たちがかわいい弟のため、要注意人物を教えてあげよう。」
「1、何と言ってもフィルチ。夜に出歩こうものなら飼い猫のミセス・ノリスに見つかってあっという間にフィルチが飛んでくるぞ。2、スネイプ。ほら、あの教壇の少し長い髪の黒髪で鉤鼻の奴。あいつスリザリンの寮監で大のスリザリンびいきなんだ。難癖つけられた時は興味が去るまで待たないとさんざん嫌味をいた挙句原点だからな。3、」
「なにを新入生に吹き込んでるんだ!フレッド!ジョージ!今年こそは規則に従ってもらうぞ!僕が監督生なんだ。見張っているからな!」
 得意げな顔でロンを含めた新入生たちにこれさえ気をつければなんとかなる、と言って話し始めていた双子は兄がやってくるとじゃあなと言ってさっさと立ち去っていく。
 パーシーがやってきて散らすと、あいつらの話を真に受けないでくれ、と言って彼もどこかに消えていく。
 
 




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