------------
11歳を目前にし、ハリーとヴォルは同じ学校に、ダドリーは名門スメルティングズ男子校に入ることが決まり、ようやく離れられると、ヴォルは清々したと言い捨てた。
朝日を浴び、目が覚めたハリーは誰かに…ヴォルに抱きしめられていることに気が付き、おはよう、と声をかけた。
「誕生日おめでとう、ハリー。」
寝ぼけ眼のハリーの額にについた稲妻形の傷に軽く口づけるヴォルは嬉しそうに囁き、ハリーを抱き締める。
二人の部屋にしては狭い部屋にはベッドは一つしか置けない。
そのため、小さいころから一緒に寝ているが、別段不自由に感じたことはない。
ときどきこうして抱きつくヴォルだが、今日はいつもより長い。
「ありがとうヴォル…。あ、起きないと掃除…。」
「掃除なら先に庭以外全部終わらせてきた。せっかくの誕生日に掃除なんかさせたくないよ。」
徐々に目が覚めてきたハリーはあ、と声を上げるがヴォルはほほ笑みながらもう少しゆっくりできるよ、と言う。
でも起きなきゃ、というハリーに苦笑するともう一度額に口づけ、起き上がった。
「ヴォルの誕生日…わかればお祝いしたいのに…。」
「俺のはいいよ別に。12月ごろって言うことだけわかっていれば。」
眼鏡を手渡すヴォルはいつかそのうちわかるさ、とヴォルは特に気にしていない。
でも、というハリーにその気持ちだけで充分嬉しいと答えた。
玄関先に郵便物が入る音がし、起きたハリーはそれを拾いに行き、ヴォルはポットの準備をする。
「あれ…?」
一枚、不思議な封筒を見つけたハリーはあて名を見て目を丸くした。
ヴォルあての郵便物はたまにある。女の子から。
ただし、ヴォルはそれを開いたことはない。
たまにミサンガなどが入っている場合もあったがそれすら捨ててしまい、本人に聞かれれば付けるのがもったいないから家にあると嘘をついてハリーから貰ったもの以外は持たない。
それがヴォルの主義だ。
一方ハリーは学校内で孤立していることもあり、貰ったことはない。
ハリーが見つめている封筒にはハリーとヴォル二人の名前が書かれていた。
「ハリー・ポッター、ヴォル=セルパン…。本当だ。」
開けてみるか、というヴォルにハリーも頷き、封筒を開ける。
「何勝手に郵便物を見ているだ小僧ども!!」
バーノンの大声にいったい何があるのだろうとドキドキしていた二人は肩を跳ね上げ、むしり取られる封筒を目で追った。
「それは僕らあての手紙です。」
「お前たちに手紙何ぞ…。ん!?」
睨むヴォルを軽く受け流すバーノンは封筒の中身をみると目を見開いた。
そのまま土気色になると封筒を引き裂き、丸めて捨ててしまう。
あまりの出来事に絶句する二人に徐々に怒りで顔を赤らめるバーノンはぶつぶつと何か言いながら玄関先に出た。
誰もない庭を見つめると心配そいうにやってきたペチュニアに何かを伝える。
朝食後、庭掃除に行こうとした二人を引きとめ、部屋にいるように言うとまだぶつぶつと言いながら庭をにらんだ。
まるでそこから封筒が生えてくる瞬間を見てやろうとするような顔のバーノンに顔を見合わせるハリーたちだが、大人しくしている以外に手はない。
部屋でこっそり力を使っていろいろなことを試す二人はあの手紙、と言う。
「俺らの名前書いてあったな。」
「2階寝室ってのも書いてあったね。」
手に持ったコップを浮かせるヴォルは見よう見まねでわずかにペンを浮かせることに成功したハリーと共に手紙の事を思い返していた。
「まぁ重要な手紙ならまた明日来るだろう。」
考えてもしょうがないか、というヴォルは何か脳内で引っ掛かる感覚を覚えつつも目の前で奮闘するハリーに目を移す。
視線に気が付き、顔を上げるハリーを見つめるヴォルは黙ったままじっと見つめる。
「どうしたのヴォル。」
「ハリー…可愛いなとおもってた。」
真面目な表情のまま、呟くヴォルにハリーは顔を真っ赤にする。
端正な顔に不思議な光を放つ赤い目はそれだけでも妙に人を引き付ける力があるが、ハリーに向けられるその力は時折こうしてハリーの顔を赤らめる。
することもなく、次の日になると、手紙を先に取ろうとヴォルと共に玄関先に急いだ。
だが、そこにはなぜか寝袋のバーノン。二人の足音に目を覚ましたらしく、ぎろりと睨む。その上にひらりと一枚の封筒が落ち、バーノンは玄関を勢い良く開いた。
だが、そこは静かな早朝の風景のみ。投函者の姿がない。
またもびりびりに破き、コンロで燃やしてしまうと、玄関を打ち付けた。
この日も部屋にいることを言いつけられ、部屋に戻ると窓の外を見ていたヴォルが声を上げた。
何だろうかとハリーが近付くと昼間にはめったに見ることのできない梟が数羽止まっている。
封筒を見つけ、呼び込もうとするが勝手口から庭に出てきたバーノンが追い払ってしまい、ヴォルは舌打ちをした。
移動しよう、というバーノンの言葉に無理やり連れて行かれる一家はあちらこちら移動しつつも大量の封筒に悩み、ついには嵐で悲鳴を上げる小さな湖の小屋にやってきてしまった。
道中不機嫌なヴォルは窓の外をにらんでいたが、ここならば手紙を運ぶ奴もいまい、と上機嫌なバーノンに引いている。
床で横になる二人はボロボロの毛布をかぶりながらヴォルが伸ばした腕に頭を乗せ嵐の音に耐えていた。
「この小屋…大丈夫か?」
小さくつぶやくヴォルの言葉にたしかに、と同意するハリーは底冷えする小屋にぶるりと肩を震わせた。
何も言わずにハリーを抱き寄せるヴォルは至近距離でハリーを見つめ、額に口づける。
|