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「あ!そうだ!ロンは魔法使いの家なんだよね!どんな感じなの!?」
目をキラキラとさせながら問いかけるハリーに窓の外を見ていたロンは顔を戻し、えぇっとと家族が七人兄弟であり、両親ともに魔法使いで兄弟達が上二人とホームで見たあの妹をのぞき監督生に一人と、双子がいるという。
「1番上のビルはグリンゴッツのエジプト支店でピラミッドの呪いとか解いたりしてるし、2番目のチャーリーはドラゴンの世話をしているんだ。」
「へぇドラゴンなんて実在したのか…。」
ロンの説明に不死鳥の尾羽があるぐらいだからいろいろな伝説の動物がいても不思議ではないものの、一年生の教科書に載っているぐらいでは足りず、ヴォルは興味深げに話を聞く。
「ヴォルは特に蛇が好きだけど、爬虫類系全体的に好きだよね。」
めったにハリー以外に興味を抱かないヴォルがドラゴンに興味を持っていることにハリーはナギニの頭をなで、くすりと笑う。
「ハリー第一だけど、たしかに爬虫類系は全般的に好きだな。あの目がいい。」
あくまでも最高上位はハリーだというヴォルは突然開いた扉に顔を上げ、取り巻き二人を従えたあの鼻もちならない金髪の少年がたっていることに眉を寄せた。
「ハリー=ポッターがいるときいて来たんだ。僕はドラコ=マルフォイ。あぁ、そっちの赤毛はウィーズリー家だろ。それで…お前がポッターか。」
入ってきたマルフォイは中を見るとロンの赤毛を見るなり馬鹿にしたように鼻先で笑い、額に傷のあるハリーを見る。
ちょうど伸ばした手にナギニが乗り移り、ぐるりと首周りに巻きついている様子に一歩怖気づいたように引くマルフォイはその後ろからにらむような視線を感じ、目を向けた。
「セルパンだ。ナギニ、戻ってこい。」
ハリーを抱き寄せるヴォルはナギニを呼び戻すと、何か用?と声をかけた。
「僕のハリーに何か言いたいことがあるならさっさといってくんない?」
抱きしめるヴォルはさりげなくハリーの隣は僕だけだということをにおわせると、マルフォイは鼻白んだように顔をしかめ、不快なものを見るようにヴォルをにらむ。
「友達はせいぜい選ぶんだなポッター。」
捨て台詞を吐いて出ていく姿に何がしたかったんだ、とロンは首をかしげドアをにらむヴォルを見る。
「ハリー。君の相方はずいぶん警戒心強いんだね。」
「そう…かな。うん。そうだね。ねぇロン、魔法使いの人たちっていつから魔法使ってるの?ロンも何かできるの?」
ハリーに向かってこそっと話すロンにハリーは笑うと、ヴォルの手から抜け出しながら質問を繰り出す。
最近自覚して、教科書にある魔法やら何やらを二人で試してはいたが、それはこれから習うことの予習みたいなもの。
基礎中の基礎と言うか、子供が使う遊びの様な魔法があるんじゃないかと興味深々なハリーにロンはええっとと目を泳がせた。
「ジョージ達に教わった魔法ならあるけど…まだ成功したことなくて…。」
できるかなぁと自信なさげなロンは少しボロボロな杖を取り出し、上の兄さんからのお下がりなんだ、と言うと腕まくりをして杖を振りあげた。
不意にノックの音が聞こえ、ロンはそのままの姿勢のまま固まると、扉を開いた栗毛のウェーブがかかった少女を見つめる。
「突然ごめんなさい。この子のカエルがどこかに行ってしまったの。私はハーマイオニー=グレンジャー。どこかでカエルを見なかったかしら。」
はきはきとしゃべる少女ハーマイオニーは杖を振り上げてかたまっているロンと、ナギニをなでていたヴォル、そしてハリーを順に見ていった。
「貴方もしかしてハリー=ポッター?私、あなたに関する文献をたくさん読んだわ。詳細はわからないにしても、強力な魔法を受けて生きていられたのはあなただけなのよ。」
ハーマイオニーの言葉にあぁ、だからすごいと言われているのか、と合点がいくヴォルは少し痛む頭にこの手の話があるといつもこれだ、とため息を吐いた。
「ごめん…よくわからなくて…。魔法使いっていうのも最近知ったから…。」
「有名人ってことに関して言えば先ほどロンが話してくれたことで知ったぐらいだし…。文献なんて出たんだね。」
