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教科書を購入し…どうしてもこの本が欲しいとヴォルが持ってきた本をハグリッドが確認するとまだ早いと言ってさっさと書店を後にし、イーロップのふくろう百貨店にやってきた。
「そうだハリー。ちょうど誕生日が近いんだ。通信手段としても使えるし一羽プレゼントしてやろう。」
数多くの梟がいる店内にはいるなりハグリッドはハリーにどの梟が一番好きか尋ねた後、それを店主に示しながら言う。
慌てて自分で買うよ、というハリーの言葉を気にせず、ハグリッドは真っ白なフクロウの入った籠を渡すと、他の梟を見ていたヴォルを見る。
この場合彼にも上げたほうがいいだろうが、えっとと声をかけようとして、ハリーはそうだ!と声を上げた。
「ねぇ、他の…えっと…他の動物が売っているとこあるかな。」
「えぇっとそれなら…魔法動物ペットショップってぇのがそこの角ある。」
籠を受け取り、ありがとうと言うハリーはハグリッドの示す方を見るとヴォルの手を握り、少し早足でその店へと入って行った。
きょろきょろと見回すハリーは一点を見つめるといた、と声を上げヴォルを引っ張る。
「いっつも誕生日にヴォル、お小遣いからプレゼント買ってくれたから…ヴォルにプレゼント。」
ね、というハリーにヴォルは目を瞬かせた。あの家にいて11年。未だにお小遣いらしいお小遣いは貰えず、こつこつとためてはハリーのために毎年何か些細なものを買っていたヴォルはハリーの示す先を見つめ、目を輝かせた。
「本当は僕がお小遣いもらえていればそのお金で買いたいけど…。気にいってくれた?」
「あぁ…。嬉しいよハリー。なんてきれいな…。」
二人が顔を突き合わせ、ショーケースを見ている姿にさっきハリーが念を押して買いに行きたがっていたのはこのためか、とハグリッドはほっこりとする胸をなでつける。
「すみません。この蛇ください。」
ハリーの明るい声にほっと年相応だなと胸をなでおろしていたハグリッドはあんぐりと口を開き、肩にそのまま巻きつけるヴォルと嬉しそうなハリーの姿に絶句した。
今この場で反対をしたところで…ハリーらから睨まれてこの幸せそうな雰囲気をただぶち壊ししかねない、と蛇と梟用の餌を購入する姿に何も言えない。
もっと早くに気がついていれば…もっと早くに…蛇はだめだとか嘘を言えればよかったが…。
大きな荷物になり、電車に乗り込むハリーたちをハグリッドは複雑な思いを抱いたまま手を振って見送ると、すぐさまオリバンダーの顔を思い出しもと来た道を引き返して行った。
驚くといけないからと服の中に隠した蛇を連れたヴォルは重い荷物を持ちながら夏が早く終わらないかなと、傍らにいるハリーをちらりと見つめる。
家帰るとすでに帰宅していた三人は、その荷物と梟…そしてヴォルの襟もとから顔をのぞかせる蛇に仰天し、部屋からその蛇を出すな!ときつく命じた。
ヘドウィグと名付けた雌フクロウと、ナギニと名付けた雌蛇は主人たちが仲良いのと同様に、同じ籠の中に入っても喧嘩せず、教科書を読む二人を見つめた。
「そういえばヴォル…何の本が欲しかったの?」
教科書から顔を上げたハリーは魔法薬の本を読んでいるヴォルに尋ねるとまぁちょっとね、とはぐらかされる。
ちらりと見かけて手に取った本に書かれていた薬…。
一年生の教科書には愛の妙薬は載ってないか、と欲しかった本に書かれていた数々のその手の薬がないことに来年、来年買おうと心に決めるのであった。
ダドリーを病院に連れていくついでと、ロンドン駅の9と3/4なんてないこと笑うためだけに二人を連れてきたバーノンは笑いながらさっさと行ってしまう。
残された二人はどうしたものかを顔を見合わせた。
少し考えていると、ガヤガヤと赤毛が見事な一家がやってきたのが見え、その荷物の形などから同じ行き先かと、二人は近くに歩み寄った。
「さぁもうすぐ汽車が出るわ。あら、貴方達新入生かしら。こっちに来ておばさんたちと行きましょう。」
後ろからついてきた二人に気がついた女性は双子の青年を押しだすと、さぁいらっしゃいと声をかける。
壁に向かって歩く人たちに驚くハリーだが、さぁ、と押し出されヴォルと共に顔を見合わせると歩きだした。
壁にぶつかる瞬間、ふいに道が開けると赤い汽車が湯気を立てて待っていた。
多数の魔法使いと思われる人々が行きかう中、後からやってきた赤毛一家にさぁ早く乗らないと、と声をかけられ空いているコンパートメントに入り込む。
赤毛ののっぽの青年もまたいいかなと入ると見送る妹に手を振り、列車が動き出した。
「えっと…はじめまして。僕はロン=ウィーズリー。今年入学なんだ。あ、こっちはペットのスキャバーズ。」
そばかすのある頬をかきながら話すロンにヴォルが先に口を開いた。
「ヴォル=セルパンです。こっちはペットのナギニ。」
首元から顔をのぞかせる蛇にスキャバーズは驚き慌ててロンのポケットのもぐりこむと、ヴォルは僕以外からは餌を食べないから安心してという。
「僕はハリー=ポッター。こっちはヘドウィグ。よろしくね。」
ハリーがそういうと、ロンはびっくりしたように眼を丸くし、君がハリー=ポッター!?と声を上げた。
「君が例のあの人を打ち破ったっていう…。」
驚いている様子のロンにハリーとヴォルは顔を見合わせる。
「そうなの?」
「そういえば…ハリーが襲撃された際、消えたって言ってたな…。それで…か?」
首をかしげるハリーにヴォルはハグリッドの言葉を思い出し何が起きたかわからないって言ってたのに、どうして赤ん坊のハリーがそんな邪悪な大人の魔法使いに勝ったなんて思うんだろうか、とロンの思考に疑問を抱く。
「そうだよ!英雄だって…。魔女新聞に定期的に載っているぐらいだよ!」
興奮した様子のロンにヴォルは冷めた目で見つめる。すごいなーというロンに困惑するハリーは全然知らないよ、という。
「僕たちずっとえぇっとマグル?の叔母さんの家いたから…魔法使いだってつい最近知ったぐらいで全然わからないんだ。」
「あいつら事あるごとにハリーの両親の悪口ばかりで他の話は全然しなかったからね。」
すごい、と繰り返すロンに全く覚えていないハリーはヴォルと顔を見合わせると、ロンはようやくあれ、と声を上げた。
「君達って…一緒の家に住んでいるの?」
かの有名なハリーと、見たこともない赤目の少年が同じ家で暮らしているとは考えていなかったらしいロンは並んだ顔を見比べる。
「赤ん坊のころから叔母さんの家でいとことずっと一緒に暮らしてるよ。居候どうしってことで同じ部屋だし…ね、ヴォル。」
「狭い部屋でベッドも一つしかないから年中一緒。」
対照的な緑の瞳と赤い瞳で互いに見つめ、笑いかけるハリーにヴォルは頷きながらいつものようにハリーを抱き寄せる。
「そっそうなんだ…。」
ヴォルもうひと前でくっついたら恥ずかしいよ、と膨れるハリーににこりと微笑みかけるヴォル。
その様子に何と言うかめちゃくちゃ仲がいいんだなと考えるロンはちょっと居心地の悪さをかんじる。
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