とりあえず、有名だと言うことは嫌と言うほどわかったが、いまいち実感のないハリーは知らなかったことを伝えると、ヴォルもまた頷く。
「あら、貴方は兄弟かなにかなのかしら。」
「僕はヴォル=セルパンだ。ハリーと一緒にハリーの従兄の家で育った。あぁ、ナギニは僕からしか餌を食べないから勝手にカエルなんか食べないし、食べてないから安心してほしいな。」
ハーマイオニーに隠れて見えなかったが、小柄でびくびくとした印象の少年がナギニを見つけ、まさか、と青くなっていることに気がついたヴォルは誤解を解く。
ナギニもまたカエルと聞いても特に反応はせず、ナギニは賢いから勝手に誰かのペットを食べたりしないし、言うことちゃんと聞くもんね、というハリーに少年はほっと胸をなでおろす。
「ロン…っていったかしら。魔法を使うの?私も興味があるわ。見せて頂戴。」
ようやくロンのポーズにハーマイオニーが声をかけると、ロンは顔を赤くし、うまくできるかわからないよ、と前置きを置く。
「おひさま、雛菊、とろけたバター。でぶで間抜けな鼠を黄色に変えよ。」
子供が使う魔法と言ったら何とも説得力のある呪文を唱えるロンだが、いつまでたってもスキャバーズの色は変わらない。
「その呪文間違っているんじゃないかしら。ネビルのカエルもし見つけたら教えて頂戴。私たちもう少し後ろの車両にも聞いてくるわ。」
はっきり言い放つハーマイオニーにロンはさらに顔を赤くし、立ち去って行くのをただ横目で見つめていた。
「すごくはっきり言う子だね…。あ、でもほら、魔法って使う人の体調とかで変化するんでしょ?ヴォルは制御下手だから、魔法の練習中何回も部屋中の物浮かしちゃったり、クシャミしたとたん枕がバラバラになったり…。」
「いいんだよハリー。ジョージの教えてくれた魔法はいっつもジョークとかばっかりなんだ。それにしてもヴォル…って呼んでいいのかな。君は力が強いんだね。」
ハリーの必死の慰めにロンはどうせまただまされたんだ、と首を振ると、杖を軽く振っていたヴォルに目を向けた。
「別に呼び方は何でもいい。これでもかなり抑えているつもりなんだけど…。なんというかちょっと出すつもりで放水するダムのように加減ができないんだ。ほんと、ハグリッドの言った通りこの杖じゃなかったら杖を壊してしまいそうだよ。」
新品のハリーと比べると若干年季が入った杖をみるヴォルはもう少しうまく調整しないといざという時ハリーを守れない、と内心ため息をつく。
そのうちカートをおしてきた販売員を呼び止め、魔法界に入ったならこれ食べて御覧よ、というロンに勧められ、百味ビーンズとカエルチョコ…そしてかぼちゃジュースを買う。
「百味ビーンズはほんと何でもありな味なんだ。すっごい良い物から、石とか最低なものまでいろいろな味があって…。カエルチョコは有名な魔法使いのカードが一枚入っているんだ。」
ロンの説明に顔をしかめるヴォルだが、少しでもましそうなもの、と深い緑色のビーンズを手に取る。
ハリーもまた薄黄色のを手にとり、ロンは赤い物を手に取った。
一斉にたべみると、ヴォルは何も言わず、窓を開けそれを飛ばし、ロンは声が出ないほど涙を浮かべている。
「何味だったの?あ、僕はレモン。」
「なんだろうあれ。ものすっごくからかった…。」
「たぶんあれだ…。昔…ダドリーの友人招いて家で誕生日パーティーした際に無理やり参加させられた挙句、飲まされた東洋の健康飲料…をものすごく苦くしたやつ。あぁ青臭い…」
一人当たりを引いたハリーに対し、ロンとヴォルは強烈な味だったらしく、二人そろってかぼちゃジュースを飲む。
普段甘い物を取らないヴォルがかぼちゃジュースを飲む姿に、ハリーは笑うとカエルチョコに手を伸ばした。
「あ、早く食べないと逃げちゃうから気をつけてね。」
ロンの忠告と共に包みから飛び出したカエルに驚くハリーは慌てて捕まえるとどうしようと顔を上げ、食べると言うしぐさのロンに頷き恐る恐る食べてみる。
一口かじるとカエルはただのチョコになり、生きたまま食べるんじゃなくてよかった、とほっと胸をなでおろした。
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